肩書って何だろう

学歴、会社名…肩書コンプレックスとの向き合い方とは?【肩書座談会(上)】

転職したり、結婚したり、出産したり、ライフステージを駆け抜けるなかで「肩書」は私たちの助けになったり重荷になったりします。リアルなミレニアル世代は肩書とどう付き合っているのかを知るべく、telling,ライターである私、神山園子と読者2名で座談会を行いました。育ちも学歴もキャリアも違う3人が想う肩書とは――。 カナ(32歳):東京生まれ東京育ち。早稲田大学を卒業したいわゆる「ワセジョ」ながら、就職氷河期のあおりを受け新卒でフリーランスに。周りの華々しいキャリアに後ろめたさを感じていたが、ベンチャーを転々としたのち数年前に大手メーカーに転職。 ミキ(34歳):東京大学出身。新卒で入った大手金融機関を退職後、ベンチャー企業に転職。結婚を機にフリーランスへ。その後離婚して現在はバツイチ。 神山園子(28歳。以下、園子):大学受験に失敗したものの、就職活動で志望していたマスコミ系企業に内定。その後業界内で転職し現在3社目。telling,でライターとしても活動。地元が田舎であることがコンプレックス。

学歴は良くても悪くてもコンプレックスになる

園子: 私が肩書というものを意識したのは大学受験でした。第三志望に入学したんですが、ものすごい学歴コンプレックスを抱えてしまって。大学名をいうと、「ああ、あそこね」と下にみられる感じがずっと嫌だった。お二人はワセジョと東大生だからそういうのはなかったですよね?

カナ: 逆学歴コンプレックスです。バイト先とかでも「頭いいんだね」と相手にひかれる。「勉強はできるんだろうけど負けないぞ」と男性がマウンティングしてきたりとか。もう少し馬鹿っぽくしないといけないのかなと悩みました。

ミキ: 私もカナさんの気持ちわかります。新卒の会社では上司から「おれは〇〇大だけどミキちゃんは東大だもんね。頑張って出世すればいいよ」と嫌味を言われたり。だからわざと馬鹿のフリしてました。めっちゃ酒飲むとか、カラオケで盛り上げるとかして、「東大女子なのにノリがいい」というポジションをとって満足してた。

園子: でもお二人は実際勉強したんだし。どうして「実はこんなんですよ」と下からいかなきゃいけないんですか?

ミキ: 私は問題集を解くのが得意だっただけで、東大受かったのもラッキー、くらいの感覚でした。でも、いざ社会に出たら周囲の人は私本体よりも東大の看板を見て話してるなって。光栄な看板なんですが、そこ以外にも良いところありまっせ!と言いたくなっちゃう。でも、不思議なことにフリーになったらすごく「東大」をちらちらさせたくなったんです(笑)。自信がなくなっちゃって、いい看板掲げたくなっちゃう。すごいかっこ悪いと思うけど。

カナ: 私も学歴にすがっちゃう。ただ、フリーでは学歴と仕事をとってくる力は比例しない。そこは別物でしたね。

就職を機に感じた後ろめたさ

園子: 聞いていて私の場合は逆だなと思いました。大学名を言うと自分が思っているより自分の価値を小さく見積もられるのが嫌だった。それが変わったのは就活後です。私は1社目は志望企業に入れました。それまでずっと学歴コンプレックスで肩書が嫌だったのに、内定決まったときめちゃくちゃ人生楽しくて、無敵状態でした。進路を尋ねられると「よくぞ聞いてくれました」って、嬉々として答えてましたね。お二人はどうでしたか?

ミキ: 私の就職先は大手の金融系企業でしたが、”就活勝った感”は全然なかった。当時は、コンサルとか外銀が勝ち組なので。でも私は大学の中でも勉強できなかったので、働くところがあってよかったみたいな。

園子: 友達に聞かれてスッと答えられた?

ミキ: それはやっぱり……恥ずかしいと思ってました。「あ、ふーん」みたいな反応だから。

カナ: 私も新卒で就職できなかったので友達には言えなかったですね。フリーライターですって言うと「すごいじゃん、お洒落じゃん」て言われたけど。「芸能人と関わりました!」とかフェイスブックにあげて、すごいって言ってもらってプライドを維持するのが精いっぱい。それで他の子と張り合ってました。

就活がちょうどリーマンショックのときだったんですよ。「大企業入ってもだめじゃん」みたいに言われていた時期で、「手に職があったほうが働きやすいよ」と言われてフリーになったけど、周りから聞くと給料とか違うし、「あ、やばいな」と。

有名企業からベンチャーへ移って感じた「扱いの差」

園子: そこからお二人は会社を転々とするわけですよね。自分のキャリアを模索していたんですか?

ミキ: そうだし、いまも模索してます。

カナ: 私は2年弱フリーでやったあと、第二新卒で学歴カードを使って何とか転職できた。そのとき入ったのはマザーズ上場するかしないかのベンチャーで、世の中的に知られていない会社でした

ミキ: それでいうと、大手のときとその後のベンチャーで、名刺交換したときの相手の反応の違いはものすごく感じました。有名な企業で働いていると、相手もすごく好意的に見てくれる。無名企業だと、え、誰?みたいな扱い

園子: 私も誰もが知ってる会社から、無名の会社に転職したからわかります。業務内容には満足してるけど、相手が名刺を見て「何の会社かしら」という顔してるのがすごくわかる。

カナ: 私は「クライアントはこんなところです」と大手を引きあいにだして馬鹿にされないようにしてました(笑)。

ミキ: でもそれって誰に対して虚勢張ってるのかな。久々に会った親戚に自分は大丈夫だよ、安定してるとアピールしたいからならともかく。異業種交流会だったら社名より業務内容とかのほうが重要だったり……いや、あれはあれでコンプレックス刺激されますけど。

園子: 同業他社の集まりなら、しっかりしてるかは話す内容である程度計られますよね。屋号で負けてもキミわかってるね、となればいい。でも異業種交流や合コンでは、説明尽くしても他業種のことはわかってもらえなくて、前の会社の方が良かったのにね、とか本当に悪気なく言われる。

ミキ: 私も親戚には「新卒の会社の方がよかったのにね」と言われます

園子: それに反発しつつも、言い訳がましくなる自分がみじめ。一発で説明つくカードがほしい。例えば「結婚して子どもいます」って言えれば、「わたしまともな社会人です」って、いちいち説明しなくてもわかってもらえる気がする。「キーエンスです」っていったら、仕事バリバリで結婚するヒマがないんだ、と勝手に想像してくれたり。それがないから、自分をどう説明したらいいか不安になる。そういう切り札、切りたくなることないですか?

カナ: 自信がないときはそうですね。

園子: それこそ東大とか「あがりのジョーカー」じゃないですか

ミキ: 合コンで男の人がばかにしてくるときは、最終的に学歴をあかして、「黙ればかやろう」という空気をつくるというのはやったことありますね(笑)。

【続く。後編では出身地コンプレックスや恋愛・結婚相手の肩書問題について語ります】

1991年生まれ。芸能・出版などマスコミ業界で働く会社員。リアルなミレニアル世代として、女性特有のモヤモヤや働き方などを主なテーマに記事を執筆中。
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