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【グラデセダイ47 / 小原ブラス】僕が「めんどくさいロシア人」であり続ける理由

「こうあるべき」という押しつけを軽やかにはねのけて、性別も選択肢も自由に選ぼうとしている「グラデ世代」。タレントでコラムニストの顔も持つ小原ブラスさん。みずから名乗る「めんどくさいロシア人」のキャッチコピー。めんどくさいって、悪いこと?

●グラデセダイ47

僕のキャッチフレーズは「面倒くさいロシア人」だ。アウト×デラックス(フジテレビ)に初めて出演した時もこのキャッチフレーズで紹介していただいたし、僕のTwitterの名前も「小原ブラス@面倒くさいロシア人」としている。

よく「面倒くささをわざわざアピールしなくてもよくない?」と言われるが、僕にとってこの「面倒くさい」というのは、わざわざアピールをしたいほど大切なことなのだ。それには僕なりの面倒くさい理由がある。

僕はふとした友人の発言や仕草、メールの余計な1文、些細なことが気になって仕方がないし、変な譲れないこだわりもたくさん抱えて生きている。何でも平等じゃないと嫌な性格だし、ひとつモヤモヤを抱えると、世間からは「しょーもないこと」と言われるようなことでも小1時間考えてしまうタイプだ。世間ではそのような男性を「器が小さい男」とか「細かい男」と揶揄するらしい。

僕が毎週水曜日に出演している「5時に夢中!」(TOKYO MX)という番組では、そんな「しょーもないこと」について好きなように発言をさせてくれる。5時に夢中では、いちいち僕がゲイであることを宣言しなくても、その前提で話を進めることができるし、女性だとかLGBTQとか、その人がどんな立場かなんて関係ない。本音で話をさせてくれる。そんな前衛的な番組に出会えたことはすごくラッキーなことだと思っている。

大好きな5時に夢中に対してでさえも、つい気になってモヤモヤしてしまう「しょーもないこと」がある。それはMCであるふかわりょうさんが、番組冒頭でリポーターの黒船特派員を紹介する時のカンペに書いてある台詞のひと言。

「本日の黒船はこの男!」

これの何が問題なのか、意味が分からないと思うだろうが、僕はもう1年以上も、ふかわさんのこの台詞を聞くたびに「あーー」と思っているのだ。

問題は僕を含めた男性の黒船特派員を紹介する時には「本日の黒船はこの男!」というのに対して、ほかの曜日の女性の黒船特派員を紹介する時には「本日の黒船はこちらのレディーです」と言う点にあるのだ。

今これを読んでる多くの方が「は?」とか「しょーもな」と思っているであろうことは承知の上でも、どうしてもこれが気になって気になってしかたがないのだ!!

だって「本日の黒船はこの女!」と言っても別にいいはずなのに、それをわざわざ女性の時だけ少し持ち上げて「こちらのレディーです」なんて言い方をするの、ちょっと変。なんで「男!」に対して「レディー」なんだよ、と思うのだ。

もちろんふかわさんが男性だからという理由もあるかもしれないが、恐らくMCが女性でも「この女!」なんて紹介の仕方はしないのではないかと思う。

その理由は「この女!」という言い方が乱暴で、女性に対して乱暴な言葉を用いるのはあまり印象がよくないからだ。もちろんこれは5時に夢中に限らず、よく女性のことは「女性」と言うのに、男性のことは「男」と言う人がいるが、これも同じような理由だろう。

そこで、僕のモヤモヤが発動する訳だ。じゃあ男性は乱暴に扱ってもいいのかよと!

カンペに書いてあるこのひと言に、不本意ではあるだろうが、女性はおしとやかであるべきとか、男性は多少乱暴に扱っても構わないというような昔ながらの思想が、うっかり詰まってしまっているのだ。

念のため言わせてもらうが、なにもこのひと言を考えたスタッフさんが悪いと批判をしたい訳ではない。僕が言いたいのはこれだけダイバーシティを受け入れる前衛的な番組でさえも、ふとしたところにこのようなモヤモヤが転がっているのだから、世の中にはこれと比にならないことが山ほどあるのだということだ。

悪いのは、いちいちそんな小さなことを気にする僕かもしれないし、もしくはそれを当たり前として放置している社会全体なのかもしれない。

勘違いして欲しくないが、僕は女性として扱われたいとか、そういう性を持っている訳ではない。「女だから」とか「男だから」という不必要なレッテルがめちゃくちゃ嫌いなだけなのだ。少しこじらせていると言っていいのかもしれない。

そして、これだけ性の多様性や女性の活躍が叫ばれる中で、なんとなく女性やLGBTQへの配慮をしようとする兆しが見えてきているのに、男性の扱いは昔と変わらないということに疑問を抱いている。

1年以上前、とある地方の番組のロケで、女性2人と僕の3人でお祭りに参加をしたことがある。その時にスタッフさんに渡されたお祭り用の衣装でも少しもめたことがある。基本的にそのお祭りは男性も女性も同じ衣装を着るのだが、2人の女性には配慮して長股引が用意されていた。それに対して、僕にはすごく短い白い半パンツが用意されていたのだ。男性だから足くらい出しても気にしないでしょという意向があったかどうかは分からないが、その時僕は自分は乱暴に扱うことが許されている性であるのだと実感させられた。

こんなことを言ったら今度から呼ばれなくなるだろうなと思いつつも、我慢をすることができず、僕も長股引が必要だと言わせてもらったことがある。ありがたいことに、その番組スタッフさんは話せば理解を示してくれて、今でも準レギュラーとして定期的に呼んでくれている。見限ることなく付き合ってくれるスタッフさんには本当に感謝だ。

これは極端で細かすぎる例かもしれないが、これまでは男性の地位が高かった分、ある程度社会に乱暴に扱われても当然とされてきたという一面は確かにあったと思う。そして、社会が変わろうとしている今、男性だって丁寧に扱われたいし大事にされたいと思っている人も多いはずだ。

ただ、こんな細かいことを言うと世間からは「器の小さい男」「細かい男」「面倒くさい奴」という言葉が飛んでくる。これらの言葉は、器の小さな男の言うことなんて聞く必要がないという耳栓でもあり、ややこしいことを言うなという口封じでしかないと僕は思う。

多くの男性は、女性に「小さな男」なんてレッテルを貼られることを恐れて、思ってても言わないものだが、ゲイである僕は女性にモテなくなることなんて気にしない。

だから最初から「面倒くさい」というレッテルを自分で自分に貼って、それを掲げて発言してやる!!器の小さい、面倒くさい男でなにが悪い?完璧主義ということだろう?僕は嫌なことは我慢せず嫌だと言ってやる!!

「面倒くさいロシア人」とわざわざ掲げるのは、そんな意思表示なのだ。他人にそのレッテル貼らせないぞ?自分で貼ってやるんだから!と。

このコラムでは普段は、LGBTQや女性の活躍について焦点をあてることが多いが、古い社会のあり方を変えるということは、必ずどこかに副作用が生じることなのだ。その副作用による反発を少しでも抑えるためには細やかなところまで目を向けなければならないと考えている。

いわゆる男社会を捨て、性別に関わりなく活躍できる社会を実現するためには、女性にだけスポットをあてるのではなく、同時に男性の扱い方も時代に合わせて変化させていかなければ、男性の協力も得られないと思う。

だから男性は女性に配慮や応援をするべきだと思っているし、女性は「器の小さい男」だとか簡単にいうべきではないとも思う。それが必ず自分の首をしめることになるのだから。

僕はこれからも、この小さな器から溢れる「しょーもないこと」を包み隠さず言い続ける。

1992年生まれ、ロシアのハバロフスク出身、兵庫県姫路育ち(5歳から)。見た目はロシア人、中身は関西人のロシア系関西人タレント・コラムニストとして活動中。TOKYO MX「5時に夢中」(水曜レギュラー)、フジテレビ「アウトデラックス」(アウト軍団)、フジテレビ「とくダネ」(不定期出演)など、バラエティーから情報番組まで幅広く出演している。
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