「危険なビーナス」ディーン・フジオカと池内万作のエンタメ力がありがたい!重要情報だらけの7話

東野圭吾原作のラブミステリー「危険なビーナス」。主人公の獣医師・伯朗(妻夫木聡)のもとに、「弟の妻」を名乗る謎の美女・楓(吉高由里子)が現れ、異父弟・明人(染谷将太)が失踪したことを聞かされる……。クライマックスに向けて、重要なことがいろいろ判明した7話を振り返ります。

「危険なビーナス」。ようやく物語が原作に戻り、ミステリーとして芯を食い始めたのが前話。第7話は一気に進展するかと思ったが、またしてもちょっと停滞。

いや、重要な情報はたくさん出てきたので進んでいないわけではないが、6話でやっと出てきた明人(染谷将太)がまたしても出てこないとなると進んでいる感じがしない。とはいえ、クライマックスに向けての最後の助走と捉えれば、ものすごく重要な回ではあった。

楓の正体を隠す気がない製作陣

取り壊されたはずの実家は、康治(栗原英雄)に頼まれて近所のイモのおじさん(石井愃一)が管理していたことが判明。不審者と勘違いして楓(吉高由里子)はイモのおじさんを捕らえたのだが、明らかに逮捕術を駆使していて、一般女性とはとても思えない。

過去にもGPSの付け方に詳しかったり、妙に冷静に事件を分析したりと楓怪しいぞ演出は満載で、他の登場人物も口を揃えて「只者ではない」と言っている。どうやったって楓の正体に意外性がなくなってしまっているのは、製作陣の計算なのだろうか。これで本当に元キャビンアテンダントだったら逆に驚く。

イモのおじさんのおかげで伯朗(妻夫木聡)と楓は、母・禎子(斉藤由貴)が亡くなる前に佐代(麻生祐未)が家を訪ねてきたことを知る。一度は佐代に追い返されるも、伯朗は禎子と佐代が一緒に写っている学生時代の写真を発見し、突きつけると佐代は禎子と同級生だったことを語り出す。

にしても、数十年前の白黒写真と銀座のホステスとして華やかにメイクしている姿を同一人物と見抜く伯朗の観察眼がすごい。

複雑な矢神家の家系図

フラクタル図形とは

禎子と佐代の再会は、禎子の元夫・一清(R-指定)が死ぬ前だった。脳腫瘍に苦しむ一清が時に錯乱状態に陥ってしまうと相談を受けた佐代は、禎子に康治を紹介。当時の康治は脳の研究をしていて、一清を落ち着かせることに成功した。しかし、それもいっときで一清は間もなくして死亡。伯朗は、康治の実験で脳が剥き出しになった猫のトラウマを思い出す。

伯朗と佐代のやりとりは、重要情報だらけだ。他にも、牧雄(池内万作)が康治と一緒に研究をしていたことや、その研究がフラクタル図形に関係すること、治療後の一清が突然フラクタル図形を用いた「寛恕の網」という作品を描き出したことなどもここで判明。また、康治と禎子が手を組んで一清の死期を早めた可能性さえも浮かび上がる。

一清「お父さんにもわからないんだよ。わからないものを描いてるんだ。描かされているのかな?」

フラクタル図形とは、全体の形と細部の形が同様のもの、拡大しても元の形と同じ図形に見えるものらしい。精巧なフラクタル図形を何の計算もなしに描くのは至難の技で、一清は脳腫瘍、もしくは治療の影響でこのような才能に目覚めたことになる。上記のセリフからも、今までの自分では制御しきれない力を手にしてしまったことがわかる。

・康治の研究とは一体なんなのか? またフラクタル図形との関係は?
・禎子は誰になぜ殺されたのか?
・明人の行方は?

ここら辺がクライマックスに向けてのメインの謎となってくる。

ちなみに、一清が描いていた「寛恕の網」の寛恕とは、広い度量をもって過ちを許すという意味。これは康治や禎子に向けたメッセージなのだろうか?

勇磨と牧雄のエンタメ力

一方、伯朗の難敵・勇磨(ディーン・フジオカ)は、楓の家に盗聴器を設置。楓宅に誰かが訪れ、その会話を盗み聞きした勇磨は「そういうことか。フハハハハ。このゲーム、俺の勝ちだ」と1人で勝利を確信している。なんだろうか、このディーン・フジオカのエンタメ力は。

第7話は重要な情報がたくさん飛び出したが、大半は妻夫木聡と麻生祐未が喋るシーンで画的にはかなり大人しかった。重厚で見応えはあるものの、いい意味での軽さがない。もちろん、妻夫木聡と麻生祐未が悪いとかではなくて、そういうシーンばかりだったということだ。

その点、ディーン・フジオカの軽さ、見やすさはすごい。イヤフォンを千切るように外して、「そういうことか、フハハハハ」。何が起きたのかはわからないが、悪いヤツが悪巧みに成功した瞬間だと子どもにもわかる。何より暗い車内にディーンの輪郭が映えたし、これは演出の問題だが、盗聴器のチャチさも良かった。

最後に伯朗の元を訪れた牧雄もわかりやすかった。牧雄はチャイムを鳴らしては、恐ろしい表情で「開けろ」の一点張り。およそ初めて入る家の態度ではない。しかも予告によると、牧雄はこのあと伯朗に頼み事をするというのだから驚きだ。そう、牧雄はこのドラマで唯一の非常識人なのだ。おかしな人はたくさん出てくるが、見るからにヤバイ人物は牧雄しかいない。

全体を通して玄人好みの邦画のような雰囲気の回だったが、ディーン・フジオカと牧雄演じる池内万作の2人は全年齢対応のハリウッド映画みたいだった。どんなテーマだったとしても、長い連続ドラマでこういう派手な演技をする2人の存在は見ていて気が楽になるし、ありがたい。

第8話は、伯朗が康治の研究記録を探す。勇磨も牧雄も明人も出てきそうだし、クライマックスに向けて盛り上がりそうだ。

■危険なビーナス

1:「危険なビーナス」1話。ややこしい家系図を説明します、顔と名前だけでも覚えていってください

2:「危険なビーナス」2話。怪しい吉高由里子。「私の正体は誰でしょう?」と問いかけているみたい

3:「危険なビーナス」3話。ディーン・フジオカの前で妻夫木聡が乙女に?大っ嫌いなのに本音が出ちゃう

4:「危険なビーナス」4話でやっと本編がスタート。妻夫木聡の妄想は、予告詐欺ではないかもしれない

5:「危険なビーナス」5話。複雑な家系図が更にややこしく!まだまだ裏がありそうな使用人兼執事の君津は誰と繋がってるんだ

6:「危険なビーナス」6話でやっと主人公になった妻夫木聡、ディーン・フジオカの活躍にも期待

企画、動画制作、ブサヘア、ライターなど活動はいろいろ。 趣味はいろいろあるけれど、子育てが一番面白い。
イラスト、イラストレビュー、ときどき粘土をつくる人。京都府出身。
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