最終回「東京ラブストーリー」赤名リカ、言ってることブレブレのカンチを捨てる
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- 前回はこちら:「東京ラブストーリー」弱った心と身体におかゆがしみる。カンチ、“おかゆ女”に落とされる9~10話
原作漫画、平成ドラマ版ともに人気を博した「東京ラブストーリー」を、令和の時代にリブートした令和版「東京ラブストーリー」も遂に最終回。
ここまで、原作とも平成版ともまた違った展開を見せてきた令和版だが、最終回はだいぶ原作のエピソードに寄せてきた。
原作にはあったけど、平成版にはなかった要素として一番大きいのがリカの妊娠。そのせいで平成版のラストは「リカが健気に身を引いた」という印象が強い。
令和版ではこの妊娠という要素を復活させ、大きな流れは原作版に準拠した最終回に。しかし、決定的な部分がいくつか改変されており、結果的にかなり違った後味の残る最終回になっている。
まさかの「卒業」成功!?
まずは三上健一(清原翔)と長崎尚子(高田里穂)。
親の決めた婚約者がいるにも関わらず三上と結ばれた尚子は、三上を両親に紹介することに。しかし、その場でいきなり三上が「尚子さんを愛媛に連れて行きたい」と言い出したため、親はもちろん、尚子自身もドン引き。結局、尚子は予定通り婚約者と結婚式を挙げることになる。
そこで、原作、平成、令和版すべてで三上が結婚式場に乗り込んで行くのだが、その後の展開が大きく違った。
この、結婚式場に花嫁を奪いに行くエピソードは当然、ダスティン・ホフマンの映画「卒業」オマージュ。
「『卒業』みたいに花嫁を略奪しようっていうの?」
原作、平成版では尚子からアッサリ拒否されてしまい、「『卒業』をやろうとして失敗した」というオチがついているのだ。その後、新婚旅行に行った尚子が考え直し、成田離婚して三上と結ばれるのだが。
ところが令和版では一周回って、まさかの「卒業」成功!
挙式の最中に式場に乗り込んだ三上は、
「花嫁姿見せたくらいで、あきらめてもらえると思うなよ!」
対する尚子もニコッ!
「言ったろ、君を連れ去るって」
「違う、私が私の意志でアナタと生きていくの」
だったら、両親に三上を拒絶された段階で駆け落ちでもなんでもしていれば、みんなに迷惑をかけなかったのに……。
本家「卒業」ですら、親族や新郎がブチ切れて追いかけてくるのに、令和版「東京ラブストーリー」ではみんなポカーンと見ているだけ。いいのかそれで。
とはいえ、ウェディングドレスを着たまま三上と一緒に走り去っていく尚子はメチャクチャ画になる! むしろ尚子の方が三上の手を引っ張っているように見えたのは、「私の意志でアナタと生きていくの」を象徴していた。
和賀さんのギラギラ感にドン引き
さらに問題なのがカンチこと永尾完治(伊藤健太郎)、赤名リカ(石橋静河)、関口さとみ(石井杏奈)の三角関係だ。
原作との大きな違いは、リカの貞操観念と和賀さん(眞島秀和)のギラギラっぷりだ。
原作のリカは、エキセントリックな言動がメチャクチャ多く、カンチと付き合っている最中にその辺で出会った外国人と寝てしまったりと、貞操観念もかなりぶっ飛んでいる。
それ故、さとみに心移りしたカンチから何ヶ月も放置されている間に和賀さんと関係を持ったとしてもそれほど不思議ではなかった。
しかし令和版のリカは、第1話の冒頭でヤッた直後の男を捨てる描写はあるものの、カンチと付き合って以降は一途。
「超~好き、世界で一番愛している。どんなことがあってもそれは変わらないから!」
とまで言っていたのに、チョロッとカンチに冷たくされたくらいで、和賀さんと寝てしまう理由がよく分からないのだ。
そこで注目したいのが令和版・和賀のギラギラっぷり。
原作の和賀さんは、だいぶ枯れたオッサンとして描かれているため(年齢が44歳と知ってショックを受けた)、突然、家に押しかけてきたリカの側から迫ったのではないかと想像できるが、令和版の和賀さんは眞島秀和だから……。仕事も性欲も現役感バリバリなのだ。
リカが失踪した際も、カンチの部屋に押し入った上に家主をぶん殴るというご乱心。
弱ってるリカにここぞとばかりにつけいってヤッた感がハンパない。
「どれだけ殴られてもリカを渡す気はない。オレが一生、リカと子どもの面倒を見る。頼むからリカから手を引いてくれ!」
ってアンタ、何かとカンチの相談に乗っていたくせに、隙あらばリカを奪ってやろうと狙ってたのかよ!? 最終回でいきなり肉食丸出しにしてきた和賀さんがちょっと気持ち悪かった。
カンチ、言ってることがブレブレだよ
カンチから別れを切り出され、なおかつDNA検査の結果、妊娠したのは和賀さんの子どもだと判明したことで、「和賀さんと結婚する」とウソをついてカンチの前から姿を消したリカ。
カンチは、一緒にいく約束だったお祭りに行っているのではないかと考え、リカを追うが……。
原作&平成版では、リカのことを心配しつつも、心は完全にさとみの方を向いているため、きちんと別れるためリカに会いに行くのだが、令和版ではまさかの展開に。
「約束しただろ、オレはリカから絶対に逃げないって!」
いやいや。ついこの間、別れ話したのは誰よ!?
「お腹の子が誰の子でも構わないよ! オレはリカと一緒に生きていきたい。リカを愛している!」(英語の歌&キス)
なにーっ!
優しいと言うべきか、その場の雰囲気に流されやすいと言うべきか。それとも、さとみとの件は一時の気の迷いだったのか……?
これはまさかのリカとハッピーエンドパターンなのか!? と思いきや、結局リカはカンチの前から姿を消してしまう。
カンチの心が完全に心が離れているのを悟った原作&平成版では納得できる行動だが、令和版ではさとみを捨ててリカと生きていく宣言まで飛び出しているのに、どうして姿を消す必要があったのだろうか?
きっと“妊娠している”自分にカンチが同情しているのを感じ取ってしまったのだろう。同情を引いて男と付き合うのは、赤名リカらしい生き方ではないのだ。
25年後のカンチ&リカが見たい!
結局、三上は尚子と、カンチはさとみと結婚しましたという予定通りの結末。
「どうしてももう一度リカに会いたいんだよ!」とさとみの腕を振り払ってまでリカに会いに行き、「オレはリカと一緒に生きていきたい!」とか何とか言ってたのに、どの面下げてまたさとみの元に戻ったんだ……。
リカがいなくなって落ち込むカンチを、再びさとみがおかゆ&傘を駆使したテクニックで落としたのか!?
令和版「東京ラブストーリー」を振り返ると、ダメダメな男たちに振り回されず、女たちが自分の決断で生きて行くというテーマが見えてくる。
尚子は両親から自立するという決断。リカは同情なんて求めず、子どもとふたりで生きていく決断。さとみは……嫌われ者になっても狙った獲物はゲットするという決断かな!?
坂元裕二脚本の平成版「東京ラブストーリー」がリカを主人公にしつつも、若干男に都合のよすぎる展開をしていたのに対して、北川亜矢子脚本の令和版がカンチを主人公にしながら女性の決断を描いているのは興味深い。
ちなみに「東京ラブストーリー」は、柴門ふみ自身による続編漫画『東京ラブストーリー After 25 Years』が出版されている。
カンチ&さとみの間に生まれた娘が、25年前にリカが妊娠していた息子と恋に落ち、結婚を報告するというストーリーで、50歳になったカンチやリカたちが描かれるなかなかの傑作。
妊娠エピソードが削られていた平成版からはつながらないが、令和版の続編としてならドラマ化も可能なのでは!?
平成版でカンチ&リカを演じた織田裕二と鈴木保奈美は現在、フジテレビ系のドラマ「SUITS」シリーズで共演しているが、いっそのことこのふたりで「東京ラブストーリー After 25 Years」をドラマ化してもらいたい!
『東京ラブストーリー After 25 Years』柴門ふみ/小学館
「東京ラブストーリー」
出演/伊藤健太郎・石橋静河・清原翔・石井杏奈、他
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「東京ラブストーリー」(1991)
出演/織田裕二・鈴木保奈美・江口洋介・有森也実、他
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