グラデセダイ

【グラデセダイ46 / かずえちゃん】自分らしく……ってなんだろう?

「こうあるべき」という押しつけを軽やかにはねのけて、性別も選択肢も自由に選ぼうとしている「グラデ世代」。今回はYouTubeを通してLGBTQのことを発信している人気YouTuber、かずえちゃんのコラムをお届けします。なんと9月から京都にある会社に就職したというかずえちゃん。“自分らしく”生きる、働くとは?

●グラデセダイ46

「自分らしく…」

今まで何度この言葉をかけられただろう?
そして、何度この言葉をかけただろう?

「自分らしく生きたらいい」
そう声をかけられたときもあった。

「自分らしくいればいい」
そう声をかけたときもあった。

しかし、この「自分らしさ」ってなんだろう?
どう見つけ出して、どう使えばいいのだろう?
今日はそんなコラムをお届けしようと思う。

自分らしく生きたらいい

これまでの人生のなかで、何度もこの言葉をかけられたり、目にしてきたなかで僕の心に一番強く残っている「自分らしく」は、ゲイであることをカミングアウトしたときに、両親からかけられた「自分らしく生きたらいい」だろう。
自分が「ゲイ」であることを受け入れることができなかった(受け入れることが難しかった)時期もあった。
治ればいいのに……何度も何度もそう思った。
だから、そう言葉をかけられたとき「ゲイであることも全部ひっくるめた自分」を肯定された気がした。
そして、今までゲイであることを隠して生きてきた自分を少しだけ好きになれた気がした。
あのときの、あの言葉は、僕という人間を支えてくれる柱のような……そんな太くて力強い言葉だった。

約10年前、恋人とハワイに行ったときの1枚。この頃、周りの人には恋人のことを「友達」と紹介していたのだそう

自分らしくいればいい

YouTubeを始めてから、本当にたくさんのDMが届く。
「カミングアウト」「性自認」「性的指向」「家、学校、職場での生きづらさ」についてが圧倒的に多い。
過去の自分もそうだったように、自分の一部分を隠して生きることは本当に辛かったし、バレないように虚勢を張って生きていた。
だから、届いたDMを読むと昔の自分を見ているようで胸が苦しくなる。

そして、自分がゲイを自覚した小学校5年生のときから何十年という歳月が流れ、時代は急速に変化し、便利な世の中になっているように感じるのに……。
日々、進化し続けて見える社会のなかで、変わっていないもの、取り残されている思いがこんなに多くあることに驚き、やり場のない悲しい気持ちでいっぱいになる。
そして、その感情と同時に「自分らしくいればいい」という思いが湧き上がる。

約10年前、恋人と行ったハワイで。誰も知らない海外だけでは「自分らしく」いられた

自分らしく生きることができる社会があるだろうか?

現在、日本で戸籍上の性別を変更するためには以下の5つの要件を満たす必要がある。
①年齢要件:20歳以上であること(成年年齢の引き下げに伴い、2022年4月1日から18歳以上に)
②非婚要件:現に婚姻をしていないこと
③子なし要件:現に未成年の子がいないこと
④手術要件(生殖不能要件):生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
⑤外観要件:その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること

トランスジェンダー(トランス女性)の友人がいる。
身体の性は「男性」
性自認(自分自身の性をどう認識しているか)は「女性」
性的指向(好きになる性)は「女性」
そして、女性の恋人がいる。

友人はよく「自分はまだ戸籍上は男のままだから、恋人と結婚することはできるんだけど、本当は性別適合手術を受けて、戸籍を女にしたいんだよね。
でも、戸籍変えちゃったら恋人と結婚できなくなるし……」と悩んでいた。
現在、日本では法律上の性別が同性の場合は結婚ができないため、友人が戸籍を「女」に変更すると、現在の恋人と戸籍上同性になるので結婚ができない。
つまり自分が望む自分になることで、恋人との結婚(将来)が奪われてしまうということだ。

人はよく「自分らしく」とか「ありのままで」と簡単に言う。
しかし友人は「自分らしく」生きたら、失ってしまうものがある。
「ありのままで」生きたいけれど、生きさせてくれない社会がある。

僕が両親にカミングアウトしたのは24歳のときだった。
当時、保険会社で営業マンとして働いていた僕は、職場の人はもちろん、毎日多くのお客さんと会う日々を送っていた。
「彼女はいるの?」
「結婚はまだ?」
そう聞かれるたびに、嘘をつきながら、何度も思ったことがある。
「自分らしく生きるって怖くて、難しいな」って……。

いろいろなご縁があり、9月から京都市に本社を置く三洋化成工業株式会社というところで働くことになった。
ゲイであることも、かずえちゃんであることも、男であることも、O型で蠍座であることも……どれを辞めろと言われても辞めることはできない。
だってそれ全部が自分だから……!
かずえちゃんとして、男性が好きな男性として、自分の一部を隠して働かなくてもいいんだってことを日本中に伝えていきたい!
そして、誰もが自分らしく生きれるために、自分らしく生きることができる土壌(社会)をつくっていきたいと強く思う。

1982年福井県生まれ。高校卒業後、ウエディングプランナーとして働く。その後24歳で転職。仕事の休みを利用しながら色々な国へ。「いつか海外で生活したい」という思いから、30歳でカナダへ語学留学。同性婚が認められているカナダで約3年間生活した。「LGBTQがもっと暮らしやすい日本にしたい」という思いから、帰国後2016年からYouTubeで動画配信を始める。現在アドレスホッパーとして生活中。 Youtubeチャンネル登録者数7.8万人(2019.9月現在)
グラデセダイ