佐久間宣行×真船佳奈#2「結婚したとしても、次に合った「芸風」は見つかる」

telling,の人気連載「#最高に楽しいぼっち旅をしよう」作者でテレビ東京局員(現在BSテレ東編成部に出向中)の真船佳奈さんは、テレビ局の仕事と並行し漫画家としても活躍しています。今回はtelling,特集「肩書きってなんだろう?」の「特別編」として、同じくテレビ東京社員でラジオ番組『オールナイトニッポンZERO』のパーソナリティを務める佐久間宣行さんを迎え、「副業」や「妻」「父親」といった「 肩書き」について語り合ってもらいました。

結婚したら自分を新しくブランディングしていくしかない

――仕事とは別に、社会的な“肩書き”というのもありますよね。妻や夫、父、母というのも肩書きと呼べると思います。真船さんは最近入籍されて「妻」の肩書きもついたわけですが、自分の中でどう受け止めていますか?

真船: 今まで「独身です、イエーイ!」「モテないです!ぼっちです!」みたいなのを全面に出しすぎちゃったから、今後どういう振る舞いをしていったらいいかわからない部分があります。「結婚できませーん、休日はひとりで出前館の唐揚げ弁当食べてまーす」みたいなことはもう書けなくなるじゃないですか。

佐久間: それはお前のブランディングの問題だろ(笑)。新しいブランディングをするしかないだろ。

真船: 「女は幸せになると面白くなくなる」みたいなことを言われ続けてきたから、迷う部分はあったんですよ。本当に自虐全開でやってきたんで、「結局結婚して幸せじゃん、面白くない」って言われるのは怖いです。

佐久間: でも山ちゃん(南海キャンディーズ・山里亮太)があんな美人の女優さんと結婚してるから。

真船: 山里さん、自分のラジオで「リスナーにどう思われるか怖くて、結婚していいか悩んだ」って話してましたね。私なんか山里さんの足元にも及ばないけど「わかるわかる」って思いました。結局、全然マイナスの影響はなくて、みんな「おめでとう!」って感じでしたよね。それと、松丸さん(テレビ東京・松丸友紀アナウンサー。『ゴッドタン』レギュラー)はすごいなって思うんですよ。旦那さんには女性としての顔を見せているだろうし、お子さんにもママとしての顔を見せているだろうけど、出産後も『ゴッドタン』で「変なおじさん」を全力でやってるじゃないですか。

佐久間: あれ旦那と一緒に練習してるからね(笑)。「今のは似てないよ」とか教えてくれるらしいよ。松丸の旦那がめちゃくちゃいいやつだっていうのはある。でも旦那や子どもがいるから芸風が変わる人はいるんじゃない? 子どもができて下ネタはやめたっていう芸人さんもいるしね。最近収録でハライチの岩井が「『このボケゼリフ言ったら、嫁さんと子どもが悲しむかな』って思っちゃうのが嫌だから、まだ結婚はできない。そこで悩んでる」って話をしたら、オードリーの若林くんが「歳に合わせて芸風が似合ったり似合わなくなったりするから、結婚したほうが面白くなる時期も自分なりに来ると思う」って言ってたの。そういうことだと思う。働き方とか芸風とか、その人の生き方に合ったものが見つかるはずなんだよ。

「ゴッドタン」テレビ東京毎週土曜25:45〜26:10 出演者:おぎやはぎ/劇団ひとり©テレビ東京

真船: 人生に合った芸風が見つかるっていうのはたしかにそうかもしれないです。結婚したらしたで芸風が見つかって、子どもが生まれたら生まれたで見つかって、っていう。

人間の根っこの部分は結婚したって変わらない(佐久間)

――佐久間さんは、一緒に働く後輩や部下が結婚したことで面白さが変わった経験はありますか?

佐久間: 結婚自体ではないですね。男女関係なく、パートナーによって働き方が変わる人はいますけど。そういう意味では、まだ男のほうが古臭い気持ちがあって理解のない人が多いから、女性のほうが結婚してライフスタイルを変えないといけないケースが多いかもしれないですね。

真船: たしかにパートナー次第ではありますね。ちょっと悩んでたけど、よく考えたら私の夫も私がふざけてるのを見て喜ぶような人だから、「この人を守るためにお下品自虐から芸風を変えないと」とは自分も思ってないかも。

――佐久間さん自身は、中学1年生の娘さんがいる「父」でもありますよね。

佐久間: 家族の場合は、自分が「父」であるという肩書きを意識するより先に、生活がやってくる感じがするんですよ。家族というチームの一員である責任を果たさないといけない。それをちゃんとやろうと思うと、毎日が大変だから。

――そういう肩書きは自分で背負うというより、人に貼られるレッテルのようなものかもしれませんね。「母」は特にその傾向が強い感じがします。

佐久間: むしろ今の世の中だと、ある程度年次が上で独身の人が「独身」っていうレッテルを周りから貼られてしまって面倒な思いをしてる気がする。

真船: それはあるかも。女性で「長い間独身」の肩書きを外側からつけられてしまうと、やりにくいことが増えるだろうなっていうのは働いていて感じます。そういう人が出す企画に対して「あー、あの人ずっと独身だからこういう企画出すんだねー」みたいに言われちゃうことがあると聞いたこともあります

佐久間: 上がってくる仕事に対して、肩書きや所属によって初めからバイアスをかけた目でしか見られない人はいるかもしれないね。批判の材料に使えるものはなんでも使おうっていう人もいるし。

真船: うちの社内がどうだっていう話じゃなくて、女性であればそういう批判は少なからず聞いたことがあるんですよ。そういうふうに思われるんだったら、結婚したほうが楽なのかな、と思ったことはあります。

――生きやすくなる場面があるのではないか、と?

真船: 結婚しないスタイルを選ぶ人は増えているけど、そういう人に対する心ないふるまいは減ってない気がするんですよね。だから「妻」になることに不安はあるけど、安心材料をひとつ得た感じは正直あります。30歳になって独身でいると「まだ結婚しないのか」「お前だけ残ってるな」って言われることも多くて。正直、すごく嫌なことも多かった「独身」という肩書きから卒業できた、っていう気持ちはあるといえばあります。でも結婚しただけで、生きやすくなるんですかね?

佐久間: それは単に別の人生が始まっただけで、真船は生きやすくはならないよ(笑)。人間の根っこの部分は、結婚したって変わらないんだから。

●佐久間 宣行(さくま のぶゆき)さん
1975年、福島県いわき市生まれ。早稲田大学商学部卒業。
1999年テレビ東京入社。
担当番組/
ゴッドタン、 青 春 高 校3年C組(毎週月曜~金曜 夕方5時30分放送)
ソクラテスのため息〜滝沢カレンのわかるまで教えてください〜(毎週水曜 よる10時放送)
あちこちオードリー~春日の店あいてますよ?~(毎週土曜 午前11時3分放送)
オールナイトニッポン0(ZERO)出演・水曜パーナリテ ィ

●真船佳奈(まふね・かな)さん
2012年株式会社テレビ東京に入社。入社3年目で制作局に異動し、バラエティ番組のADや音楽番組のディレクターを務める。2017年、その時の経験を描いた「オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組つくってます』(朝日新聞出版)で漫画家デビュー。現在は続編「オンエアできない!DEEP」のほか、telling,内で「最高にマイペースな結婚生活をしよう」などを連載する。

テレビ東京社員(現在BSテレ東 編成部出向中)。AD時代の経験談を『オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組作ってます』(朝日新聞出版)にまとめ、2017年に漫画家デビュー。ツイッターアカウントは@mafune_kana
1986年生。編集者、ライター。月刊誌「サイゾー」編集部を経て、フリーランス。編集担当書に「別冊サイゾー『想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本』」など。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
肩書って何だろう