自分を変える、旅をしよう。

9歳で母の故郷へ一人旅。飛行機は私を最高の世界に連れて行ってくれる頼もしい存在

旅によって人生が変わった人や、旅を通した生き方をリーマントラベラーの東松寛文さんが紹介する「自分を変える、旅をしよう。」。15回目に登場するのは、現在、新婚旅行で世界一周をしている、名雪綾香さん。台湾出身のお母さんの里帰りで台湾に行く機会が多く、子どもの頃から旅が身近な存在だったといいます。世界一周の旅に出るまでの旅遍歴をうかがいました。
自由に旅した記憶は、普段の生活で自信をなくしたときに、きっと大丈夫だよと私に語りかけてくれる 世界一周の途中で人生初のロックダウンを経験。夫とならどこでも楽しく生きていける自信がついた

●自分を変える、旅をしよう。#15 名雪綾香(29)前編

リーマントラベラーの東松寛文です!今回お話をうかがうのは、2019年9月末から新婚旅行で世界一周の旅を始めた名雪綾香さん。旅の途中で、ニュージーランドで新型コロナウイルスによるロックダウンを経験するなど、エキサイティングな旅を楽しんでいるようです。前編では、名雪さんが旅をするようになったきっかけなどをうかがいます!

東松寛文(以下、――): ご夫婦で旅マスターなイメージですが、名雪さんは、いつから旅をしているのですか?初めて行った旅先を教えてください。

名雪綾香さん(以下、名雪さん): 私は父が日本人、母が台湾人のハーフです。母の故郷が台湾なので、小さい頃から旅は身近なものだったと思います。毎年、母と一緒に台湾へ里帰りをするために、飛行機に乗って日本の外の国へ行くことは、物心がついた時から自然なこと。なので、初めての旅先はもちろん台湾です。
台湾は私にとって非日常が味わえる、天国のような国でした。毎晩どこもかしこも夜市が開かれているので、いつもより夜更かししても怒られないし、大好きなタピオカミルクティーも飲み放題。日本では食べられない臭豆腐も食べれます。おまけに大好きな親戚にはたくさんかわいがってもらえるので、毎年夏が来ると自然とテンションが上がっていましたね。

――それはいいですね。一人旅デビューも台湾ですか?

名雪: そうですね。一人飛行機デビューは、台湾里帰りに向かう9歳の夏休みでした。飛行機のチケットや母のスケジュールの都合上、その年はどうしても一人で前乗りしなくてはなりませんでした。
初めての一人旅で少し緊張したけれど、台湾に行ける喜びの方がはるかに上回り、終始ノリノリでした。CAさんが母に報告した話によると、機内では静かに快適な空の旅を楽しんでいたそうです。よくそれだけリラックスできていたな、と自分でも驚きました。
私にとって飛行機は、私を最高の世界に連れて行ってくれる頼もしい存在なんです。

子どもの頃の名雪さんの台湾での1枚

――その例え、いいですね!小さな頃から旅が身近な存在だったことがよくわかります。旅にハマったと感じたことはありましたか?

名雪: 小さな頃から日常に溶け込んでいたので、ハマったという感覚はないですね。ただ、一度だけ、人生観が大きく変わったタイミングはありました。それが、大学卒業を機に始めた台湾での生活でした。

――大学を卒業してから台湾に渡ったんですね。大学時代はどんな毎日を過ごしていましたか?

名雪: 大学在学中はあれこれ好きなことをして過ごしていました。環境問題に取り組むサークルで活動をするかたわら、台湾へ語学留学、上海に交換留学に行きました。生活費を捻出するため、居酒屋や塾講師のバイトを掛け持ちしたり、その時々でやってみたいことに手を出していました。私はちょっとでも興味があれば、深く考えずにとりあえず挑戦してみるタイプなんです。
その頃は「いい大学を卒業し、大手企業に就職し、長く勤める」ことが正解だと思っていたので、たくさん挑戦し続ければ、就職活動を始めるまでに、「生涯を通じてやりたいこと」が見つかるだろう、と考えていました。

台湾で語学留学をしていたころ

――その時に感じていた悩みや気にしていたことはありましたか?

名雪: 「人生の目標」を聞かれるのが苦手でした。「人生を通じてやり遂げたいことはなんですか」と面接で必ず聞かれるのですが、最初の頃はとってつけたように「日本と海外の橋渡しをしたい」と言っていました。正直なところはよくわからないのですが……。
そう質問され続けるうちに、確固たる目標がないと仕事を選べず、しかも一度選んだらその仕事をずっと続けることが必然と思えてきますよね。面接対策や就職セミナーに参加して、必死に上手な志望動機を練り上げてはみるものの、話している私が一番しっくりきていないので、違和感が募る一方でした。

――結局、日本で就職することを選ばなかったわけですね。

名雪: はい。私は直感で動くタイプなので、今興味があることはわかるけれど、遠い将来まで考えて生きているわけではありません。本音を突き詰めていくと、残ったのは「台湾で働いてみたい」という興味だけだったんです。
そこで、思い切って就活を途中でやめて、台湾での現地採用の道を選びました。

――台湾ではどんな仕事をしていたのですか?

名雪: 小さな印刷会社の事務から始まり、ITベンチャーの日本語翻訳や台湾中小企業の薬局営業など、働けるだけ働いてみた結果、何かの分野で専門性を高めたい、と考えるようになりました。そこで、2017年に一念発起して、米国会計士資格を取得しました。それから台湾を離れるまでの2年間は、監査法人で働きました。

台湾の監査法人で働いていたときの忘年会での1枚。野球のコスプレをしたのもいい思い出

――台湾で働いてみて、気づきはありましたか?

名雪: そうですね、今思うと、日本の就活で感じていた違和感は、外に出てみて初めてわかった気がします。海外、少なくとも台湾にいると転職は当たり前だし、少しでも興味があれば挑戦してみて、もっと興味のあることが見つかったら、また挑戦すればいい、というマインドが普通です。
やりたいことを見極めるチャンスが当たり前にたくさんあるのがありがたかったです。
テンプレ通りの生き方から外れてみたら、自分に合った世界はいくらでもあることに気づけました。

――台湾を引き上げたあと、新婚旅行で世界一周に旅立ったそうですね。

名雪: はい。台湾に来た時も目から鱗だらけだったけれど、世界一周をしたら、もっと自由に好きなことをしている人たちが多くて、私の中の常識は常に更新され続けています。
例えば、大学を休学してバックパーカー旅をしている人や、羊に会いにニュージーランドにワーホリしにきた人など、すごくサラッとした理由で好きなことやっているんです。やりたいことがあれば、かっこいい大義名分は必要ないことを知ることができました。
それ以来、自分の直感を信じて、その都度興味のあることに挑戦しながら、もし「人生を捧げたいほどやりたいこと」が見つかればいいな、というスタンスで生きています。

――帰省以外で旅に出るようになったのはいつごろでしたか?

名雪: 自分で貯めたお金を使って海外旅行に行くようになったのは大学生になってからです。一番高額な使い道は、台湾での短期中国語留学でした。ハーフなのに片方の言語が話せない人も多いとは思いますが、日本人と台湾人のハーフである私も当時は中国語が話せず、大学の春休みを利用して3カ月間留学することになりました。
大人になってから訪れた台湾は、小さい頃の記憶より何倍も刺激的でした。最後に台湾へ行ってから10年以上経っていたこともあり、何もかもが新鮮で、たった3カ月だけでしたが、異国で暮らす楽しさにすっかりハマった瞬間でした。

――今までに一番印象に残っている旅先はどこですか?

名雪: 大学二年生の時に初めてヨーロッパ圏に足を踏み入れた時の感動は忘れられません。お城のような建物や石畳の道を歩きながら、まるでおとぎ話の世界に降り立った気分になり、毎日が夢のようでした。
アジアから外に出たのも初めてなので、全く異なる文化圏に行く、ドキドキと不安を味わいました。英語を使うのも人生初ですし、ホテルも飛行機も初めて自分で手配したので、全てが自己責任。ストライキで電車が動かなくなったり、乗ったバスの行き先が全然違って、飛行機に乗り遅れそうになるなどトラブルの連続でしたが、その分、目的地に着いただけでとてもうれしい。プロセスにこそ旅の醍醐味が詰まっていることを体感できました。

――ところで、僕、リーマントラベラーを知ったキッカケを教えてもらえますか?

名雪: 夫の友人から紹介してもらい、夫婦で東松さんのYouTube生配信に出演したことがキッカケです。週末を68時間と考えるポジティブさと、その実行力に感服しました。

――ありがとうございます!リーマントラベラーを知って、旅のスタイルや普段の生活で変化したことはありましたか?

名雪: 実は、東松さんのYouTubeチャンネルに出演したことをきっかけに、YouTubeを本格的に始めました。撮りためてきた1年分の動画があまりに膨大すぎて、編集を始める前から戦意喪失……。ところが東松さんが自粛期間中、毎日生配信をされているのを見て、私も頑張ろうと思えました。
東松さんは、平日は広告代理店の激務をこなし、週末は旅行、隙間時間でYouTubeなどのSNSを運用している様子を知って、「時間がない」は言い訳でしかない、と痛感します。東松さんのように時間をフル活用している人は身近で見たことがないので、「やればできる」と前向きな気持ちになります!

後編もお楽しみに!

自由に旅した記憶は、普段の生活で自信をなくしたときに、きっと大丈夫だよと私に語りかけてくれる 世界一周の途中で人生初のロックダウンを経験。夫とならどこでも楽しく生きていける自信がついた
平日は激務の広告代理店で働く傍ら、週末で世界中を旅する「リーマントラベラー」。2016年、毎週末海外へ行き3か月で5大陸18か国を制覇し「働きながら世界一周」を達成。地球の歩き方から旅のプロに選ばれる。以降、TVや新聞、雑誌等のメディアにも多数出演。著書『サラリーマン2.0 週末だけで世界一周』(河出書房新社)、『休み方改革』(徳間書店)。YouTube公式チャンネルも大好評更新中。
リーマントラベラー