賢く使おう! 10万円の特別定額給付金

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策として一律で給付される10万円の支給が本格化します。来月には夏のボーナスを受け取る人も多いでしょう。このお金はどう使ったらいいのでしょうか?特別なお金が入った時の使い方も含めて、FPの中村芳子さんに賢い使い方について聞いてみました。

10万円の使い道、優先順位は?

――特別定期給付金の10万円はどのように使われるでしょうか?

中村:置かれた状況によっても違いますが、生活がひっ迫していている人は家賃や公共料金の支払い、滞っているローンの返済などに充てることになるでしょうね。また、これから先のことに備えて貯金する人も多そうです。

――生活に困っていなかったら、どうするのがいいですか?

中村:自宅で快適に過ごすための費用にあてるのはどうでしょう。今回のコロナをキッカケに企業はどんどんテレワークを進めています。必然的に家にいる時間は長くなるので、環境を整えることはすごく大事ですよ。以前は住まいが、寝に帰るだけの場所だった人も多いと思いますが、これを、仕事でもプライベートでも充実した時間を過ごせるスペースに改造しましょう。たとえば、いま人気なのはコーヒーメーカーやホットプレート、タコ焼き器、ホームベーカリーなど。ひとりでもおうち時間が楽しめるし、落ち着いた後に友人を呼んでホームパーティーをするのもいいと思いますよ。

部屋に観葉植物を飾ったり、カーテンやクッションを新調して、部屋の雰囲気を変えたりすれば、コロナで憂鬱の気分も一新されるかも。

ただし、ちゃんと予算を決めて買い物してね。じゃないとせっかく10万円を支給されても、マイナスになってしまいます。予算を決めておけば、不要なものをあれこれ買いこむことを防げるメリットもあります。

――家で快適に過ごせたら、仕事の生産性も上がりそうですね。

中村:賃貸に住んでいるなら、引っ越しをするのもいいでしょうね。毎日会社に行く必要が少なくなれば、多少交通の便が悪くなっても今と同じ家賃でもっと広いところに引っ越したほうが快適な生活が送れるかもしれません。広くて気持ちいい家に住めば、コミュニケーションの輪も広がります。ボーナスなども含め、ある程度まとまった金額が入るときに引っ越しを考えてみるのもいいと思いますよ。

メリハリが身につく「自分へのボーナス」

――そのボーナスですが、日本総研は「2020年夏季賞与の見通し」で、今年の夏の民間企業のボーナスは1人あたり平均6.4%下がると予想しています。

中村:平均値は6.4%かもしれませんが、コロナの影響は業種によってかなり違うので、減額率も業界で異なるでしょうね。たとえば業績が悪化している観光業界、自動車業界などは、もっと厳しいかもしれません。

とはいえ、夏のボーナスの支給額は3月あたりに決まっていることが多いため、まだ影響は少ないかも。問題は冬。夏の減り幅が小さくても、冬は大幅カットということもありえます。気を引きしめておきましょう。クレジットカードのボーナス払いは絶対しないこと。

――収束後、政府は大打撃を受けた観光業の支援を行う方針で、私たちも手軽に旅行に行けそう。でもボーナスが出ないとしたら、その機会をいかせません。

中村:自分で自分にボーナスを出すこともできますよ。たとえば、12月までに旅行のために6万円貯めようと思ったら、毎月1万円ずつ貯める。「月1万円なんて無理!」と思うかもしれませんが、Zoom飲み会などお金をかけずに家で楽しむことを継続すれば、意外と楽に貯められます。外出する回数を減らせたら、洋服代も化粧品代も外食費も楽に減らせるはず。目標金額が貯められたら、自分へのボーナスにもなるし、それで旅行にも行ける。
メリハリのあるお金の使い方ができるようになりますよ。

「未来への投資」には気をつけて

――10万円やボーナスの使い方で気をつけた方がいいことはありますか?

中村:高額商品に手を出さないこと。たとえば、この時期に不安になって、自己啓発や投資セミナーなど、将来の成長や収入アップのためにとお金をかける人が増えてくるかもしれません。セミナーが悪いわけではありませんが、手元に十分なお金がない状況で「未来への投資」として、数十万円もするセミナー代を分割やボーナス払いにするのは危険です。

――「将来、返せるから大丈夫」と思って、分割払いにしてしまう人も出てきそうですね。

中村:ここで、もう一度はっきりさせておきますが、分割払いやリボ払いは借金です。しかも金利15%など高金利。多くの資格は、資格をとったからといってすぐに収入増や転職につながるわけではありません。よく見極めて! 自己投資は、クレジットカード払い、分割払い、リボ払いに頼らず、必ず現金で払える範囲でやりましょう。

それからもうひとつ気をつけたいのは、お金を増やすための投資。収入が減ったから、減りそうだからという不安から、10万円やボーナスをハイリスクのものに投資する人が増えそうです。ネットには、簡単にお金が増やせるかのような投資の情報が溢れています。でも、断言しますが「短期でお金を増やせる」とうたう投資はハイリスクだし、投資に「絶対もうかる」はありません。投資額が半分やゼロになる商品、マイナスになる商品もあります。中には詐欺まがいのものもあります。絶対にのせられてはいけません。株式など、まっとうな投資商品でも、短期で利益を出そうとすると、損するリスクは大きくなります。
これをきっかけに、つみたてNISAや、積み立て投資信託など時間をかけての資産作りを始めるのはいいけど、一度に10万円をひとつの投資するのは、ダメですよ。気をつけて。

今はちょっと厳しいこともあるけど、節約意識やマネーセンスを身につけるチャンスです。これまでの生活を見直すことでムダな出費を減らせるし、お金をかけなくても楽しめることはいっぱいあると気づけます。それにより、お金にとらわれない豊かな生活もできるようになると思いますよ。10万円もボーナスも、どう生かして使うのか、この機会にじっくり考えてみてくださいね。

いま、働く女子がやっておくべきお金のこと

著者:中村芳子

出版社:青春出版社

ファイナンシャルプランナー。東京・下北沢のオフィスで多くの人のお金の相談にのり、人生の悩み解決のお手伝いをしている。早稲田大学商学部卒。メーカー勤務を経て1985年に独立系ファイナンシャルプランニング会社に転職、女性FP第1号に。91年に友人と「アルファアンドアソシエイツ」を設立。『20代のいま、やっておくべきお金のこと』(ダイヤモンド社)『いま、働く女子がやっておくべきお金のこと』(青春出版社)など著書多数。
明治大学サービス創新研究所客員研究員。ミリオネアとの偶然の出会いをキッカケに、お金と時間、行動について真剣に考え直すことに。オンライン学習講座Schooにて『文章アレルギーのあなたに贈るライティングテクニック』講座を開講中。