29歳独身、結婚や仕事、貯金はどうする?FPに聞く「いまやるべきこと」とは?

30歳を目前にして、結婚や出産、キャリアなどについて焦る「29歳問題」。今回は「29歳問題」を「お金」の面から考えてみたいと思います。結婚相手に求める年収、育児にかかるお金、老後の生活資金、働き方などについて、ファイナンシャルプランナーの中村芳子さんに伺いました。

結婚相手に求める年収は自分よりも上?

――29歳というと、これから先の働き方など、様々なことを考える時期ですよね。お金の面では、どうですか?

中村:働いている女性の場合、結婚相手には自分と同程度か、以上の収入がある人を求めがちですね。高身長、高学歴、高収入の「3高」がもてはやされた時代もあったけど、私はおすすめしません。

――相手が自分より収入が低かったら嫌かも。

中村:なぜ、自分よりも収入が低いと嫌なんですか? 彼自身が自分で稼ぎ、生活はできているんですよ。収入が気になるというのは、お金で人の価値を測っていることになりますよ。

たとえば、年収1000万円の人と500万円の人をくらべると、500万円の人の価値は年収1000万円の人の半分。300万の人は3分の1。収入だけで見ると、そうなりますよね。
その価値観から自由になれば、もっと楽に出会えるようになります。ただし、女性の年収が自分より高いことに対してコンプレックスを持たない男性を選んでね。

――「お金で人の価値を測っている」と言われると、ドキッとします。

中村:お金を稼ぐ能力とその人自身とは別モノよ。お金を稼ぐ能力は、いくつかある能力のうちの1つでしかないの。たとえば、学識が高いことや人徳者であることは、それ自体ではお金を稼ぐ能力とは関係ないでしょ。

今は夫婦のいずれも原則、育休が取れるし、3歳から保育園や幼稚園も無料、高校の授業料も公立、私立も実質無償化。子育てに必要なお金は減ります。かかるのは塾代くらいですよ。
仮に自分が年収600万円で、彼が300万だとしたら、2人で900万円になる。そしたら貯金もできるし、豊かに暮らせますよ。家事や育児が好きな彼だったら、帰宅すると夕食ができている。子どもを保育園に迎えに行ってお風呂に入れてくれる。帰宅後や週末に、夫と子どもと過ごす時間は至高になるかも。

結婚&出産と、キャリアアップ 優先させるべきは?

――結婚や出産と、仕事のキャリアの形成のどちらを優先させるかという悩みも出てきます。

中村:二者択一、という考えから自由になれたらいいですね。ただ現実に、結婚や出産はタイミングを逃すと難しくなってしまいます。
男性の29歳は「出世したい」という考えが強くなる時期ですが、女性も仕事をメインにやっていると、そういう価値観になりがち。でも、出産や子育てで一時的に仕事を減速しても、仕事を続けていれば必ず巻き返すチャンスは来ます。結婚、出産で仕事の幅が広がる可能性もあります。常々「仕事は一生できるわよ」と言ってます。

――転職や起業を考える人もいます。

中村:29歳前後で起業したり、フリーランスになったりするのもいいと思います。3年経って「やっぱり会社員のほうがいい」と思ったとしてもまだ32歳でしょ。32歳だったらまだいろんな会社に就職できますよ。

私も、29歳で自分探しの旅に出るため半年間、オーストラリアに遊学をし、素晴らしい経験をしました。ただ、海外にいるだけでは勉強にはならないし、はっきりした目的がなければ英語力はあがらないということにも気づきました。

結婚するか否かに関わらず仕事において大事なことは、取り組み方。自分で自分の老後の面倒がみられるような働き方をすること。「コロナストレスで使い過ぎ?それとも貯め過ぎ? お金との上手な付き合い方とは」でも話したけれど、収入の手取りの15%の貯金は必ずしてください。

いちばん大事なことは、仕事を続けること。収入が一定額あり、65歳くらいまで続けられる働き方を目指す。そしたら無理しなくても、ちゃんと老後の資金も貯められますよ。派遣社員で、特殊技能がない場合は65歳まで働き続けるのは難しいと思います。派遣の働き方を続けたいなら、得意分野でスキルアップするとかの作戦が必要ね。

「やりたいことリスト」をつくってみる

――独身の人が、やっておくべきことはありますか?

中村:独身なら「独身のいま、やっておきたいこと」「結婚したら、実行しにくいこと」をやりつくす計画を立てる。そして実行することをオススメします。

たとえば、やりたいことリスト、行きたいところリストをつくるといいですね。
「死ぬまでにしたい100のこと」をノートに書き留める、ということを聞いたことがあるかもしれません。バケットリストとも言われますね。30代でやりたいこと、40代でやりたいことと年代別にノートに書き出してみるのもいいでしょう。

――中村さんは独身の頃は、どんなことをしたんですか?

中村:私はオーストラリア、モルディブ、エジプト、バリ、沖縄、北海道など、行きたいところはたいてい訪れました。ヨット、ウィンドサーフィン、スキューバダイビング、転職、起業、引越し、資格取得、短期留学など、やりたいことも大抵やった。恋愛も失恋も!仕事では、最初の著書『ワーキングウーマンのマル得マネーブック』という本を出版しました。悔いはありません(笑)。

29歳は、ある程度貯金もできてくる頃だと思います。ただ、貯まり始めると「お金は貯めるべきもの」「老後が心配だから貯金をしないと!」と思い、貯めることばかりに一生懸命になる人もいます。しかし、29歳の時にしかできないこともたくさんあります。

しっかり働いて稼いだお金だからこそ、自分のやりたいことのために使ってください。お金と時間、エネルギーと勇気を使って手に入れる「経験」や「友人」は、何にも変えられない、決して減らない財産になります。
もちろん、貯金を使い果たして30歳でゼロになるのは困るので、豊かな30代を過ごすために必要な貯金は、キープしておくことも忘れないで。それから、収入の手取り15%は毎月、貯金し続けること。そしたら何歳になってもお金の心配をすることなく、自分らしく豊かに暮らすことができますよ。

いま、働く女子がやっておくべきお金のこと

著者:中村芳子

出版社:青春出版社

ファイナンシャルプランナー。東京・下北沢のオフィスで多くの人のお金の相談にのり、人生の悩み解決のお手伝いをしている。早稲田大学商学部卒。メーカー勤務を経て1985年に独立系ファイナンシャルプランニング会社に転職、女性FP第1号に。91年に友人と「アルファアンドアソシエイツ」を設立。『20代のいま、やっておくべきお金のこと』(ダイヤモンド社)『いま、働く女子がやっておくべきお金のこと』(青春出版社)など著書多数。
明治大学サービス創新研究所客員研究員。ミリオネアとの偶然の出会いをキッカケに、お金と時間、行動について真剣に考え直すことに。オンライン学習講座Schooにて『文章アレルギーのあなたに贈るライティングテクニック』講座を開講中。
働く女子のお金のトリセツ