行こうぜ!性別の向こうへ

ライムスター宇多丸「○○らしくしなさい!というヤツは全員バカ」

日本語ラップの先駆けライムスターのメンバーで、ラジオDJや文筆家としても活躍され様々な文化に造詣の深い宇多丸さんに、ジェンダーについてお話を伺ってきたインタビューの最終回。男女の不均衡を解消するために、私たちはどんなことができるかを聞いてみました。

●行こうぜ!性別の向こうへ

学生時代「女は全員男とのセックスを今すぐ拒絶するべきだ」と思っていた

――男性は特に男女不均衡に気づきづらい世の中だと思うのですが、どうして宇多丸さんはそんなにニュートラルな目線をお持ちなんですか?

宇多丸: お恥ずかしい話なんですが、大学時代に付き合っていた彼女が、フェミニズムに対しての意識が高かったんですよ。
ただ当時は、彼女がその方向で何か意見を言うと、僕はなまじ弁が立つので、なんとなくいつも、小手先のディベート力で言い負かしてしまっていたんですよね。
でも、別れた後に、「彼女はあの時、本当には何が訴えたかったんだろう?」と思って、フェミニズムについて、入門書レベルですけど、自分なりに勉強してみたんです。
もともとそこまで性差別的な人間ではないつもりでしたけど、自分はこれまでこの問題をちゃんと考えたことがなかったな、なのに彼女に悪いことしたなと、遅まきながら深く反省しまして。
反省しすぎて、「女性は今すぐ全員、男とのセックスを拒絶すべきだ」と本気で考えていたくらいで(笑)。「それくらいやらないと、俺達はわからないから」と。
ただ、わざわざ本を読まなきゃ社会における女性の痛みに気づけなかったというのが、情けない限りです。

――いや、でも、現状気づけてない人もたくさんいます。

宇多丸: 家庭や学校で「男らしく」「女らしく」と言われ続けてたら、そこを疑うきっかけもなかなか持てないかもしれませんけどね。
僕自身はずっと、「男らしくしろ」って物言いにすごく反発を感じてたんで、まだマシだったかもしれませんが。「男らしく」「女らしく」って怒る先生とか、「馬鹿なんじゃないのか」ってわりと早い段階から思ってましたね。

僕は昔からとにかくよく口が回るんで(笑)、「男のくせにそんなベラベラしゃべって」とか言われるんだけど、おんなじことを女子がやってもやっぱり、「女らしくない、おしとやかにしてなさい」とかぬかしやがるわけで、要はそっちの都合よく扱いたいだけじゃん、と。

男女の不均衡を解消するためには?

――不均衡に気づけてない人たちを巻き込んでいくためにはどうしたらいいでしょうか?

宇多丸: やはり、問題の顕在化が大事ですね。
女性側は、ひとつひとつの嫌なことに関してしっかり声を上げ、怒り続ける。
男性側は、それにちゃんと耳を傾けたうえで、自分らなりの回答を返す。
今まで我々は、こういうプロセスを踏み越えてこなさすぎた。そこには小さくない軋みが生じると思います。でもそれは当たり前。
一番よくないのは、これまでフェミニズムに対して日本の男たちがとってきたような、なんか怖いから黙っとこう、逃げとこう、みたいな態度ですよね。対話せず、分断したままだから、何も解決しないし、進歩しない。とにかくまずは対話が必要です。最初は衝突でもいいんです。言い合いながらも、お互いちょっと理解が進む、というのを重ねていくしかないんじゃないですかね。

――もっとたくさん意見を言い合わないといけない?

宇多丸: 今回の僕のこのインタビュー発言だって、至らないところがたくさんあると思いますし。バンバン声を上げていただきたいですね……あの、できればお手柔らかに(笑)。

「らしく」というやつは全員バカ

――性別関係なく、今の世の中が不均衡なことに気づいていない人達は多いと思っています。そういう人たちの中で、生きづらさを感じている人たちにメッセージをください。

宇多丸: あらゆる意味で、「らしさ」からの開放っていうのが、人生を楽しく生きる第一歩ではないかなと。その意味では、僕が育った時代の教育現場ではとにかく、「らしく」っていうことを言い過ぎてましたよね。

子供らしくしろ。女らしくしろ。男らしくしろ。あるいは、ラッパーらしくしろ……今でも言われてる(笑)。

でもね、僕はこれ、断言しますけど、「らしく」とか言ってくる人は、例外なくバカですから。
だから、なるほど私はこの面の「らしく圧力」が息苦しいんだとか、分析して、自覚するところがスタートかもしれませんね。

――なかなか痛みを自覚するのは難しかったりもします。

宇多丸: 自分は何を息苦しく感じるのか、自分が何を嫌だと思ったのかという、心の中の小さなササクレを思い出してみてください。あ、私、こういうこと言われると不愉快だったんだ、とか。
長年生きていると、そういうことを流すようにもなってきちゃうけど、きちんと自分の心の声に耳を傾ける。

――「○○ちゃんて、××だよね〜」と言われた時に、感じた違和感を大事にするという感じですね。

宇多丸: そうですね。
そうやって人からレッテルを貼られること自体は、他者と関わりながら生きている限りは、ずっと続く。そこからは逃げられないわけですけど。

――貼られたレッテルに対して、自分が嫌だと思ったらどうしたらいいでしょう?

宇多丸: 貼られたレッテルを内面化しないこと。人が押し付けてくるルールを内面化しないことが大事なんじゃないですかね。それがなかなか難しいんだけど。

あとは、いっぱい本を読んだり映画を見たり、視点を増やしていくことかな。SNSもいいんだけど、仲良しの人の意見しか回ってこないじゃないですか。自分の意見は増幅されるけど、新しい視点が入って来づらくなるところもあると思うので。

――いろんな視点を得ると、誰か1人に貼られたレッテルに対しても、疑問を持てるようになるのかもしれません。ありがとうございました。

   

●宇多丸(うたまる)さん プロフィール
1969年東京都生まれ。ラッパー、ラジオ・パーソナリティ。89年の大学在学中にヒップホップ・グループ「ライムスター」を結成、日本ヒップホップの黎明期よりシーンを牽引し第一線で活動中。ラジオ・パ一ソナリティとしても人気を博し、09年には第46回ギャラクシー賞「DJパーソナリティ賞」を受賞。18年4月よりTBSラジオで月曜日から金曜日の18時から21時に生放送されるワイド番組「アフター6ジャンクション」でメインパーソナリティを務める。テレビ、雑誌、ウェブなどでも活躍中。
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写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
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