行こうぜ!性別の向こうへ

ライムスター宇多丸「文化人でさえ男女の不均衡に無自覚なのが日本の現状」

日本語ラップの先駆けライムスターのメンバーで、ラジオDJや文筆家としても活躍し様々な文化に造詣の深い宇多丸さんに、ジェンダーについてお話を伺ってきたインタビューの第4弾。今回は、社会全体に存在する無自覚な男尊女卑について聞いてみました。

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蔓延している無自覚な男尊女卑

――そもそも、今の社会が当たり前で、男尊女卑的なムードに気づいていない人もいっぱいいます。

宇多丸: テレビ番組のバラエティでも、「それが“笑える”ネタだと本気で思ってんの?」みたいにギョッとする瞬間、いっぱいあるもんね。セクハラが問題になったみたいなニュースに対して、「この頃は息苦しくて敵わんなぁ」的な反応がカジュアルにあったりとか。

せめて自分が出る番組ではできるだけ反論とかフォローをしておきたいとは思ってるけど、うまく流れに乗れなかったりして、単に文字通り閉口して終わっちゃうこともあって。忸怩たる思いが残ることもあります。

――メディアに出る方々でさえ、不均衡さに気づいていないことも多いのですね。

宇多丸: 男はぶっちゃけ、不均衡さを意識せずに生きていけちゃうからね。

例えば「女も『抱かれたい男ランキング』やってるじゃないか、美醜で異性をジャッジしてるじゃないか」みたいな反論って男側からよく出がちだけど、いやいやそれは、女性はあらゆる局面でルックスのみによる過酷な値踏みを受け続けてきた、そういう歴史があった上でのカウンター企画であって、そこはまったく男女対等じゃないですよ、ということなんだけど、男はなかなかそこに気づけない。

「ただしイケメンに限る」に怒る男性

宇多丸: 個人的に女性の皆さんに言いたいのは、「頭ポンポン」や「壁ドン」を喜ぶ、みたいなことをあんまり安易に言わないほうがいいんじゃないか、ということ。

「ほら、やっぱりそうやって結局、男に上位に立ってほしいんでしょ」と図に乗るバカ男をさらに増やしてどうすんの!って。

――それは典型的な「ただしイケメンに限る」案件です!

宇多丸: いや、もちろんそうなんだけどさ。

単に女性側にも当然ある、相手を選ぶ権利としての「ただしイケメンに限る」を、なぜかなかなか受け入れられない男が多いんですよ。

「セクハラだって、好きな人にされたらいいんでしょ」とかバカ丸出しなことを得意げに言い立てたりするのと、根っこは同じですね。
またそういうことを言ってるヤツに限って、いまだにブスだのなんだの、人の見た目の品評を当然の権利みたくしてたりして。死ねばいいのにね!

――なんで、矛盾に気づかないんですかね。

宇多丸: バカなんでしょうね。バカなんだと思います。

【取材後記】
今回は、日本に広がる無自覚に広がっている男女不均衡の実態を、実感を持って語っていただきました。次回は最終回。男女の不均衡を解消するためにできることを聞きます。

●宇多丸(うたまる)さん プロフィール
1969年東京都生まれ。ラッパー、ラジオ・パーソナリティ。89年の大学在学中にヒップホップ・グループ「ライムスター」を結成、日本ヒップホップの黎明期よりシーンを牽引し第一線で活動中。ラジオ・パ一ソナリティとしても人気を博し、09年には第46回ギャラクシー賞「DJパーソナリティ賞」を受賞。18年4月よりTBSラジオで月曜日から金曜日の18時から21時に生放送されるワイド番組「アフター6ジャンクション」でメインパーソナリティを務める。テレビ、雑誌、ウェブなどでも活躍中。
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写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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