【秋のマネーセミナー】副業で稼ぎたい、世界を広げたい人必見! 始める前に知っておきたい、たった一つのこと

働き方の多様化が進む昨今。副業を希望する人は増加しています。厚生労働省は2020年9月、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定しました。その背景には、「終身雇用制度の崩壊がある」と話すのは、悩める女性の相談に長年、乗ってきたファイナンシャルプランナーの中村芳子さん。副業に興味がある人に向け、心がけておきたいポイントを聞きました。

副業を解禁する会社のホンネは…

ここ数年で、副業に関するニュースが増えました。解禁する企業も増えつつあり、副業は一見、新しい働き方のように感じられます。でも、裏を返せば企業が「ウチの会社はあなたの経済的な面倒をすべては見られません」と言っているということ。ご存知の通り、終身雇用は過去の産物です。

正社員でも 十分な収入が保証されなくなってきた今、副業を認める会社、推奨する国のホンネは「副業で給料を補って、自分で何とかしてね」という”逃げ“であることを、まずは頭に入れる必要があるでしょう。

少し昔の話をします。「団塊の世代」と呼ばれる1947年〜1949年生まれの人たちは、老後は退職金と年金で十分に過ごせました。男性がふつうに会社に就職したら、結婚をし、一家の大黒柱として妻と子を養い、マイホームを手に入れ、子どもに教育を受けさせ、60歳まで働けば、年金と退職金で不安なく老後を迎えられました。

その一昔前、1932年生まれのある男性はふつうの会社員でしたが、年300万円以上の年金を受け取り、年金から貯金ができる暮らしでした。残念ながら、今の20代、30代はその半分程度の年金額に…。つまり現役時代にしっかり稼いで、将来のために自分で貯めていく必要があります。

小遣い稼ぎのための副業は?

そういった意味で、副業という選択肢は「アリ」と考えます。本業のスキルを高めるのにつながる副業は、将来のためにもなるでしょう。新たな知識や経験、出会いもキャリアや人生にプラスです。

一方、『20代のいま、やっておくべきお金のこと』(ダイヤモンド社)という本で私は、「20代は副業をしてはいけない」と書きました。この考えの本質は、20代は、今の仕事を覚えて、その分野で使いものになることが先決だから。本業が身に付かずビジョンがないまま副業を始めたら、自分の価値を高めるべき大切な時期に、時間を無計画に使うことになってしまいます。これは、長い目で見ると大いにマイナス。将来の自分の価値、稼ぎ力を高めるために、20代は副業より本業に時間とエネルギーを注ぐのがいいと考えます。

なので、漠然と経済的不安から、目先のお小遣いを得るために始める副業は勧めません。月々1、2万円稼ぎたいと思うのなら、生活上のちょっとした工夫や節約で、同額分を捻出することは可能ですし。フルタイムで働いて、それに加えて副業となると、就業後や休日の時間を割いて仕事をすることになり、オーバーワークになりがち。職場で居眠り、仕事のミス、健康を壊すことにもなりかねないから、気をつけて!

借金、会社バレ…トラブルに注意を!

収入目的のための副業で、ネットワークビジネスを始める人も多いですね。ネットワークビジネスとは、健康食品や化粧品などの商品を口コミによって販売し広げていく「マルチ・レベル・マーケティング」という仕組み。メンバーになると、商品を安く購入できます。また、自分が勧誘した人が商品を購入したりメンバーになったりすると、それが収入になるという、ピラミッドのような構造になっています。

トップセールスの人はカリスマ性があったり、海外旅行三昧の高収入だったりするかもしれませんが、それはごく一部の人。適性があって人一倍努力した人です。「元が取れる」前提で、入会金や商品代金をクレジットカードで支払ったり、キャッシングしたりすると、返済できなくなって自己破産につながることもあります。絶対にしてはだめ!強引に商品を勧めて友人知人と疎遠になったという話も聞きます。ネットワークビジネスに興味を持ったら、冷静に見極めて、リスクを知っておくことが重要です。

「今の会社では副業が認められていないから転職を考えている」という会社員や、「副業の前例がないからやめてほしいと言われているけど、どうしたらいいか」という公務員の方の相談を受けたことがあります。

副業が認められていない会社で、コッソリしたらどうなるか。そこそこの収入を得ると、翌年、前年より金額が高い住民税の通知が会社に行き、バレてしまうリスクがあります。トラブルの原因にもなりうるため、副業NGの会社で隠れて副業をするのは、やめておいた方がいいでしょうね。ただ、世の中の流れなので、今年は副業禁止でも、来年以降解禁になる可能性はありますよ。

フリーランスで働いている方が、本業の収入が減った時のために、副業を持ちたいと考えることもあります。
確かに、今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、大幅に収入が減った人たちはたくさんいますね。そういう時、本業とは別の収入口があったら、心強いです。次回お話をする「資格」の話にもつながるのですが、高収入ではなくても堅実に稼げる仕事をサイドに持つのは、一つの手だと思います。

ある俳優が、こんなことを言っていました。「仕事の依頼がなくなったら俳優業は終わり。収入も途絶える。いつもその不安を抱えている。」と。国内外で活躍している方だったので、「あんなに有名でも不安を抱えているのか……」と驚いたのを記憶しています。芸能人が飲食店を経営したりファッションブランドを立ち上げたりするのも、保険としての副業と言えると思います。

教師として働きながら、自分がデザインしていた小物をネットで販売していた女性は、そちらを本業にすべく、30歳で仕事を辞めて独立しました。安定はしないけど、これが本当にやりたかったこと、ととても嬉しそうでした。彼女の副業は、好きなことで独立起業するための移行期間だったわけです。

まとまった貯金ができて、一定以上の収入があれば、不動産投資という手もあります。親から相続した土地に自宅兼賃貸の建物を建て、そこから賃貸収入を得ていた女性もいます。ただし、流行りのワンルームマンション投資では、割高物件を買って失敗、大損している会社員がたくさんいます。これはお勧めしません。

パソコン、スマホで起業できる世の中だけど

最後に、副業を始めたいと思う人に知っておいてほしいことをお話します。副業の方法や、副収入を得る手段は多岐にわたりますが、何よりも大切なことは「ビジョンを持つこと」。

昔は、起業をする場合には、事務所を借りることから始まったので最低でも月30万円ほどの費用がかかりました。今は、パソコンとスマートフォンがあればできる仕事がたくさんあります。コワーキングスペースなどを借りることで、出費を抑えることができます。同じように副業も、少ない初期投資で始めることができます。
とは言っても、副業を始めるのに、最初にいくらかかるのか、継続的な費用は毎月いくら必要か、どのくらいの収入が、どのくらいの期間見込めるか、という見通しをしっかり立ててからスタートすることが大切。1)お金の見通しを立てる、2)記録をつける、3)見直す 4)税金などの処理をする、というのは、副業をする上でお金の必須事項です。

そしていちばん大切なこと。「副業をして何をしたいか、何を得たいか」を考えましょう。ビジョンを持つことが大事です。「副業をすること」がゴールではありません。

その副業が自分の将来につながるとわかったら、働きすぎないよう注意して試してみるのはありだと思います。副業で得られるメリットと、時間の制約やストレスなどのデメリットを冷静に判断してください。 1年後、3年後、5年後、どのように仕事をしていたいのかイメージしてみましょう。繰り返しますが、大切なのはビジョンです。

実はそれは、副業に対してだけのビジョンではなく、自分の人生、働き方、暮らし方についてのビジョンです。その中で、副業がどんな役割を果たすのか、本当に自分を豊かにしてくれるのか、自分が行きたい方向に進めるか、あせらずじっくり考えてみてください。
不安やお金の欲から副業を始めると、失敗するリスク大です。気をつけて! 応援してます。

いま、働く女子がやっておくべきお金のこと

著者:中村芳子

出版社:青春出版社

ファイナンシャルプランナー。東京・下北沢のオフィスで多くの人のお金の相談にのり、人生の悩み解決のお手伝いをしている。早稲田大学商学部卒。メーカー勤務を経て1985年に独立系ファイナンシャルプランニング会社に転職、女性FP第1号に。91年に友人と「アルファアンドアソシエイツ」を設立。『20代のいま、やっておくべきお金のこと』(ダイヤモンド社)『いま、働く女子がやっておくべきお金のこと』(青春出版社)など著書多数。
同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。
働く女子のお金のトリセツ