千葉雄大×伊藤沙莉「いいね!光源氏くん」次元ジャンプが描き出した「尊重」の関係
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全8話完走、最終回を迎えた「いいね!光源氏くん」
光源氏「気がついたらここにいたのだ。いつの間にか、沙織どのと見る景色が、私の最も大切なものになっていたのだな」
5月23日(土)に最終回を迎えたよるドラ「いいね!光源氏くん」(NHK総合)。撮影は今年1月から2月にかけておこなわれており、新型コロナウイルスの影響を受けずに無事に最終話が放送された。放送された8週間、現代にやってきた光源氏(千葉雄大)にすっかり癒されていた。
「源氏物語」の世界から、現代の会社員・沙織(伊藤沙莉)の家に“次元ジャンプ”をしてやってきた光源氏。物理学者のフィリップ(厚切りジェイソン)が次元ジャンプの謎を解き、光がもとの世界に戻れる方法を見つける。その方法を聞いた沙織は、光を「源氏物語」の世界に帰すことを決意していた。
一方で、光もまた決意をしていた。それは、もとの世界に戻ることにこだわるのではなく、いま目の前にいる一人を大切にすること。現代で、沙織と一緒に暮らしていこうと心に決めていた。
相手の文化を「矯正」しない沙織
前回、京都で光は沙織に厳しいことを言われていた。
沙織「これだけは話しておく。源氏物語の中であなたが愛した女の人は、誰一人幸せになんかなってないから! 愛した人たちを同じとこに住まわせて、別の人が産んだこどもの世話までさせて、それで幸せにできたって? 馬鹿みたい!」
京都の「源氏物語ミュージアム」に、光の将来住む屋敷の模型があった。ひとつの屋敷で、光と愛する女性たちが一緒に暮らす。それを幸せだと言って満足そうにする光に、沙織が苦言を呈したのだ。
沙織をはじめ現代の女性の感覚では嫌だと感じる人が多いだろう。平安時代ならその点おおらかだったかというとそうではなく、沙織が言うように「源氏物語」に登場する女性たちもそれぞれに悩んだり苦しんだりしていた。
それも、光にとってはそれが当たり前であり幸せの形だと信じていたものだ。現代に来たからといって、光の考え方や人生を「矯正」してしまうのだろうかと、ドラマを見て心配もしていた。
沙織は、光の考え方を完全に理解はしなかったようだ。妻がいる光と恋愛関係になることを選ばなかったし、女性に目移りする光を見て不機嫌そうにもしていた。ただ、理解はしなかったが、光の文化を尊重していたからこそ一緒にいることよりももとの世界に帰すことを選んだ。京都ではどうしても我慢ならず厳しいことを言ってしまった沙織。だけど、最後まで光を無理に「矯正」しようとはしなかった。
未来が楽しみになるドラマ
誰かに矯正されたからではなく、光は自ら一人の女性を大切にすることを選ぶ。頭中将(桐山漣)と居酒屋で酒を飲みながら、光はこんなことを呟いた。
光「我らはここへ女心を学びに来たのだろうか」
中将「だとしたら、難儀な旅であるな」
光の耳が痛いこともはっきりと言ってくれる沙織と過ごして、光は、自分も一人ひとりの女性と向き合えるのではないかと少し自信をつけた。一方で、いま目の前にいる女性、沙織を大切にしていきたいとも考えるようになっていた。
「源氏物語」の主人公と現代の会社員、立場が違い過ぎるからこそ「尊重」と「歩み寄り」がわかりやすく浮き上がってくる。「いいね!光源氏くん」の設定は、異文化のドタバタを生むためだけではなかった。違い過ぎる二人がどんな風に相手を受け入れ合うのかを、全8話という長さでもはっきりと色濃く描き出すのにぴったりの設定だったのだ。
7話で詩織(入山杏奈)が言った「みーんなが幸せになれたらいいね」という台詞どおりのハッピーエンド。中将もまた、この言葉通りにカイン(神尾楓珠)たちと幸せにやっているように思える。
とはいえ、いま中将は何をしているのか? 光がもとの世界に置いてきた女性たちはどうなるのか? フィリップは無事なのか? と、もうちょっと見たかった!点も多々残されている。制作統括の管原浩が続編の可能性について触れていたというニュースもあった。
いまの状況では、今作と同じように撮影を始めるのは難しいかもしれない。でも、光が沙織と見る花火を楽しみに待っていたように、また光や沙織たちに会えるのを待っていたい。そんな風に、日々や未来を楽しみに思えるドラマだった。
よるドラ「いいね!光源氏くん」(NHK総合)土曜よる11時30分放送
https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/hikarugenji/
NHK公式サイトで配信中
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