オーガニックワインのこと、テリ子が正しくお伝えします。

自宅でリモートワーク、からの~、オンライン飲み会!が日常になりつつあるテリ子。自宅でのワイン消費率もバンバン上がってきています! そんな中、最近、ワイン売り場でよく見かける「オーガニック」の文字や「BIO」のマークがなんだか気になっていました。なんとなく体によさそうで、地球にもやさしそう。どうせならオーガニックワインを選んだほうがいいかしら?と思うのですが、他のワインとの違いは何なのでしょう? そこで、国内大手のワインメーカー、メルシャンのマーケティング部輸入グループ・澁田翔平(しぶた・しょうへい)さんに聞いてみました。なかなか深~い世界がありそうで……。

オーガニックワインのこと、テリ子が正しくお伝えします。

――澁田さん、はじめまして。テリ子です。 早速ですが、そもそもオーガニックワインとはどういうワインなのでしょうか?

「オーガニック」とは「有機」という意味で、オーガニックワインは有機栽培のぶどうから造られたワインを指します。

――有機栽培って?

化学肥料や農薬、除草剤などを使わず、たとえば動物のフンを発酵させた堆肥を肥料とするなど、自然由来のものを使用する農業のことです。また、遺伝子操作を行わず、それらの条件を3年以上満たすことなどが法律で決められています。

――そうやって育てられたぶどうだけを使ったのがオーガニックワインなんですね!

それだけじゃないんです。オーガニックワインと呼ぶにはさらに規定があって、醸造過程でも決まりがあるんですよ。酸化防止剤添加の上限量も低く設定され、使える添加物も制限されています。その上で、公的な認証機関の審査に合格したものだけがオーガニックワインと名乗ることができるんです。

――認証機関はどの国の組織ですか?

認証機関はひとつではありません。ヨーロッパで最もポピュラーな有機認証機関は「ユーロリーフ」でしょう。そのほか「エコサート」や「AB認証」なども有名ですね。

左から、ユーロリーフ、エコサート、AB認証のロゴマーク

――ところで、日本では「ビオワイン」や「自然派ワイン」という呼び名も聞きますが、オーガニックワインとは別のものですか?

ちょっとややこしいのですが、整理して説明する必要があるのでしばらくがまんして聞いてくださいね。

オーガニックワインを造るときには有機栽培のぶどうが使われますが、有機栽培のなかにはいくつかの農法があり、大きく3つに分けられます。自然との共生レベルが低い順から、①科学技術の介入を最小限に抑えて現実的な路線で折り合いをつけようという「減農薬農法(リュット・レゾネ)」、②化学的な添加物を禁止して自然由来の肥料だけを使用する「オーガニック農法=ビオロジック農法」、③自然との共生レベルがより高く、より厳しい基準をもつ「ビオディナミ農法」です。②オーガニック農法と③ビオディナミ農法にはそれぞれ認証機関があり、法的にきちんと定義されています。

ところが日本語で「ビオワイン」や「自然派ワイン」と言った場合、その定義はあいまいであり、たとえば前述の酸化防止剤の添加量や、どのような添加物が使用されているのかは生産者によってまちまちです。それに対し、オーガニックワインの定義は法律で決められています。認証を受けていないものにオーガニックワインという表示はできません。

――「オーガニックワイン」も「ビオワイン」も「自然派ワイン」もなんとなく一緒くたにしていました……。

実は、日本はこの分野ではとても遅れている国なんです。フランスでも日本の「自然派ワイン」に当たる「ヴァン・ナチュール」という幅広い呼び名はありますが、それにも定義を作ろうという動きが出ているそうです。フランスはオーガニックに対する関心がとても高いのですね。

――なるほど。日本の現状はちょっと残念ですね。オーガニックワインを買いたいとき、見分ける方法はありますか?

先ほどのユーロリーフやエコサートのマークがラベルに入っているものはオーガニックワインです。マークがなくとも、日本の輸入元が「オーガニック」とラベルに記載しているものは必ず認証をパスしているものなのでオーガニックワインです。

――マークのないオーガニックワインというものもあるんですか?

あります。生産者の中にはオーガニックなワイン造りをしていても、あえて認証をとらない人もいます。

――オーガニックワインの味の特徴というのはありますか?

オーガニックワインだからこういう味になる、というのはないと言っていいと思います。味わいにおいては一般的なワインと同じ。ぶどうの品種やぶどうが育てられた土地、誰が造っているのか、というのが一番大きな違いを生むところです。オーガニックワインの生産者に共通する思いは、農薬を使わず、その土地の風土を反映させたワインを造りたい、というものです。その結果、果実味がしっかりとしていて、ぶどう本来の味わいが素直に感じられるものが多いですね。

――独特の香りをもつワインを飲んだこともあります。

一般的に「ビオ臭」といわれるものですね。農薬を使わないと、まれに健全でないぶどうが混じることがあります。そうすると、発酵の過程で「還元臭」のもとになる物質が発生します。かつては還元臭がオーガニックワインの特徴のひとつとも言われていたので、俗に「ビオ臭」と呼ばれるようになりました。でも過度な「ビオ臭」は欠点ともいえる香りなので、高い技術をもつ生産者はそういう香りは出しません。オーガニックワインは化学肥料や農薬を使わず、添加物も少ないので、生産者の腕によるところが大きいのです。

――ふつうより手間がかかりそうですね。価格も高くなりますか?

他のワインに比べると価格は上がりますね。日本で売られているものも、オーガニックワインの単価は高くなっています。でも1000円前後のものはたくさんありますよ。

――オーガニックワインはたくさん飲んでも頭痛にならない、という噂を聞いたことがあるのですが……。

オーガニックワインだからいくら飲んでも頭痛がしない、ということはありません。頭痛がしたときは、飲みすぎたなと思ったほうがよさそうです。

――あ、やはりそれは都市伝説だったんですね……。

* * *
後日、澁田さんが輸入されたスペインの白ワイン「メスタ」を飲んでみました。ほのかに青りんごのような香りがして、酸味もきりっと爽やか。とてもジューシーなオーガニックワインです。これに合いそうな前菜風のおつまみを作ってみたところ……どれもバッチリ! ワインとのシアワセなひと時でした~。

オーガニックワイン「メスタ」の白と。手前は粗塩と黒胡椒とオリーブオイルをかけただけの洋風冷奴(豆腐はペーパータオルに包んで重石をのせて水気をしっかり切るのがポイント)。真鯛のカルパッチョは、鯛の切り身に塩とレモン汁とオリーブオイルをかけ、ピンクペッパーとハーブ(あればディル)を散らして。もう一品はオレンジとセロリのサラダ。塩、レモン汁、バジル、オリーブオイルと和えたセロリをオレンジにのせて(サルボ恭子さんのレシピを参考に)。

出版社に勤務中、定時に帰宅できる部署に異動になったのを機にワインスクールに通い始め、ワインにハマる。2019年3月、出版社を退社。現在はライター業の傍ら、ワインバーを開く夢に向かって飲食店で修業中。
本名:伊奈テリ子。アーバンOLうさぎ(31歳)。 新しもの好きで流行に敏感だが、お財布のひもはかたい。好きな食べ物はにんじんとジビエ。
神奈川県生まれ。映像制作会社を経て、2011年よりフリーランスのライター・イラストレーターとして活動。 近年は児童向け小説やコミックイラストにも携わる。趣味は食品サンプルの収集。
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