【夏のマネー集中講座】 30代の女性に伝えたい!人生100年時代 クレジットカード、クリティカルシンキング、出会い、年齢……。賢いお金のトリセツ【後編】

女性の平均寿命、過去最高――。7月末、女性の平均寿命は87.45歳になったと、厚生労働省が発表しました。「人生100年時代」の今、経済的に自立した一人の女性として生きるためには何が必要でしょうか。長年、悩める女性の相談に乗ってきたファイナンシャルプランナーの中村芳子さんに、身につけたい知識と考え方を聞きました。後編では30代の女性に向けてお届けします。

溢れる「お得」情報 お金の根本の意味を知ろう!

ここ最近、世の中を見ていると、「お得なキャッシュレス決済は○○」など、「お得」を強調する情報が溢れています。知識として得るのはいいのですが、あくまでも「表面的」「送り手の情報」と認識してください。「得」には必ず理由やしかけ(最終的に提供者がもうかる仕組み)があります。それに、お得ばかり追い求めてもいい結果にはなりません。

これは、「健康」と同じです。例えば、栄養価が優れているキヌアといったスーパーフードだけを食べても健康にはならない。素材から作った食事をし、運動をし、休息をとる。そのシンプルな生活が健康の土台だと私は思います。この三原則を実行せずにスーパーフードやサプリメントをとっても健康にはならないし、高級化粧品を使っても肌はきれいになりません。

お金も同じ。まずは土台、そもそも「お金とは」という根本を30代のうちに知っておくことが大切です。どう「稼ぎ」「使い」「貯め」「増やす」か。最新情報を集めるだけでなく、基礎のところから学んでいきましょう。
たとえば、収入の範囲で生活する、手取り収入の15%をずっと貯金する、貯金の一部は投資信託で積み立てる、住宅ローン以外の借金はしない、自分の価値を高めるお金の使い方をする、などです。

これらの基本を理解していないと、このご時世、あらゆるところに隠されている「落とし穴」にはまってしまう危険性があります。

「国民年金保険料の支払い」対処を間違えると……

以前、借金の相談をしに来た方がいました。クレジットカードの残高が増えて、返しても返しても残高が減るどころか、増えてしまうというのです。そもそもの原因は、買い物のし過ぎやぜいたくなどではなく「国民年金保険料の支払い」。支払い期限を超過した国民年金の督促状が届き、「これ以上滞納すると資産を差押えます」と書いてあったので怖くなって、あわててクレジットカードで納付したんです。

その返済を「リボ払い」にしていたんですね。リボ払いという言葉、よく聞くと思いますが金利が15〜18%と高く、毎月の返済が少ないので残高がなかなか減らない。簡単に借り増しができるので、むしろ残高が増えてしまうという危険があります。

別の女性は、複数の借金を整理して早く返済を終わりたい、と相談に来ました。クレジットカードの明細を見せてもらいましたが、どれが一括払いで、どれがリボ払いか、いつ払い終わるのか、返済プランの変更手続きなど、プロの私でも簡単に読み取れませんでした。これ敵の戦略かも。

一括払いでなくリボ払いを選ぶと、たくさんのポイントが付きます。しかしそれ以上の利息を払うことになるし、借金が膨らんで身動きがとれなくなるリスクが大きい。そういう方の相談をたくさん受けてきました。目先の「お得感」に惑わさないように注意してください。

お金の相談は恥ずかしいことではありません。いま困っていたら、もし将来困ることがあったら、ひとりで抱え込まず、FPや弁護士などの専門家に相談してください。

お金に関する正しい情報を得るには、手前味噌ですが信頼できるFPを見つけることをお勧めします。結婚や出産、マイホームの購入、シングルで生きることなど折々に相談することで、正しい情報を得て、それを自分にどう適用したらいいか知ることができます

ひとくくりにFPと言っても、得意分野がある。HPや著書などを見て、信頼できて価値観が合う専門家を探してください。相性の良さも大事ですよ。

自分でお金をプランニングしたい、という場合は、FPになるための勉強をするのもいいですね。資格を取るかどうかは別として、勉強をすることでお金の仕組みや制度、情報の取り方、考え方など、お金まわりの「基本」を知ることができます。

30代で身につけたいクリティカルシンキング、そして…

30代では二つの「考え方」を覚えておいてほしいですね。一つは、物事を客観的に判断する「Critical Thinking: クリティカルシンキング(批判的思考)」。

日本の教育では、「与えられたものを覚えて、その知識をアウトプットする」ことが重んじられていますが、アメリカでは小学校からクリティカルシンキングを学びます。6年生で「自分が大統領だったらどんな政策をするか」発表し合ったりするんです。

スタートラインは、与えられた情報、当然とされていることを「本当かな」と疑ってかかること。次に客観的な事実を集めます。「お得な情報」に見えても、本当にそうか、仕組みはどうなっているか、反対の意見はないのかなど、多角的な視点を持って「自分で考える」習慣をつけることが必要ですね。

もう一つは、柔軟に考えて調整する力「アジャストメント」です。以前、既婚者の方から「(お金が限られているので)マンションを購入するか、子どもを持つか、どちらにしたらいいか」という相談を受けました。

「どちらかではなく、どちらも実現できますよ」と伝えると驚いていました。望む生活や目標を実現するために、アプローチ法を変えたり、うまくやりくりしたりすることで、可能性は広がります。二者択一ではなく、何か別の方法はないか、想像してみてくださいね。
もしあなたが、結婚したらあれができない、子どもができたらこれができないと考えているなら、この調整力を磨いてください。お金の面でも時間の面でも、やりたいことはできます。

反比例する年齢と世界の広がり!?

40代の働く女性を見ていると、世界が狭いと感じることがあります。年齢が上がるにつれ、仕事で責任が重くなり、忙しくなる傾向があります。そうなると、自宅・職場・スポーツクラブなど、閉じた世界の中で生活が完結しがちです。
学生時代は、新学期が訪れる度に世界が広がっていきました。でも社会人になると、自動的には難しい。

出会いも同じですね。30代半ばまでに結婚する人の大半が、学生時代からの知り合いか、職場や趣味を通して知り合っています。「恋人がほしい」「結婚がしたい」と思っても、今まで職場や趣味の場で出会いがなかったら、新しい場を自分で開拓していかないといけません。自ら動いて世界を広げていくことです。

年齢について、結婚でも転職でも「年齢が上がると価値が下がる」と考える女性が多いと感じます。これはアジア特有の考え方。欧米ではそう考える人は少ないですよ。私はアメリカに住んだ時、黒人教会に通っていました。アフリカン・アメリカンの女性は自信に溢れていて「年を重ねるほど魅力的になる」と考えています。そして、実際にそれを見せてくれました。

「年を取ると価値が下がる」とネガテイブに考えると本当にそうなってしまう。人は信じたとおりになるのです。そんな嘘を信じてはだめ。人は年をとるほどに輝きを増すことができます。人生はまだまだ長い。去年より今年、今年より来年、もっと魅力的になるために、自分の暮らし方、働き方、生き方を希望に近づける方法を探してください。

10歳年上、20歳年上、30歳年上の素敵な生き方をしている人から、きっといろいろなヒントをもらえます。そんな人たちに出会うためにも、ぜひ世界を広げてくださいね。

いま、働く女子がやっておくべきお金のこと

著者:中村芳子

出版社:青春出版社

ファイナンシャルプランナー。東京・下北沢のオフィスで多くの人のお金の相談にのり、人生の悩み解決のお手伝いをしている。早稲田大学商学部卒。メーカー勤務を経て1985年に独立系ファイナンシャルプランニング会社に転職、女性FP第1号に。91年に友人と「アルファアンドアソシエイツ」を設立。『20代のいま、やっておくべきお金のこと』(ダイヤモンド社)『いま、働く女子がやっておくべきお金のこと』(青春出版社)など著書多数。
同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。
働く女子のお金のトリセツ