「“卵子凍結”はミレニアル女性を自由にしてくれる? おじいちゃんのひと言から考えた、日本のフェムテックの未来」

女性特有の健康課題を、テクノロジーを活用して解決する「フェムテック」。26歳の筆者にとって、最近とても気になるワードです。好きな仕事に邁進しながら、大好きなおじいちゃんを安心させられるう夢のソリューションになるかもしれないから――。広報活動の最前線で活躍する100社100名の担当者が集まる「若担会」のメンバーが、仕事や生活の現場でふと考えた日々の思いをつづります。

「女は30歳までに子どもを産まなきゃいかん」

おじいちゃんに会うのが憂鬱になったのはいつからだろう。

私は昔からおじいちゃんっ子だった。
幼い頃のアルバムを振り返ると、おじいちゃんの膝の上に乗っている写真がたくさんある。
欲張りな私は、おじいちゃんの膝の上で何個もお菓子を持って、笑っている。
遊園地に行けば、たくさんの乗り物に乗りたくて、おじいちゃんを振り回していた。

おじいちゃんはそんな私に「○○の結婚式に出るまでは死ぬわけにはいかん」といつも笑って話していた。
そう言ってくれるおじいちゃんとの会話が、幼い頃の私は嬉しかった。

おじいちゃんとの会話が変わったのは、いつからだっただろうか。
「結婚式に出るまでは死ぬわけにいかん」
という話に
「女は30歳までに子どもを産まなきゃいかん」
が追加された。

いつの間にか、そのやりとりが苦痛になっていった。

私は今、26歳。
かつての憧れが仕事になり、毎日があっという間で、友人にも恵まれている。
東京という、手を伸ばせば何でも手に入りそうなこの街で、不自由なく暮らしている。

「女は30歳までに子どもを産まなきゃいかん」
心のどこかでは分かっていた。
身近な人から聞いた不妊治療の大変さや、年齢が上がるごとに高まる出産リスクも知っていた。
今を生きることに精一杯な私には、おじいちゃんのあの言葉にタイムリミットを迫られているような気持ちになって、憂鬱だった。

こんな気持ちになっている女性は私だけではないと思う。
おじいちゃんの期待にも応えたいし、将来の不安だってある。
でも、今の仕事も生活も、年齢を理由に無理やり変えたくはない。
そんな欲張りは私だけではないはずだ。

おじいちゃんと私を救うフェムテック

ある時ふと目に入ったのが“フェムテック”を紹介している記事だった。
フェムテックというのは、フェミニンとテクノロジーを組み合わせた造語で、女性特有の健康課題を、テクノロジーを活用して解決することを指す。

今まで、生理日予測アプリや婦人疾患に特化したオンラインでのサービスがあることは知っていたが、私にはあまり縁がないと思っていた。でもあるとき目にした記事の中の、“卵子凍結”というワードが私の心に響いた。

2016年2月に、日本でも凍結していた卵子での出産事例が報告されるなど、それほど目新しい話でもない。だがこれまで、安全面での不安や費用の高さもあって、まだまだ身近では存在ではなかった。

記事によると、最近のアメリカの20代女性はこぞって卵子凍結をしているという。
アップルやフェイスブックなどの大手IT企業では、福利厚生で卵子凍結をサポートしているところもあるという。

これはどういうことなのか?

女性の社会進出のための課題がより重要視されていく中で、女性が生物学的な時計からもっと自由に生きていくために、卵子凍結という選択をする若い世代が増えているということだろう。
そのために、不妊治療に用いられていた医療技術が、拡大しているのだ。
なんと良い話ではないか。

しかし、ここは日本。アメリカで当たり前となっていることは、夢の話……そう思っていたが、日本でも卵子凍結に向き合うスタートアップや連携したクリニックが増えているらしい。卵子凍結という分野は、費用やサービスでこれから成長していく分野であることは間違いない。

最近の日本ではフェムテックというワード自体が広まってきていて、女性特有の健康課題に対して理解が広がってきていると実感する。
この流れはきっと、私のように憂鬱な気持ちになってしまった女性を救うことになっていくだろう。

しばらくは結婚する予定も、子どもを産む予定もない私。
だから、もう少しだけ、おじいちゃんには元気で長生きしてほしい。
こんなことを言っても、きっとおじいちゃんには伝わらないだろうけれど。

元気なひ孫の顔を見せられるように、私も内緒で“準備”をしている。
フェムテックはそんな私の味方になるだろう。
医療の発達で長生きしたおじいちゃんに、医療とテックの進歩で元気なひ孫の顔を見せられる未来がくることを、欲張りな私は願っている。

1986年に立ち上がり、30年以上の歴史を持ち、広報活動の最前線で活躍する100社100名の担当者が集まる「広報担当者による、広報担当者のための会」です。広報パーソンとしてのスキルアップ、活きた情報の収集、会員相互間およびマスコミ関係者との人的ネットワークの形成を目的に、日々切磋琢磨しています。
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