大切なのは“自分らしさ” フィンランド大使館員が説く本場のサウナの入り方

日本で長らく続くサウナブーム。サウナ発祥の国と言われるのはフィンランドです。「人口550万人に対し、サウナは約300万個あります」と話すのは、フィンランド大使館商務部に勤務するラウラ・コピロウさん。毎日サウナに入るラウラさんに、フィンランド流の入り方、そして入る際に大切にしていることを聞きました。

――サウナが日本でブームになっています。まずは、本場フィンランドのサウナ事情について教えてください。

ラウラ・コピロウさん(以下、ラウラ): フィンランドのサウナは日本のお風呂と同じく、ほとんど毎日入るものです。各家庭にサウナがあり、人口550万人に対し、サウナは約300万個あります。

フィンランド人は基本シャイなのですが、裸で入ることについては気にしません。裸は“サウナに入るときの衣装“と捉えています。

――サウナの“衣装”とは、斬新な発想ですね。

ラウラ: はい。でも、「みんな裸ですよね」と口にしてしまうと、途端にみんな気にし出し、恥ずかしくなってしまうので、何も言わないというのが暗黙のルールです(笑)。

大学時代、日本に留学していたのですが、フィンランドに留学経験のある日本人女性と、初めて会ったその日に銭湯に行ったことがあります。初対面で“裸の付き合い”ができるのは、フィンランドと日本だけではないでしょうか。

――フィンランドと日本とで、サウナの入り方に違いを感じることはありますか。

ラウラ: 日本ではサウナの温度が高く、水風呂につかる人が多いですよね。先日、サウナ好きの日本人と一緒にサウナに入ってきましたが、皆さん、熱い中じっと耐えているように感じました。

「きょうはサウナと水風呂のセットを3セットする!」と目標を立て、達成感を味わえるなら良いことだと思いますが、私は、その入り方は「自分らしくない」と思ったので途中で抜けました。
私にとってのサウナはライフスタイルそのものです。団体で行動するのは自分らしくないですし、頑張りすぎて気分が悪くなるのは本意ではないですよね。

――「自分らしくない」というのは?

ラウラ:フィンランドではサウナの入り方に「ルール」はありません。もちろん、他の人と共有するものなので、先にシャワー浴びてからサウナに入るなどのマナーはありますけどね。自分らしく入るのがフィンランド流です。人の数だけサウナの入り方があります。

「静かで、できるだけ暗いサウナが好き。最近、一人で入る穴場のサウナを見つけました」

サウナの入り方には2つある

――なるほど、ひとり一人に「マイルール」があるのですね。ラウラさん流のサウナの過ごし方はどんなものですか?

ラウラ; そうですね。私は通っているジムのサウナに毎日入っています。1日の「締め」がサウナだと考えているので基本は夜に入ります。

入り方は特に意識はしていないですね。5分から15分ほどサウナに入り、その後、体を洗ってあがります。サウナ中は考えごとに集中できる時間です。入るのは1回だけで、水風呂はあまり好きではないので入りません。

サウナの入り方は二つあると思っています。一つは日常的に1人で入るサウナで、リラックスやデジタルデトックスの効果があるもの。

もう一つは、仲間とワイワイ入るサウナです。フィンランドでは飲み会がない代わりに、「打ち上げサウナ」みたいなものがあるんです。

ほとんどの家庭にサウナ付きのサマーコテージがあり、BBQをしてサウナに入り、湖に飛び込んで泳ぎます。

――気持ち良さそう!「サマーコテージ」というのがあるのですね。

ラウラ: はい。サマーコテージはサウナと脱衣室だけのシンプルなものから、軽井沢の別荘のような豪華なものまであります。

サウナと脱衣室さえあれば、極端な話、そこで暮らすことも可能です。シャワーがなくても、サウナのストーブの火で温めた熱湯を水で割って、体や髪を洗うことができます。火元があるので調理もでき、寝る場所は脱衣室で十分です。

フィンランドの実家には、父方の祖父が作ったサマーコテージがあります。祖父のように大工と同じくらいのスキルをもつフィンランド人は多いです。

ラウラさんの実家が所有するサマーコテージ(ラウラさん提供)

――サウナはフィンランドの人たちの生活の一部なんですね。ラウラさんが初めてサウナに入ったのは何歳の時ですか?

ラウラ:生まれてまもなくだったと思います。それだけサウナは日常に溶け込んでいます。

――混浴のサウナもあると聞いたことがあるのですが、男女ともに裸なのでしょうか

ラウラ: 基本は水着を着用しますが、裸で入るサウナもありますね。今年フィンランドに帰った際、スモークサウナがある混浴サウナに行きましたよ。スモークサウナとは、通常とはストーブの仕組みが異なり、入ると自分が燻されている気分になります。

男女ともに裸だったのですが、中は暗かったので皆あまり気にしていないようでした。私も学生の時はそれほど気にしなかったのですが、社会人になってからはやはりちょっと抵抗がありますね(苦笑)。

サウナが生活の一環として広まるとうれしい

――ここ、フィンランド大使館にもサウナはあるのですか?

ラウラ: はい、職員用と来客用に二つあります。毎週火曜は、定時の17時半以降に有志の職員が集まり、皆でジョギングをした後、男女がわかれてサウナに入る習慣があります。私も気が向いたときに参加しています。

サウナの良いところの一つは、お互い裸で、肩書もなくなるので、普段話さないような踏み込んだ話もしやすいことです。職場の人間関係にも良い影響を及ぼすと感じています。

ちなみに、以前に既婚者の友人が「旦那さんと一番話せるのがサウナの中」と言っていました。みんなリラックスしているので、気持ちよく話せるのでしょうね。

フィンランド大使館の中にある来客用のサウナルーム

――ラウラさんは今、サウナに関連する仕事をしているのでしょうか

ラウラ: 私は商務部に所属していて、フィンランド企業の日本進出の支援をはじめ、ファッションやインテリアなどのライフスタイルを日本で広めています。

サウナに入って終わり、ではなく、その前後を含めて、1つのライフスタイルとして提案しています。

例えば、サウナ用にこだわりのタオルを使ったり、アロマをたいたり、サウナ後にはビールやベリージュースなどお気に入りの飲み物を飲んだりすると、より自分らしくいられるし、「ととのう」ことにつながるのではないでしょうか。

「お気に入りのグッズをそろえるのもサウナの楽しみの一つ」とラウラさん

もう一つ、いま集中して取り組んでいるのは「HOME OF FINLAND Tokyo 2020 Metsä Pavilion」という事業です。

フィンランドを象徴するキーワードとして、平等、育児、自然、サステイナビリティ、テクノロジーなどがありますが、それらを「Home of 〇〇」いう形で紹介するプロジェクトが進行中です。

その展示館を東京五輪の開催期間にあわせ、大使館の敷地内に建設中で、2020年秋にオープンの予定です。この展示館は10回まで再建築できるという特徴があり、東京五輪以降にも、また違った形でフィンランドを紹介することもできます。

大使館に建設中のHOME OF FINLAND Tokyo 2020 Metsä Pavilion ⒸHelin & co Architects

――フィンランドはマリメッコをはじめ、おしゃれなテキスタイルや雑貨、サウナ関連のブランドが人気ですね。

ラウラ: フィンランド人は謙虚な人が多いので、褒められると困ってしまいます。最初、サウナが日本をはじめ、アメリカ、ドイツなどの国で流行っていると聞いて「ホント?」と疑ってしまいました(笑)

今は、こうしてフィンランドの文化が日本で流行っていることをうれしく思っています。

フィンランドは幸福度ランキングで3年連続1位の国なのですが、自分らしいものを長く使うことで、毎日ちょっとだけ幸せになれると感じています。

私はサウナグッズを入れるためのトートバッグを持ち歩いています。フィンランドのテキスタイルメーカーLAPUAN KANKURIT(ラプアン カンクリ)のリネンバッグで、とても気に入っています。サウナ後は好きなコスメブランドのオイルをつけるのが日課です。

サウナに入ることはもちろん、サウナが生活の一環として日本で広まったらいいなと思っています。

●Laura Kopilow(ラウラ・コピロウ)さんのプロフィール
フィンランド生まれ。フィンランド大使館商務部 商務官。ファッション・ライフスタイル担当。高校生の時、AFSで北海道・函館に留学し、大学で早稲田大学に留学。その後、国費留学生として北海道大学大学院に入学し、修了。日本大手企業での就職を経て、2018年から現職。「サウナに入ることは、ご飯を食べるのと同じ感覚」と言うほどの“サウナ-”。

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熊本県出身。カメラマン土井武のアシスタントを経て2008年フリーランスに。 カタログ、雑誌、webなど様々な媒体で活動中。二児の母でお酒が大好き。
同志社大学文学部英文学科卒業。自動車メーカで生産管理、アパレルメーカーで店舗マネジメントを経験後、2015年にライターに転身。現在、週刊誌やウェブメディアなどで取材・執筆中。
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