働く女子のお金のトリセツ

コロナで株価が大暴落。それでも今すぐに投資を!?

世界で新型コロナウイルスの感染が広がる中、日本でも海外でも株価の下落傾向が続いています。「投資をしていなくてよかった」と胸をなでおろしている人もいるかもしれません。しかし、ファイナンシャルプランナーの中村芳子さんは「今は投資をしていない方がリスクが高い」と話します。その理由と、初心者におすすめの投資の方法について伺いました。

言い切れない「投資をせずによかった」

――コロナの影響により世界中で株価が暴落してますね。「投資をやっていなくてよかった!」と思う反面、「まったくやってないのは、本当によかったんだろうか」とも考えてしまいます。

中村:投資はやっておいたほうがいいですよ。投資をすると、世界の経済に目が向くから、今、どんな状態になっているかに自然と意識が向くんです。私は海外の株式や債券に投資しているので、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどの動向は常にチェックしています。家族のひとりがロサンジェルスに住んでいますが、中国やヨーロッパのコロナウィルスの感染状況を見ていたので、アメリカでの大流行が予測できました。それで、ロックダウンになる直前に、急遽飛行機を手配して帰国することができました。海外情報をチェックしていなかったら判断できなかったでしょうね。

退職金1000万円を投資に・・・コロナで株価暴落

――投資に興味がある反面、まとまったお金がないから、老後でいいかなと、思ってしまいます。

中村:投資を始めるのに、まとまったお金は必要ないのよ。それに、退職してから投資を始めようと思う人は多いけど、それはとても危険。若い時に小さい額で投資を始めたら、損をしても時間をかけて取り戻せるし、失敗や損からたくさんのことが学べるの。これ、とても大切。投資の経験がないまま50代60代になって、まとまった金額で間違った投資をしてしまう人が、実はかなりいるの。

私の知り合いの女性は退職後、銀行で勧められるまま、2020年2月の本当に一番高いときにアメリカ株に1000万円の投資をしてしまったの。3月に暴落して、今、大損をしてます。もし、若い時からしていたら、金融の知識もついていただろうし、決して一度に投資することはなかったと思うの。こうならないためにも、私は若いうちから投資を勧めているんですよ。

株が下がってもつみたてNISA 始めた方がいいワケ

――もし、投資を始めるとしたら何からはじめたらいいですか?

中村:20代、30代の人が今、始めるならつみたてNISAです。つみたてNISAは、投資信託で毎月一定額を積み立てていく投資法。金融機関によって違うけど、月1000円や1万円からできるの。時間をかけて財産を作っていくのに最適の方法よ。つみたてNISAなら年40万円が20年間が非課税になります。ふつうは値上がり益に20%の税金がかかるのが、かからないのは魅力。途中で積み立てを休んだり、貯まったお金を引き出すこともできます。
ただ、2020年2月までは日本も世界も株が上がっていたから、つみたてNISAで積み立てた人は利益が出てましたが、3月の暴落でたいていの人は損が出ています。1年前に月1万円の積み立てを始めていた人は、日本株の投資信託では約5000円(投資額に対して4%)、海外株で約8000円(同7%)の損になってるはず(4月末時点)。

――そんなに下がっているんですか! それでもつみたてNISAを勧める理由は?

中村:つみたてNISAは値段が高い時も安い時も一定額を買うので、高い時には少なく買い、安い時には多く買うことになるの。だから、長く続けることで損が出にくく、利益が出やすくなるのね。株価が安い今も買い続けるので、株価がもどってくればプラスになる可能性は高いですよ。最長20年続けられるので、いま、損が出ていてもあわてる必要はありません。

損が出たから、「解約」は勧めない

――前から積み立てをしてて、損が出てたら怖くなる人もいると思うんですが。

中村:つみたてNISAの制度は2018年の1月にスタートしたので、‟金融敏感女子“の中にはすでに積み立てをしている人もいるでしょう。投資の初心者の中には、今回のような株価下落で損が出てしまうと、怖くなって慌てて解約しようとする人が出てきます。でも、解約はすすめません。
コロナ危機は、いままで世界が体験したことがない大変な状況なので、世界の経済が元通りになって株価が上がり始めるには、しばらく時間がかかりそうです。でも、薬やワクチンが開発され、各国のいろいろな対策が効果を上げてきたら、株価も戻り始めるはず。

――ずっと株が下がりっぱなしってことはないんですね。

中村:その可能性は小さいと思いますよ。それに1-2年で解約すると、もともと5年、10年、20年かけて財産をつくる手段なのに、目的が果たせなくなっちゃいます。ここはじっと堪えて、積み立てを続けることをおすすめします。「怖くて、そんなの無理!」という人は、額を減らして半分にしてもいいでしょう。その分、株価が上がったときの戻りは小さくなってしまいますけどね。

将来の「夢」を叶えるため 今から資金を!

――始めるなら、どれくらいの額からスタートしたらいいですか?

中村:毎月貯める分の一部を、投資におきかえるのがおすすめ。月2−3万円貯金している人なら、そのうち1万円をつみたてNISAにするといいですね。ただし投資を始めるのは、緊急資金として給料の3カ月分を貯めてから。貯金がないのに投資にまわしてしまったら、急にお金が必要になったとき、投資を解約することになって、ちょうど値下がりしてたら損をしてしまうでしょ。
繰り返しになるけど、つみたてNISAは、年間40万円までが非課税。貯金が十分ある人は上限まで、1カ月3万円とか3万3000円を投資にまわすしていいと思います。そのときは、1つの投資信託ではなくて2つ以上を組み合わせてください。組み合わせることで値下がりのリスクは小さくなります。

つみたてNISAは、いつでも出金が自由にできるのも魅力。30代から40代にかけて、起業や留学をしたり、自分の夢を実現しようとする人も増えてきます。また、結婚や家の購入資金が必要になることもあります。5年後、10年後のことを考えて貯めるときに、その一部に投資を組み入れるといいと思いますよ。将来の自分への素敵なプレゼントになるはず。

ただし、投資にまわすのは5年か10年以上使う予定のないお金の半分までが目安。これで株が値上がりするときは十分に儲けが出るし、株が値下がりしても損を小さく抑えることができるの。投資を通じて日本と世界の経済、政治、さまざまなでき事を観察して学べば、視野が広がって仕事や日々の生活にもプラスになるはず。楽しみながらお金を増やしていきましょ!

ファイナンシャルプランナー。東京・下北沢のオフィスで多くの人のお金の相談にのり、人生の悩み解決のお手伝いをしている。早稲田大学商学部卒。メーカー勤務を経て1985年に独立系ファイナンシャルプランニング会社に転職、女性FP第1号に。91年に友人と「アルファアンドアソシエイツ」を設立。『20代のいま、やっておくべきお金のこと』(ダイヤモンド社)『いま、働く女子がやっておくべきお金のこと』(青春出版社)など著書多数。
明治大学サービス創新研究所客員研究員。ミリオネアとの偶然の出会いをキッカケに、お金と時間、行動について真剣に考え直すことに。オンライン学習講座Schooにて『文章アレルギーのあなたに贈るライティングテクニック』講座を開講中。
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