灼熱の“マスク地獄”を回避したい! 冷感のスペシャリストに聞いた、夏に冷やすべき部位とは

季節はもう間もなく夏本番。例年の蒸し暑さを思い返すだけでも気が滅入りそうですが、今年は新型コロナウイルスの影響で、夏でもマスクを手放せない日々が予想されます。炎天下のマスク……。そんな前代未聞の事態、私たちに打つ手はないのでしょうか。 そこで、マンダムの技術開発研究所でボディケア製品などの開発に携わる、"冷感のスペシャリスト"澤田真希さんに、効率よく涼しさを得るクールハックについてうかがいました。
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人は誰でも"冷感センサー"を持っている

―― 単刀直入ですが、真夏に簡単に涼しさを感じる良い方法が知りたいです

澤田真希さん(以下、澤田): 涼しさをより効果的に感じるお話の前に、人がどうやって涼しさを体感するのかというメカニズムから説明させてください。
私たちの体には「TRPM8(トリップエムエイト)」と呼ばれる、涼しさを感じる"冷感センサー"があります。冷感センサーは約26℃以下になるとスイッチがオンになる。つまり、その温度以下のものに触れたりすると冷感を得ることができるんです。

── 冷感センサーのスイッチが入れば、涼しいと感じられるわけですね

澤田: そうです。スイッチを入れるためには2つの方法があって、1つ目は肌の温度を下げることです。これには「熱交換」と「気化熱」という仕組みがポイントになります。まず熱交換ですが、これは2つの物体の間で熱が移動することを言います。例えば温度の低い金属を肌に接触させると、体の熱は金属に移って「冷たい」という感覚を覚えますよね。それが熱交換の仕組みです。
次に気化熱ですが、これは私たちの体で普通に起こっている汗の原理と同じです。水分は蒸発するときに周りの熱を奪うので、汗が蒸発して肌が冷やされるのも気化熱の働きによるものです。

スイッチを入れる2つ目の方法は、メントールのような清涼成分によって冷感センサーを刺激することです。ハッカオイルなどを使うとスースーして涼しく感じますが、そのスースーする成分がメントールです。メントールは実際に温度を下げる効果はありませんが、氷などに触れた際に冷たいと感じるのと同じように、冷感センサーを刺激して信号を脳に送る働きがあります。

「熱交換」と「気化熱」、そして「清涼成分」。これら3つの要素を効果的に組み合わせることで、心地よい清涼感を感じられる製品の開発に活かしています。

 

マスク着用時でも清涼感を得るコツ

―― 手早く冷感を得るためによくボディシートを使うのですが、効果的な使用方法はありますか?

澤田:首周り、特に耳の下あたりが清涼感を感じやすい部位なので、ボディシートでそこを中心に拭くと良いと思います。心地よさでいうと、フェイスシートでおでこを拭くのもおすすめです。風邪をひいたときによくおでこに氷のうを当てたりしますが、それはより気持ちよく感じられる場所だからなんですね。
清涼感は、たくさんの冷感センサーを刺激するほど感じられます。そのため、ピンポイントではなく体の広範囲を拭くことが効果的と言えます。

また、首や脇の下などには太い血管が通っているので、そこを冷やすことによって冷えた血液が全身を巡り、効率よく涼しさを感じることができます。この場合、ボディシートよりも、冷たいペットボトルや水に濡らしたタオルなどを当てるのが効果的だと思います。

―― 今年の夏はマスクをする機会が多そうですが、着用時でも清涼感を得るコツをうかがいたいです

澤田: 蒸れたなと不快に感じた時点でマスクを外して、フェイスシートなどを使ってササッとを拭いていただくのが良いと思います。その際、メントール配合のものを使うとより清涼感が得られるでしょう。

また、鼻の周辺には「冷点」という涼しさを感じられるスポットが多く存在していると考えられています。鼻表面のあたりにフェイスシートなどで3秒ほど押し当てていただくと、ひんやりとした心地よさを感じていただけるのではないでしょうか。ただ、冷点についてはまだまだ解明されていない部分も多く、研究を重ねているところです。

 

通勤前のひと工夫で、もっと涼しく

―― これからの季節は朝、家を出たときから暑さが襲ってきますよね……。通勤前にできる暑さ対策があれば教えてください

澤田: 通勤時は特につらいですよね。シーン別に対処法をご紹介します。

 

■朝起きて、家を出る前

家を出る直前に、デオドラントスプレーやボディミストなど、メントールを配合した製品を使うことをおすすめします。メントールの清涼成分だけでも冷たく感じますが、スプレーに含まれるガスやエタノールは揮発性が高く、気化熱の効果を感じやすいので体温を下げる効果も期待できます。さらに、外の風に当たることによって熱交換が発生し、清涼感もよりアップします。

 

■会社に到着したら

出社した段階ですでに汗をかいていると思います。顔周りは、フェイスシートを使って、押さえるように汗を拭いていただくと良いでしょう。押さえることによって肌の温度がシートに移り、熱交換が発生します。女性の場合はメイクが崩れにくいという意味でも"押さえる"ことがポイントです。ここでも、メントール配合の製品を使えば、清涼感が効果的に得ることができると思います。

―― 熱交換と気化熱、清涼成分を組み合わせれば、相乗効果によって、より冷感を得られやすくなるということですね

澤田: その通りです。実はもうひとつポイントがあって、メントールというのは、汗などの水分があるとより感じやすいという特徴があります。ですから、汗をかいたところをメントール配合のシートで拭いていただくと、汗の不快感が消え、さらに清涼感をより強く得られるという一石二鳥の効果が期待できます。

顔の場合、特に汗をかきやすいのが生え際の部分ですから、そのあたりを中心に、押さえるように拭いていくのが良いですね。また、頭皮も汗をかきやすいので、頭皮にも使えるデオドラントなどの製品を使って、頭皮の汗ケアをすることも有効です。

 

手軽にできるクールハックで、さらに冷感アップ!

――そのほかに、冷感をアップさせる裏ワザ的なものはありますか?

澤田: ここ数年、ハンディーファンなどが流行っていますが、そういったアイテムを使って風を当てると、気化熱や熱交換が促進され、清涼効果が得られやすくなると思います。メントール配合のボディシートを使用した後に、うちわであおいだり扇風機に当たっても良いですね。そのあたりを上手く組み合わせるのがコツです。
また、ボディシートやボディウォーターなどを冷蔵庫であらかじめ冷やしておくと、より冷たく感じられるのでおすすめです。実は、会社の冷蔵庫の中にも入っています(笑)。持ち運ぶ場合は、保冷剤などと一緒に入れておくのも手ですね。

―― 涼を呼ぶいろいろなクールハックを伝授していただいたので、夏を快適に過ごせる自信が湧いてきました!

澤田: ありがとうございます。ただ、ご注意いただきたいのは、今回ご紹介した方法は熱中症対策とは別のお話だということです。あくまでも清涼感で涼しく快適に過ごしていただく方法なので、熱中症にはきちんと水分を摂るなどの対策が必要となります。いくら涼しくなったからといって、水分補給をおろそかにしないように気をつけましょう。

 

涼を感じるメカニズムを知ることによって、ボディシートやフェイスシートなどのおなじみのアイテムが、より効果的に使えることがわかりました。
澤田さんのお話を通して"冷感スキル"がアップした私たちなら、たとえマスクを着用した状態でも猛暑も乗り切れることでしょう。
さぁ、どんと来い、夏!

神奈川県生まれ。映像制作会社を経て、2011年よりフリーランスのライター・イラストレーターとして活動。 近年は児童向け小説やコミックイラストにも携わる。趣味は食品サンプルの収集。
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