AK (あえて結婚しない)女子・男子

「貯金4,000万円を目指したい」30歳ミニマリスト男が“あえて結婚しない”理由

50歳までに一度も結婚しない女性は7人に1人、男性は4人に1人いるといわれる現代。キャリアもお金もあって、没頭できる趣味もある、そんなAK(あえて結婚しない)女子・男子はどんな毎日を送っているのでしょうか?今回はある出来事をきっかけに、ものも人もミニマリストとして生きることを決めた男性にお話を聞きました。

●AK (あえて結婚しない)女子・男子 #02

ひと昔前なら「夢はお嫁さんになること」という女性も多くいました。しかし人生観や結婚観が変化したことで、最近ではあえて結婚しない生活を選択する人も増えています。

50歳までに一度も結婚したことがない人の割合を表す「生涯未婚率」。最新の国勢調査(2015)では男性は23.4%、女性は14.1%に達しています。本連載ではそんなAK男子・AK女子たちの話から、素顔をひもといていきます。

今回話を聞いたのは、都内NPO法人で教育支援の仕事をしている吉田良二(仮名・30歳)さん。まだ生涯を決めるには若すぎる年齢にも思えますが、「4年前のある出来事」をきっかけに結婚しないことを決心したそうです。

一生結婚しなくていいと語る、吉田さん

月収40万円でも生活に後悔している

「名門国立大学を卒業後、新卒で大手運送会社に入りました。最初の2年間現場研修をしてから、海外支社で1年働いたのですが、赴任先でコーヒーメーカーや高級ソファなどほしいと思ったものを手当り次第買ってしまったんです。今思えば、赴任手当や家賃補助などで一時的に貯金が増えたので浮かれていました(笑)」

海外支社にいた20代後半は、月に40万円ほど収入があったという吉田さん。東南アジアで物価も安く、お手伝いを雇うなど裕福な生活を送っていました。しかし――。

「結局1年後に異動になり、日本に持って帰れないものは交流サイトを使ってほとんど売ったんです。それが4年前でした。それからは反省して本当に必要なものだけを買う生活を心がけるようになりました」

最小限の持ち物で、丁寧な暮らしを実践する、いわゆる「ミニマリスト」に生まれ変わった吉田さん。しかも、なんと同時に人間関係も最小限にすることを決心します。

海外支社に赴任していた時の吉田さん(本人提供)

ミニマリストで人間関係も最小化

「元がだらしない性格なので、他人といるとミニマリストになれないと思ったんです。休日は早朝からランニングをし、終わったらYouTubeを見ながらヨガ。朝食をとって、家で読書か、NetflixやAmazonプライムで映画やドラマを見る。食事は基本コンビニで買ってくるか、外食。自炊はほとんどしません。ね、1人で完結するでしょ」

吉田さんの自宅にあるのは、最低限の衣服に、スマホとノートパソコン、アップルウォッチなどのガジェット。集めていた本や雑誌、映画のDVDなどは捨て、テレビもメルカリで売却したそうです。

家にある本も2冊までと決めて、すべて読み終わる直前にメルカリに出品。売れないときは職場の本棚に寄付。どうしても保有したい本はKindleで買うか、自炊(本を裁断してスキャナ等を使ってデータ化すること)しています。

「あとは部屋着の“制服化”も進めていて、これまでなんとなく残していたTシャツはすべて捨てて、ユニクロで同じシャツを3枚買いました。外出着も無印良品で白シャツ3枚、黒ジーンズ2枚を買ってローテーションしています。『何を着るか考える時間はムダ』なので、なるべく減らしたいんです」

実際に吉田さんが住んでいる部屋。驚くほどものがないが、近々ベッドも処分しようと思っているのだとか

結婚はリスキーだと語る理由

過去に交際した人数は2人(経験人数も同じ)。おまけに「実はAGA治療しているので、性欲もほとんどないんです」という吉田さん。

しかし結婚をしたくない理由はそれだけではありません。

「そもそも結婚ってリスキーですよね。離婚した親戚や友人が何人かいて、『浮気されて探偵を雇った』とか『妻とケンカして物を投げられた』とか悲惨な話を山ほど聞きました。僕、もともと気が弱くて過去に付き合った女性にもキツく当られていて、結婚しても尻に敷かれるのが明白なんです」

 そういうと吉田さんは「そう、僕、神経質なんですよ」と、ポツリポツリ告白を始めました。

「つい相手の顔色をうかがってしまう性格で、ネットで調べたらHSP(Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン)という言葉がありました。生来的に他人の行動や物事の変化に敏感だったりする人を指すそうで、正式に診断されたわけではないですが、前職で働いていたときも他人の顔色ばかり気にしていました」

モンスター上司に耐えていた日々

前職である大手運送会社は、コロナ禍で改めてその存在が評価されたこともあり、外面は立派に映るが、内情はぐちゃぐちゃだったという。

「日本の大企業にありがちですが、使えない上司が山のようにいました。僕も上司の一人とそりが合いませんでした。性格の浮き沈みが激しい女上司で何度も叱責されました。精神的に落ち込んで出社するのがしんどくなった時期もありました」

しかしそのモンスター上司は昨年昇進。それが決定打となり、会社を見限ったといいます。

「今働いているNPO法人は、昨年末に内定をもらいました。就活はコロナ期の直前でしたが、すべてリモートで1か月ほどで終わりました。3分の1が外国人、外資系企業出身者も多い職場なので、多様な価値観を認めてくれる。人間関係にもストレスはありません。自宅勤務になったのでまだ深く交流できませんが(笑)」

吉田さんのポートフォリオ。この日はやや負けが込んでいた

早期退職するため目標は4,000万円

ようやく理想的な働き方を手に入れられた吉田さん。しかし実は10年後、40歳でセミリタイアし、物価の安い海外生活にあこがれています。

「ミニマリストにはお金に執着しない人が多いですが、自分は逆で心配性だからお金を増やしたい。そのためにも無駄な出費を抑えるだけでなく、4年前から株のデイトレードをしています。ビギナーズラックですが、今は約100万円プラスになっています。あと10年で4,000万円まで貯めたいですね」

財布も持たず、支払いはキャッシュレスに統一。また休眠口座の解約も進めていて、いまは都市銀行と証券会社の口座しか使っていない吉田さん。

貯金のほぼ全てを投資につぎ込んでいるそうです。

「まだまだ独学ですが、損しないコツは嫌がらずにロスカット(損切り)すること、利益を追いすぎないほうがいいですね。あとはエクセルで投資計画(ポートフォリオ)を組んでいます。ひとつの銘柄に投資するのではなく、いろんな銘柄を買うようにしています」

新卒では思うような就職ができなかった吉田さんですが、そこで腐ってしまうのではなく、海外赴任を機に自分の将来の目標を見つけることに成功します。それは1人で生きていくことでした。それは、ある意味、無理をしないで生きる彼なりの覚悟だったのかもしれません。

1990年群馬県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業後、扶桑社に入社。雑誌「週刊SPA!」の編集を経て「bizSPA!フレッシュ」編集長に。
AK (あえて結婚しない)女子・男子