働く女子のお金のトリセツ

ファイナンシャルプランナーがデビットカード推しする本当の理由

クレジットカード決済は使い勝手がいいし、ポイントも貯まってとってもお得な反面、つい使い過ぎて月々の返済が苦しくなってしまう人が後を絶ちません。今年はデビットカードに切り替えてみませんか。働く女性たちの“お金のリアル”に向き合い、悩みから救ってきたファイナンシャルプランナーの中村芳子さんが、自分らしい人生をデザインするためのお金との付き合い方をやさしく解説します。

一度のリボ払いから多重債務に陥るリスクも

――都内で働く27歳です。クレジットカードとデビットカード、どちらを使うのがより賢い選択でしょうか。

ファイナンシャルプランナーとしてたくさんの女性たちのお金の相談にのってきた経験から、クレジットカードはできるだけ使わないように、カードでしか支払いができないシーンや、海外旅行の時に限定しましょう、と伝えています。

背景には、こんなエピソードがあります。

キャッシュカード決済をしていた女性が、ある月に帰省と友だちの結婚式が重なり、カードの引き落とし日に口座の残高が足りなくなりました。それをきっかけにリボ払い(※)を利用するようになり、徐々に利用残高が膨らんでしまいました。そのカードが利用限度額に達したので新しいカードを作ってこちらもリボ払いに。やがて複数のカードの利用額が膨らんで多重債務に。最後には返済ができなくなってしまいました。

クレジットカードの使いすぎやリボ払いは、無駄遣いだけが原因ではなく、自己啓発セミナーの受講料、引っ越し代、自分や親の病気、国民年金保険料の支払いなど、健全な支出や避けられなかった支出がきっかけになることも多いのです。「自分は計画的に使っているから大丈夫」と安心するのは危険です。

※リボ払い…毎月の支払額を一定の金額に固定して金利とともに返済していく方法。金利が15%(主流のカード)と高く、毎月の返済が少額なので、返済を続けても残高が減りにくい。

一番の違いは「借金」かどうか

――クレジットカードとデビットカードの違いがよくわかりません……。

クレジットカードを使うということは、カード会社が代金を立て替えてお店に払うので、代金分をカード会社から借金したことになります。代金は後日、登録してある口座から引き落としでカード会社に払われます。銀行口座にお金がなくても使えるから、返済できなくなるリスクがあるんです。

これに対してデビットカードは、レジでお金を払うと同時に、デビットカードが紐づけられている銀行口座からお金が引き落とされます。つまり、銀行の口座にお金がある分しか使えないから借金にならない。借金になるかならないか、この差はとても大きいですよ!

デビットカードなら、お金の使い方に一定の歯止めがかかります。前回お話した家計簿アプリと連動させることができ、クレジットカードとほぼ同じ使い方ができます。キャッシュレス還元(※)にも対応しているからお得ですね。私(中村)も日々の買い物や支払いはほとんどデビットカードにしています。

※キャッシュレス還元……キャッシュレス・ポイント還元事業の略。2019年10月の消費税率引き上げに伴う時限的な需要平準化のための施策。クレジットカードや電子マネーでキャッシュレス決済をすると最大5%のポイントが還元される。

デビットカードを使うメリットは?

なかなかお金が貯まらないという人、毎月のクレジットカード代金の返済が負担になっていませんか?

クレジットカードは、銀行の口座にお金がなくても購入できるため、支払い能力以上の買い物をしてしまうリスクが誰にでもあります。そうなると、給料はカードの支払いに消え、いつまでたっても貯金できません。

一方、デビットカードは常に銀行残高を意識するし、支払い能力以上には使えないので、結果的にムダな買い物をしにくくなります。

――デビットカードを作るのに審査って必要ですか?

クレジットカードは、年収や仕事の状況によって審査にひっかかり、作れないことがあります。これに対してデビットカードは、原則として15歳以上で銀行口座を持っていれば誰でも持てます。

また、ほとんどの銀行のキャッシュカードには、J-Debit というデビット機能がついています。ただ、J-Debitは使えるお店やシーンが少ないため、現在はそれぞれのブランドのクレジットカード加盟店で使えるVisa Debit やJCB Debit が主流になっています。キャッシュカードに機能がついているものと、キャッシュカードとは別に申し込みが必要な場合とがあるので、必要に応じて銀行に問い合わせてみてくださいね。

これまでクレジットカードが作れず、キャッシュレス決済ができなかった人にとっては、デビットカードはぜひ持ちたい1枚。毎回ATMに行く時間も節約できるし、時間外などのATM利用手数料もかからないから、お金と時間の節約にもなります。

――海外旅行にいくとき、デビットカードは使えますか?

海外旅行で使えるものもありますよ。現金は盗難にあうリスクがあるだけでなく、両替の手数料がいちばん高いので最小額にして、デビットカードで払うのが賢明。カードによっては、現地のATMで現地通貨を引きだすこともできます。デビットカードなら銀行残高以上には使えないので、海外旅行で陥りやすい「使いすぎ」も防げます。万が一、デビットカードが盗まれたら、すぐカード会社に連絡、または自分でオンラインで手続きをすれば不正利用を防ぐことができて安心。便利さに加え、安全性も高ポイントです。

私のデビットカードはドル預金でも決済できるカードなので為替手数料がかからず、海外旅行で重宝しています。アメリカでは旅行期間中、現金に触れることはまずありません。海外の出費もアプリで管理できるから安心&便利です。

キャシュレス社会の落とし穴は、使いすぎてしまうこと、借金が膨らむこと。でも、デビットカードならその心配はありません。
今年はデビットカードをうまく活用しながら、上手にお金と付き合いましょう。

ファイナンシャルプランナー。東京・下北沢のオフィスで多くの人のお金の相談にのり、人生の悩み解決のお手伝いをしている。早稲田大学商学部卒。メーカー勤務を経て1985年に独立系ファイナンシャルプランニング会社に転職、女性FP第1号に。91年に友人と「アルファアンドアソシエイツ」を設立。『20代のいま、やっておくべきお金のこと』(ダイヤモンド社)『いま、働く女子がやっておくべきお金のこと』(青春出版社)など著書多数。
明治大学サービス創新研究所客員研究員。ミリオネアとの偶然の出会いをキッカケに、お金と時間、行動について真剣に考え直すことに。オンライン学習講座Schooにて『文章アレルギーのあなたに贈るライティングテクニック』講座を開講中。
働く女子のお金のトリセツ