本という贅沢110 『100%得する話し方』(新井慶一/すばる舎)

会議も営業も恋愛も訴訟も取材も育児も死別も、全部うまくいったんだよね、これで

毎週水曜日にお送りする、コラム「本という贅沢」。今月のテーマは「人づきあい」です。会話は社会生活に必須。だけど、自分だけ盛り上がり、相手はしらけているといったケースも多々あり・・・。今回は会話について画期的方法を提案する1冊を取り上げます。紹介するのは書籍ライターの佐藤友美(さとゆみ)さんです。

●本という贅沢110 『100%得する話し方』(新井慶一/すばる舎)

『100%得する話し方』(新井慶一/すばる舎)

書籍ライターのいいところって、とにかくその道の第一人者の方の話を目の前で聞ける(しかも無料で)ということに尽きる。
これまでも、いろんな著者さんのお話を伺ってきて、そのたびに、私のQOLは爆上がりしてきた。

お洋服のスタイリストさんの本を担当させてもらってから、毎朝、服に悩まなくなった。
政治家の方に取材させてもらったときには、内閣の仕組みと課題が理解できるようになった。
心理カウンセラーの方の話を聞いたときは、人の心の仕組みとメンタルの守り方について知った。
telling,でも紹介したけれど、AV男優さんとご一緒した時は、AVの演出方法について教えてもらった。
「彼との相性」を運まかせにしない。もっと楽しく気持ち良くなるために

そんな、いろんな「役得」がいっぱいある書籍ライターだけれど、私のこれからの人生、死ぬまでの間、一番頻繁に使うだろうし、一番人生を変えるであろうことを教えてくれたのは、この著者さんでした。

先日、処女作が発売になったばかり。『100%得する話し方』の、新井慶一さんです。

この本のためのインタビュー取材の中で、私は多分、生涯年収が億単位で変わるくらいの、生涯幸福度が300パーセント増しになるくらいの、“原理原則”を受け取った気がしている。

タイトルには「得する話し方」と書かれているけれど、読めばすぐにわかるように、この本、「話し方」の本ではない。
むしろ、「いかに、話さないか」について書かれた本だ。

もっと具体的に言うと、それは

①絶対に自分に話を振らせない

②相手に9割、話させる

③相手に気持ちよくなってもらう

だという。

初めて新井さんにお会いしたとき、新井さんは
「世の中の99%の人は、人の話を(聞いているようで)聞いていないんですよね」
とおっしゃった。

これが、一瞬、取材を忘れてしまうくらい、ぐっさり刺さった。
その前日、ある人に、「ゆみさんて、僕の話、全然聞いてないよね」と言われ、大喧嘩をしたところだったからだ。

あー、たしかに、私、全然人の話を聞いてないや。
次に自分が何を話すかばっかり考えてるや。
なんなら、どうすれば言い負かすことができるかばかり、シミュレーションしてるや。

そんなことを反省していた矢先だったので、新井さんの言葉は、傷口に粗塩だったわけです。

新井さんは
「会話のゴールは、相手に気持ちよくなってもらうことです」
「会話の舞台からおりて、相手にスポットライトをあてましょう」
と教えてくれた。

ぱっかーーーーん。
私の中で、何かが開けた音がした。

そうだよ、私。この44年間、試合に勝って、勝負に負け続けた人生だったよ。

笑いとりすぎて、恋愛対象にならないし
言い負かしすぎて、恨まれるし
しゃべりすぎて、受注を忘れる。

かれこれ、そんな44年だったよ。

で。
悔い改めたんだ。めっちゃ悔い改めた。

私の数少ない美点は、朝令暮改と、見かけによらず素直なところにある。なるほど、と思ったら、昨日までの自分に全然こだわらない。全部まるっと変化させることに、なんら躊躇ない。言われたこと、全部やる。
昨日の私より、今日の私を優先する。

というわけで、新井さんの話を聞いたこの日を、私のセカンドバースデーにして、生まれ変わろうと思った。
私が実践してみてうまくいけば、本の内容の再現性を証明することにもなるし、とも、思った。

で、やってみたわけですよ。新井さんのアドバイス通りに。

ときどき神様って、ちゃんと見てるんだなって思うことがあるのだけれど、新井さんの書籍の取材期間の私の人生、盆と正月とクリスマスと、仏滅と大殺界とサタリタが一気にきちゃったかな、というくらい濃密で複雑だった。
でも、そのどれもが、新井さんの言うことを愚直に実践していたら、するするっと全部うまくいったんだよね。

具体的に言うと、この時期に私にふりかかってきた、難しめの会議も営業も訴訟も取材も育児も全部うまくいった。
亡くなっていく大切な人とも、最期の時間を悔いなく過ごせた。
あとここにはちょっと書けないようなエグい案件も、おおむね、信じられないくらい、うまーくいった。

この間、やったのは、新井さんの言ってらした「舞台から降りる」を呪文のようにとなえていただけ。
敵とも味方とも、家族とも仕事相手とも、びっくりするくらい、うまくやれた。

これ、すごくない?

ちなみに、新井さんから習ったこの極意を、私は、自分のライター養成講座の生徒さんたちにもこっそり伝授したのだけれど、

「さとゆみさんの講座を受けて聞き上手になったのか、飲み屋で隣になったおじさんにやたら気に入られる、という副作用が出ています」
という感想をもらってる。

あと、めっちゃ顔も綺麗で性格もいいヤツなんだけど、なぜかモテない友人(♂)に、新井さんの極意を口立てしたら、人生初の一大モテ期キタっていってた。

恋愛にも効くらしい。
これ、無双じゃない?

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ちなみに、著者の新井さんは、数々の有名人のコーチングをされている方なのだけれど、取材をさせていただいたら、驚くほど「人見知り」だった。(大変失礼ながら)こんなに話し慣れていないビジネス書の著者さんも珍しいというくらい、話すことは奥手でいらした。
だからこそ、私、信用できたんですよね。この方、本当に「聞くこと」一本で、この地位まで上がってこられた方なんだって。

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それではまた来週水曜日に。

年間10冊以上を担当する書籍のライターとして活動。ビジネス書から実用書まで幅広いジャンルを担当する。自著に『女の運命は髪で変わる』『道を継ぐ』など。