佐久間宣行×真船佳奈#1「俺みたいな社員がいる会社、よくないですか?なんか面白そうで」

telling,で「#最高に楽しいぼっち旅をしよう」連載が人気の真船佳奈さんは、現役のテレビ局員(テレビ東京、現在BSテレ東 編成部に出向中)であると同時に、漫画家としても活躍しています。今回はtelling,特集「肩書きってなんだろう?」の「特別編」として、同じくテレビ東京局員で『オールナイトニッポンZERO』のパーソナリティを務める佐久間宣行さんをお迎えし、「副業」や「妻」、「父親」といった「肩書き」について語り合ってもらいました。

真船、お前間違った努力してたんだよ、って。(佐久間)

――佐久間さんと真船さんはテレビ東京の局員でありながら、真船さんは漫画家、佐久間さんはラジオのパーソナリティと、それぞれ本業とは別の肩書きをお持ちです。念のため聞いておきたいんですが、会社は副業OKなんですか?

佐久間宣行(以下、佐久間): ケース・バイ・ケースで、毎回会社とかけあうかたちです。真船の漫画や僕のラジオは前例がないから「とりあえずやってみて、もめたら考えよう」みたいな感じですね。

真船佳奈(以下、真船): ラジオパーソナリティやってるテレビ局員って、あらためて聞くとおかしいですよね(笑)。

佐久間: 実際やってるからねぇ。

――真船さんの漫画家デビューを後押ししたのは佐久間さんだと聞きました。

真船: そうです。私が描いたものを佐久間さんが自身のツイッターにあげてくれて、世に出してくれたんです。それを見て「出版したい」という方が現れて、デビューすることになりました。

佐久間: 真船が漫画が好きで描いているのは知っていたんですよ。でもそのときは甥っ子の話を描いてて、「それはお前じゃなくても描けるから、仕事の話を描いたほうがいいんじゃないの?」って話をしたら、そういう内容のラフもある、と。「じゃあ俺にくれ」って言って、インスタとツイッターにアップしました。30分くらいで反応があったんだよな?

真船: そうです。

佐久間: 「ほら、やっぱりお前、間違った努力してたんだよ」って(笑)。そこから出版社につなぐところまではやりました。

――佐久間さんはなぜ真船さんの後押しをされたんですか?

佐久間: 「会社員でも、キャラがあったほうが仕事はしやすい」というのが僕の持論なんです。わざわざ声高に言いはしないですけど、後輩から相談されたらそう言ってます。たとえばファッションがめちゃくちゃ好きな後輩には「それを全面に出したほうがいいと思うよ」と言うし、真船も漫画を描いてるならそれを全面に出したほうがいい。

――真船さんは漫画家デビューしたことで、佐久間さんが言うように仕事がしやすくなった面はありますか?

真船: 名刺を渡すときに周りの人が「この人、漫画家なんですよ」って伝えてくれて、それで相手に覚えてもらえることが増えました。今まではただのADやディレクターの1人だったのが、飲み会でもなんでも「漫画家なんだね!」って言ってもらえるようになって。自分でも「漫画家です」って名乗れるようになったので、ひとつキャラが立ってよかったなと思いますね。

佐久間さんは、変でしたよ(真船)

――逆に、肩書が増えたことでテレビのほうのお仕事で苦労したことはないですか?

真船: えー、なんだろう。

佐久間: 比較的ゆるい会社ではあるけど、それでも「本業に集中しろ」って反対するおじさんは多少いたと思うんですよね。

真船: あ、それはそうですね。直接言われた記憶はないですけど、ミスしたときに「やばい、『漫画ばっかり描いてるからだろ』って思われないかな」と考えることはあるかもしれません。特に漫画っていうと、遊びっぽいイメージを持たれやすいじゃないですか。仕事として依頼をもらって描いているものでも、「遊んでる」と思われそうで。最近は本業の一環で、デスクで絵を描くこともあるんですが、遊んでると思われないかめっちゃドキドキしながら書いてます。

――佐久間さんも、以前から他局の番組に出演したりトークイベントに出演したりと、局のプロデューサーとしての仕事以外の活動は多かったと思います。同じように社内で厳しい目を感じることはあったんですか?

佐久間: うーん……真船が入社したのっていつ?

真船: 2012年です。いま8年目です。

佐久間: 俺、真船が入社した頃から“変わった社員”じゃなかった?

真船: 佐久間さんは変でしたよ。

佐久間: 『ゴッドタン』を始めたのが28か29歳のときなんですけど、その頃にはもう「お前は何やってんだ」って思われてる社員だったんですよ。だからテレビに出演することがどう、とかいうことではないというか。
20代後半から30代半ばくらいまでは「お前、ゴールデン番組やらないで好きな企画ばっかりやってるな」ってよく言われてたし、「その深夜番組、ゴールデンに上げなさいよ」「嫌です。じゃあもっと深い時間帯にいきます」とかってやりとりもあったし。
僕は僕の論理で、それが会社のためになると思ってやってるんですけど、そうじゃないロジックの人と向き合ったり批判されたりした時期が結構早い段階からあったので、もうなんとも思わない精神状態に育っちゃってるんですよね。だから、今もなんか言われてるのかもしれないけど、気づかない。「なんとも思わない」っていうハートは意外と大事ですよ。

真船: そうですね。さっき佐久間さんに言われるまで、副業をよく思わない人がいたことも忘れてたんで、私も気にしてないのかも。何か言う人はどこにでもいるけど、あんまりなんとも思わないです。

佐久間: 会社の飲み会にさえ行かなければ大丈夫です(笑)。批判してきそうな人と付き合わなきゃいいだけなんで、気楽なもんですよ。でも自分で言うと身も蓋もないんだけど、僕みたいな社員がいると、面白そうな会社だなと思われるんじゃないかな、って。社長とか偉い人に会ったら毎回「俺みたいな社員がいる会社、よくないですか?」って言ってます。

真船: 毎週ラジオの放送中に佐久間さんの名前がツイッターのトレンド入りしてるじゃないですか。炎上でもなく上司がトレンド入りしてるって、不思議な会社だなと思います。

毎週、月曜日には「明後日ラジオだな〜」って楽しみに(佐久間)

――現役テレビ局員が『オールナイトニッポンZERO』のレギュラーパーソナリティになるのは、真船さんが最初におっしゃったようにやっぱりかなり“変”なことだと思います。毎週1回深夜にしゃべるのは大変じゃないですか?

佐久間: これはもう本当に楽しいだけですね。毎週、月曜日には「明後日ラジオだな〜」って楽しみにしてます。

真船: 遠足みたいな感じですか?

佐久間: 本当にそう。週の真ん中に毎週気晴らしがあるっていう、素晴らしいワーク・ライフ・バランスですよ。

――『オールナイトニッポン』を気晴らしだと思ってるパーソナリティはあんまりいないと思います(笑)。ではラジオパーソナリティをやってるぞ、という“肩書き”意識もあまりないですか?

佐久間: ないですね。

真船: Wikipediaの佐久間さんのページを見ると、肩書きがめっちゃ多いですよね。

佐久間: それは絶対かっこわるいから1個にしたほうがいいけどね。秋元康さんみたいに、いろいろやってるけど「作詞家」ってしてるほうがかっこいいよ(笑)。

――じゃあおふたりは、今「肩書きはなんですか?」と聞かれたら、どう回答しますか?

佐久間: 僕はプロデューサーですね。

真船: テレビマン兼漫画家、です。自分の中ではもう並列になってますね。

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後編では、入籍を発表した真船さんの「“ぼっち”を売りにしていた自分が幸せになったらどうなるんだろう?」という問いに、佐久間さんが答えます!

テレビ東京社員(現在BSテレ東 編成部出向中)。AD時代の経験談を『オンエアできない! 女ADまふねこ(23)、テレビ番組作ってます』(朝日新聞出版)にまとめ、2017年に漫画家デビュー。ツイッターアカウントは@mafune_kana
1986年生。編集者、ライター。月刊誌「サイゾー」編集部を経て、フリーランス。編集担当書に「別冊サイゾー『想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本』」など。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
肩書って何だろう