働く女子のお金のトリセツ

急な収入ダウンにどう備える? いますぐやるべきことと、やってはいけないこと

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、お金のことも心配になります。突然、収入がダウンしてしまった場合はどうすれば? いますぐやるべきことと、逆にしてはいけないことについて、ファイナンシャルプランナーの中村芳子さんに伺いました。

やみくもな節約はストレスと体調不良の元。いまやるべき4つのこと

――収入が一時的に減り、生活費の支払いが大変になってしまった場合、どうしたらいいでしょうか?

中村:健康管理もですが、いまはお金の管理も大切です。今後の生活費などに不安を抱えている人も多いと思いますが、まずは冷静になって、次の4つのことに目を向けてください。

・収入と支出、貯蓄額を正確に把握する
・節約できる出費を洗い出し、減らす
・公的な援助が受けられるかどうかをチェックする
・親や親戚、友人にSOSを出す

まずやるべきことは、貯蓄がいくらあるのかを確認し、月々の収入と支出を洗い出すこと。そのうえで月々、いくら節約しなければいけないのかを、大まかでいいので具体的な金額で把握しましょう。減るのが残業代くらいなら、外食をやめて自炊したり、化粧品や趣味、交際費などにかけるお金を見直したりすれば大丈夫なはずです。

緊急時は地方自治体やまわりに頼ることも大切

中村:国や地方自治体の経済対策を調べることも有効です。大きく収入が減った人は「生活支援臨時給付金」を受けられるかもしれません。各都道府県社会福祉協議会では、「緊急告知資金」や「総合支援資金」など生活費のためのお金を貸付けています。従来は低所得世帯が対象でしたが、今は休業者や失業者向けに支援を拡充しています。情報は日々更新されるので、自分がどんな支援が受けられるのか、該当するものがないかを各自治体のホームページなどに問い合わせて確認してください。

――つい、「ひとりで頑張らないと!」と思ってしまいますが、困ったときは支援を受けることも必要ですね。

中村:仕事をして自立している20代、30代の女性は、ある程度稼げていたら、「自分ひとりで大丈夫」「ひとに迷惑かけないようにしなくちゃ」と感じる人も多いと思います。でも、ときには実家や親せき、友人、近所、職場の人を頼ることも必要です。お金の貸し借りではなくても、食料を援助してもらえたり、必要な情報を教えてもらえることはあります。こんな時期、精神的な励ましは大きいですよ。逆に、自分が手助けをすることも大事。それに、つながりがあれば、万一、家でひとりで倒れてしまっても、すぐに駆け付けてくれるでしょう。心配して連絡してくれるでしょう。そういった意味でも、普段から、まわりの人とのコミュニティをしっかり築いておくことが必要です。

お金の緊急時、やってはいけない2つのこと

――逆に、やってはいけないことはありますか?

中村:やってはいけないのは次の2つ。

・クレジットカードで買い物する、キャッシングをする、リボ払いを使う
・家賃が払えないからと家を出る

この時期、クレジットカードの利用はできるだけ控えたい。お金が手元にないのに、クレジットカードで支払いをしたり、リボ払いやキャッシングをしたりしてはだめ。支払いを先送りすると後になって苦しくなり、自己破産につながるリスクもあります。普段、クレジットカードを使っている人は、現金支払いや、デビットカードでの支払いに切り替えましょう。特にネットショッピングは要注意。ストレスがたまった反動で不要な癒しグッズを買ったり、外に出るのが怖いからとデリバリーばかりを使ったりして散財をしたら、出費を抑えるどころか思った以上に支出が増えてしまいます。いつも以上に買い物には注意してください。

「家賃が払えない」で家を引き払うのは危険。大家さんなどに相談すること

――毎月の支払いの中でも一番心配なのが家賃。額が大きいだけに不安です。

家賃が払えないからと、退去するのは絶対にNG(もどれる実家があれば話は別)。一度解約して住所不定(ホームレス)になってしまうと、次に契約できない可能性が高いし、仕事も決まりにくくなります。家賃が払えない場合は、まず大家さんに相談してみましょう。緊急時なので支払いを待ってもらえる可能性があります。一定の条件を満たすと国の「住宅確保給付金」を受けられます。この条件も緩和されているので、全国の自立相談支援機関の相談窓口、または地方自治体に問い合わせてください。水道・ガス・電気などの公共料金も、支払い猶予が認められています。まずは食糧を確保。しっかり食べて行動しましょう。

いまはまず、現状を知り、先の見通しを立てること。そのうえで最悪の状態を想定し、どう対応するかを考えておくことが大切です。運悪く失業してしまった場合、一定の条件で失業給付金を受け取ることができます。次の仕事はなるべく早く見つけたいですね。世界的に経済が悪化しているので、時間が経つほど仕事が見つかりにくくなりそうです。でも、焦らないことも大切。思い通りにいかないことがあっても「こんなときもあるさ」と楽観主義者になって乗り越えましょう。お金のことで困っても、あきらめなければ絶対になんとかなります。

そして、平常時に戻ったら、20代は給料の2カ月、30代や結婚している人は3カ月分の生活費を、緊急時のために貯めてください。私はこれを「緊急資金」と呼んでいます。英語で“Emergency Fund”。今回のようなコロナウイルスによる問題に限らず、病気やケガなどで収入が減ったとき、逆に思わぬ出費が増えたときのためです。そんなときに慌てなくていいよう、備えを十分にしてくださいね。

状況が暗く見えるときこそ、落ち着いて、明るいスピリット(Cheerful Spirit)で乗り切りましょう!

ファイナンシャルプランナー。東京・下北沢のオフィスで多くの人のお金の相談にのり、人生の悩み解決のお手伝いをしている。早稲田大学商学部卒。メーカー勤務を経て1985年に独立系ファイナンシャルプランニング会社に転職、女性FP第1号に。91年に友人と「アルファアンドアソシエイツ」を設立。『20代のいま、やっておくべきお金のこと』(ダイヤモンド社)『いま、働く女子がやっておくべきお金のこと』(青春出版社)など著書多数。
明治大学サービス創新研究所客員研究員。ミリオネアとの偶然の出会いをキッカケに、お金と時間、行動について真剣に考え直すことに。オンライン学習講座Schooにて『文章アレルギーのあなたに贈るライティングテクニック』講座を開講中。
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