自分を変える、旅をしよう。

初めての旅でボランティアを経験。同調圧力から解放され、自分の生きている世界が全てではないと知った

旅によって人生が変わった人や、旅を通した生き方をリーマントラベラーの東松寛文さんが紹介する「自分を変える、旅をしよう。」。14回目に登場するのは、広告会社に勤務するはるかさん。旅することで、日々の生活に楽しみとメリハリができ、仕事ともほどよく向き合えるようになったと言います。まさに、リーマントラベラーの一人であるはるかさんにとってターニングポイントになった旅とは?

●自分を変える、旅をしよう。14・前編 はるか(31)

リーマントラベラーの東松寛文です!今回お話をうかがうのは、広告会社で人事の仕事をしているはるかさん。一時は旅することを辞めてしまったというはるかさんに、初めての旅から印象に残っている旅先まで、じっくり聞いてみたいと思います!

――はるかさんはいつから旅をしているのですか?

はるかさん(以下、はるか): 初めての旅は、大学2年の時です。部活を無理やり休んで、2週間、ベトナムの福祉施設でボランティアをしました。帰国後、先輩にこってり絞られましたが……(笑)。ベトナムでは、普段の生活を離れて異国の街を歩くおもしろさに目覚め、部活と就活を終えた卒業直前の春休みに、インド・フィリピン・中南米で計9カ国2カ月の一人旅をしました。

――初めての旅でボランティアをするなんてすごい!部活は何をしていたのですか?

はるか: いえ、ボランティアは部活を休むための言い訳だったんです(笑)。体育会のバレーボール部に所属して、週5日練習で休みも限られていました。だから、本当に2週間も休めるなんていうことはなくて……。無理やり休むという言葉がぴったりでしたね。

――初めての旅先に、ベトナムを選んだのはなぜですか?

はるか: ベトナムを選んだのは、単にボランティア斡旋団体のプランの中で時期がちょうどよかったからです。とにかく一人で海外に行ってみたかったのです。
ボランティア先では、学校にいけない子どもたちを預かって勉強を教えたり、食事を作っていっしょに食べたりしながら、夜や週末は普通に観光するという、半分ボランティア半分旅な過ごし方をしました。同じ空の下に、言葉も文化も肌の色も価値基準も異なる人たちが暮らしていることを目の当たりにして、衝撃を受けたんです。自分の目で見て、実際に交流した時に迫ってくる現実感は、本やテレビの比ではありませんでした。

ベトナムのボランティア施設の子どもたち

他国の人と接するのも初めてで、新鮮でした。同い年くらいの料理担当のベトナム人学生が、将来はコックになりたいんだよね!と目をキラキラさせて話してくれるのを聞いたり、現地の大学に遊びに行って学生とおしゃべりしたり……。
日本にいるとつい、同調圧力や~ねばならないという考えに押しつぶされそうになってしまうのですが、自分の生きている世界が全てではないと実感でき、心が軽くなりました。

――いい旅でしたね!社会人になってからも旅を続けたのですか?

はるか: 実は、大きな希望を胸に入社したものの、旅をする余裕もなく働き、体調を崩して2年間休職していました。その頃は、家に引きこもって絵を描いてばかりいて、少し前までリュックを背負ってウユニ塩湖にいたなんて信じられないと感じていました。
復職後、やはり私には旅が必要だ……と感じ、上司を説得して9連休を取得しました。そして、南フランスを車で一人旅して、旅を再開することになります。

――よかった!その後も旅を楽しんでいますか?

はるか: その後は、年に1~3度、10日間程度の休みを取って、海外一人旅や国内バイク旅を楽しんでいます。そこは、東松さんの「休み方改革」を参考に……旅好きキャラを公言して、根回しを頑張って、だいぶ休暇を取りやすくなりました!

南フランスの村・ロクブリュヌ

――自分を取り戻す旅ですね!具体的にはどこを旅しているのですか?

はるか: 中東の文化やイスラム美術・ペルシャ美術がとても好きで、モロッコやイランでホームステイしたり、ラテンの明るい文化が恋しくて、キューバやメキシコを歩き回ったり……。バイクでは、ドイツとニュージーランドをツーリングしました。国内でも、北海道や九州をキャンプしながら一周したりしています。
休職前は会社や仕事でいっぱいいっぱいになっていたのですが、無理やりにでも休暇を取得して冒険要素の強い旅をすることで、日々の生活に楽しみとメリハリができ、仕事ともほどよく向き合えるようになったと思います。

――旅でオンとオフの切り替えができるのは最高ですよね!今は旅ができなくて辛いですが……。

はるか: はい、本当に。ここ5カ月は外出自粛&フルリモートワークの牢獄生活。旅、というか外界の刺激に、非常に飢えています(笑)。早く旅に出たいです。

――今までで一番印象に残っている旅先はどこですか?

はるか: 一番を決めるのは難しいですね……。ラテンで陽気なキューバや、イスラム美術と大自然の美しさに触れたモロッコも、心から楽しかったですが、ちょっとしたターニングポイントになったのはイランと南フランスです。

イランの方はどこで会っても歓迎してくれる

――イランではどんなことがありましたか?

はるか: イランは本当におもてなし精神にあふれた国で、現地の方と深く交流でき、友人もできて、とてもいい旅ができました!
街を歩けば、すれ違う人が立て続けに「Hi! Welcome to Iran!!」と話しかけてくれ、そしてお茶をいただいたり、イスファハーンのイマーム広場を歩けばピクニックに誘われ、そしてごはんをいただいたり、バスに乗れば家に招待され、今までの旅の中でも特に親切にしてもらいました。
歴史的背景から、日本人だというと特に好意的で、「Oh, Japan is so good people good country!!」と何度も言われました。

イランの方はとてもフレンドリー

――印象に残っている出来事はありますか?

はるか: 11泊のうち6泊は、イランのご家庭にホームステイしました。特に印象的だったのは、テヘランの大学教授夫妻と3歳の娘さんのお宅にステイした時。イランは政治的な理由でテレビ番組やインターネットの規制が多く、娯楽が少ないのですが、その分家族や友人とのおしゃべりの時間を大事にしているように感じました。
滞在中、何度も「ちょっと歩こうか」と提案され、食材を持ってピクニックに行ったり、夜の公園を歩いておしゃべりしたり。なんて豊かでホッとする時間なんだろうと感じました。帰国後は、余白の時間、友人や家族と散歩する時間を大事にするようになりました。
あと、ペルシャ建築やペルシャ美術は、ため息が出るほど美しくて……。至福の時間を過ごしました。

イランでのホームステイ

――南フランスは復職後に行った旅先ですよね?

はるか: はい、そうです!希望を胸に入社した広告会社で、周囲の評価を気にしすぎて無理をして体調を崩し、2年休職し復職した後の、初めての旅でした。
休職中に水彩画を習って、その先生が南フランスのプロヴァンス地方の景色をよく題材にされる方だったので、実際に自分の目で見てみたいと思ったんです。

南フランス・プロヴァンスで描いた水彩画

プロヴァンスには個性豊かで絵になる小村がたくさんあります。それらは車じゃないと周れないところにあるので、日本でもあまり運転したことがなかったのに、国際免許を取り、無謀にもドライブ一人旅に挑戦しました。
左ハンドルの運転がどうしても難しくて。山奥の宿に向かう途中、道を誤ってUターンしようとしたときに、思い切り車をぶつけてしまいました。ちょっと泣きました(笑)。

ハプニングがありつつも、自分一人で異国に行ってドライブ旅して帰ってきたぞ!と休職ですっかり失った自信を、少しだけ回復することができたんです。

休職経験者だとさまざまな制限があり、長期休暇を取るのが非常に難しかったのですが、上司に粘り強く交渉し、引き継ぎ書を作り込み、きちんと勤務できているという状況を何ヶ月も前から作って勝ち取った休暇だったので、余計に感慨深かったです。
これを機に、毎年かならず休暇をもぎ取って旅に出るというスタイルになりました。

平日は激務の広告代理店で働く傍ら、週末で世界中を旅する「リーマントラベラー」。2016年、毎週末海外へ行き3か月で5大陸18か国を制覇し「働きながら世界一周」を達成。地球の歩き方から旅のプロに選ばれる。以降、TVや新聞、雑誌等のメディアにも多数出演。著書『サラリーマン2.0 週末だけで世界一周』(河出書房新社)、『休み方改革』(徳間書店)。YouTube公式チャンネルも大好評更新中。
リーマントラベラー