【夏のマネー集中講座】 20代女性必見!人生100年時代 給与、貯金、働き方、結婚相手に求める年収は?賢いお金のトリセツ【前編】

IT化の中、コロナ禍でテレワークが急速に進むなど新たな働き方が模索されています。長年、悩める女性たちのお金の相談に乗ってきたファイナンシャルプランナーの中村芳子さんは、「女性も一生働こう」と20年前から提唱し続けてきました。「人生100年時代」を生きることが求められる今、お金と人生にまつわる手引きを中村さんに聞きました。前編では20代の女性に向けてお届けします。

人生100年時代の身の振り方とは・・・

20年以上前から「女性も一生働こう」と言い続けてきました。最近は、やっと時代が追いついてきたかなと感じています。その背景には、社会の変化がありますね。

約30年前、女性は就職しても3年以内に辞めるのが当たり前で、女性はクリスマスケーキに例えられました。とんでもない時代! 12月25日以降は売れなくなるクリスマスケーキのように、24歳までは高く売れるけど25歳以上の未婚女性は「売れ残り」だという考え方ですね。

当時は、女は24歳までに結婚。専業主婦になり、子どもを育てる――というのが普通とされていました。4、5年前までは「標準世帯」というモデルを国がよく使っていました。会社員の夫と専業主婦の妻の家庭に子どもがふたりいる、というモデルです。やっと過去の話になりました。今、日本でいちばん多いのは単身世帯、つまり一人暮らしです。

では、都市部で一人暮らしの女性が「それなりの生活」を望むなら、どのくらいの収入が必要でしょう。たくさんの例を見てきましたが、手取りで年収300万円はほしいですね。

年収300万円の女性が同程度の収入の男性と結婚したとして、世帯年収は約600万円。共働きを続ければ、あまり贅沢はできなくても、家を買って子どもを育て、老後に備えることができます。子どもに塾や私立中学、留学など高額な教育費をかけようとすれば、世帯年収1000万円は必要になるかもしれません

将来もし専業主婦になって、現役時代と同じレベルの生活をしたいなら年収600万円以上の男性と、子どもを塾や私立中学に通わせたいなら、年収1000万円の男性と結婚しないといけないということです。そのハードルは、決して低くありません。

「専業主婦になりたい」はダメ?

専業主婦になろうと思っていた女性が、「27歳で彼氏と別れた」、「いい人に出会えなかった」と言って、30歳、40歳と年を重ねて独身のままという例をたくさん見てきました。みなさん、経済面で不安を抱えています。

世の中はまだまだ男性社会の部分が残っていて、長時間労働を求められる職場も珍しくありません。女性が結婚して仕事を続けたとき、22時まで残業、休日出勤あり、夫は夜遅くならないと帰宅しないという生活だったら、「共働きなんかとても無理!」「専業主婦になりたい」と思うのももっとも。ある意味、とてもリーズナブルです。それでも、長い目で見たら、自分自身を養う経済力は身につけておいた方が良い。だって、結婚するという保証はない。結婚しても離婚しないという保証はない。夫の収入がずっと続くという保証もないのですから。

将来のことは見通せない。だからこそ、自分で生きていける力が必要だと私は思います。読者の方で「なんとなく専業主婦になりたい」と思っている人がいたら、気持ちを切り替えて、今すぐ働き始めることをお勧めします。

働き方は多様化しています。正規・非正規雇用を選べる時代ですが、派遣社員など非正規で働くリスクは知っておいてほしいですね。大前提として、派遣という形態はキャリアップしにくく、年齢が上がるにつれて需要は少なくなります。20代のうちは良くても、40代になったときに、収入が上がらないだけでなく、今と同じように働けている確率は低いでしょう。また、今回のような新型コロナウィルス拡大などの”有事”では、雇い止めになることもあり得ます。
正規を希望しているのに派遣でしか働けていない人は、なるべく早く正社員になる道を見つけてほしいですね。すぐに希望が叶わなくても、作戦をたてて1年がかり2年がかりでも成功させてください。

自分の”願望”わかっていますか

IT化が進んだ今は、日々の情報処理で脳が疲弊する人が増えています。疲れてませんか?私は疲れてます(笑)ネットは常に欲望を刺激する仕組みになっていて、FacebookやInstagramなどのSNSは「幸せ自慢」ばかりです。
あふれる情報で、他人がとてもよく見えて「何か欲しいのか」「どういった生活を望んでいるのか」がわからなくなった人、実は多いと思います。

私の娘が保育園に通っていた時のエピソードです。5歳の女の子に「何が欲しい?」と尋ねると、「お金」と答えたんです。「なんで?」って掘り下げると、「チョコレートがほしいから」と返ってきました。この子の本当に欲しいものは、お金ではなく「チョコレート」だったんですね。

同じことが大人にも言えます。少し目をつぶって、目標とする年収の額を思い浮かべてみてください。実は、手に入れたいのはその年収ではなくて、その年収があったら手に入ると思っている「暮らし」のはずです。どういう暮らしでしょうか?一度、朝起きてから寝るまでの理想の暮らしをイメージしてみてください。
そしたら、その暮らしを実現する方法を考えてみましょう。年収にかかわらず、いますぐできることがあるはずです。

給与、貯金、目標、そして人生もシンプル思考で!

お金は自分がやりたいことを実現する「ツール」で、目標ではありません。漠然と、お金を求めるのではなく、自分が何をしたいのか、情報に惑わされずに知っておくことが大事。わかっていたら、お金を生かして満足を手に入れられます。わかっていないと、年収1000万円、貯金5000万円になっても、本当の喜びは手に入りません。

もしかしたら、明日のこと、来週のこと、来月のことで精一杯かもしれません。でも、日々のことに追われて過ごしていたらどうなるでしょう。何もしていないのに40歳になっていた……とならないよう、少しだけ立ち止まり、将来どうありたいのかというライフプランを考えてみてください。

わかりやすいのは、25歳、30歳、35歳など、年齢の節目ごとに、仕事や年収、プライベートなどの目標を書き出すこと。

例えば、25歳で貯金100万円、30歳で結婚、35歳で2人目の子どもを出産といった具合。25歳で短期留学、30歳で独立してフリーランスに、35歳までに会社形態にする、40歳までに結婚と出産というのもあり。漠然とで良いので、将来をイメージしてみましょう。

できれば30代前半までに「自分の軸」を持ちましょう。軸ができたら、その後の人生設計も立てやすくなります。そのためには、ネット情報に頼らず、共感できる著者の本を読む、国籍や文化のバックグラウンドが違う人たちと友達になる、尊敬できる人からリアルで話を聞く、新しいことに挑戦してみるなどがおすすめ。出会いが自分発見につながります。

新常態・ニューノーマルは生涯現役が理想!?

人生設計を立てるとどんないいことがあるか。一つは、目標を立てることで進む方向が定まります。それを実現できる可能性が高くなります。もう一つは、ライフステージが変わるごとにプランを見直し、戦略を立てることで、お金に関する漠然とした不安を感じにくくなります。不安のない人生はとても自由です。

自然災害や新型コロナウィルスの感染拡大など、予想外の事は常に起きます。でも、普段からリスクについて心配する必要はありません。大切なのは柔軟であること。状況や予定が変わった折々に戦略を立てれば大丈夫。その際、一人で悩んだり煮詰まったりしないよう、ロールモデルとなる人を手本にしたり、もし近くにロールモデルになる人が見当たらなくても、先輩や友人など、人と会って話をしたりして、将来像や解決策を探っていってください。

7月31日に厚生労働省が発表した令和元年簡易生命表
によると、女性の平均寿命は87.45歳。過去最高を更新しました。老後や余生という言葉がありますが、それらは本来、「人生の1割」が適切だと思ってます。老後1割説は私の特許です(笑)

87歳の1割は9年。これが老後で、87歳引く9歳の78歳まで現役でいた方がいいということになります。先はまだまだ長いですよ(笑)

生涯シングルでも、結婚しても、子どもがいてもいなくても、自活することは、満ち足りて生きるためにとても大切。ただ、ずーっとがむしゃらに働く必要はありません。頑張ったり、少しペースを落としたり、ちょっと休んだり、方向を変えたり、新しいことにチャレンジしたり、いろんな形があります。そして、いちばん大切なのは「働くことを楽しむ」ことです。働くにはもちろん苦労がつきものだけど、楽しめたら、ずっと続けられます。

「女も一生働こう」と言い続けている本質、わかってもらえたかな。私も新しいことにチャレンジしながら「働くを楽しむ」を目指しています。

いま、働く女子がやっておくべきお金のこと

著者:中村芳子

出版社:青春出版社

ファイナンシャルプランナー。東京・下北沢のオフィスで多くの人のお金の相談にのり、人生の悩み解決のお手伝いをしている。早稲田大学商学部卒。メーカー勤務を経て1985年に独立系ファイナンシャルプランニング会社に転職、女性FP第1号に。91年に友人と「アルファアンドアソシエイツ」を設立。『20代のいま、やっておくべきお金のこと』(ダイヤモンド社)『いま、働く女子がやっておくべきお金のこと』(青春出版社)など著書多数。
同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。
働く女子のお金のトリセツ

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