わたし版「フェミニスト・ファイト・クラブ」こと「ぽんぽこぽん倶楽部」へのお誘い

3月8日は何の日か、知っていますか? 正解は、「国際女性デー」。この日がまだまだ認知されていないことも示しているように、日本社会における女性の地位は令和になった今でも旧態依然、男女格差を表すジェンダーギャップ指数は世界でも下から数えたほうが早い121位……そんな現実への怒りを抱く筆者は、世界を席巻したジェシカ・ベネットの名著『フェミニスト・ファイト・クラブ』に刺激を受け、ある”決意”に至ったのでした――。

私は、ジェンダー関連の違和感を発見すると「おかしい!」と叫ばずにいられない性分で「ジェンダーポリス」として周囲に恐れられている(?)

お友達曰く、私がいないところでも「その発言は、私のなかの伊藤あかりが怒りますよ」という使われ方をしているらしい。YAZAWA的な感じで「俺は良いけど、YAZAWAが何て言うかな」というやつである。

いつもいつも「ジェンダーポリス」しているわけじゃないし、時には笛を置かなければいけないことはわかっている。

先日、ビジネスパーソン向けのトークイベントに参加した。「ビジネス社会でどう勝ち上がるか」のお作法がテーマ。登壇者はビジネスの世界で活躍する人たちで、二人とも男性だった。

私は「ジェンダーポリス」のスイッチを切って着席した。

のだけど。やっぱりとてもイライラした。

彼らの目指す「よりよい社会」に私はいるの?

彼らは言う。「よりよい社会を作りたい」と。その能天気さが、私はうらやましかった。

私だって社会をよくしたいと思っている。でも、それ以上に、私を奮い立たせるのは「こんな経験を後輩たちにさせたくない」という思いだ。

例えば、セクハラ。私と同じ女性記者で「体でネタとってるんでしょ?」的なことを言われたことがない人はいないと思う。そして、令和になった今も、後輩たちは同じ視線にさらされている。

それから、結婚したら自分の姓を変更させられること。通帳や運転免許証などの手続きの面倒くささや、なにより親しんできた姓を奪われることでアイデンティティクライシスに悩んでいる人も少なくない。離婚したらしたで、また同じ手続きをすることになる。姓の変更を運転免許証に刻まれる煩わしさを男性はわかっているのだろうか。

なぜ女性管理職や女性政治家がこんなに少ないのか。女性というだけで入試の点数をひかれなきゃいけないのか。お酌やサラダの取り分けを率先してすることが「女子力」なのか……。

繰り返す。こんな思いを後輩たちにさせちゃいけない。
これが、私の社会を変えたいと思うモチベーションだ。

だけど、このイベントではそんな言葉は全くでてこない。
今より社会をもっと、よくする。その「今」に傷ついている人がいることを知らないのかもしれない。彼らの「社会」に私は含まれない、そんな気がした。

友達からのLINE「泣くな、戦って」

友達にLINEを送る。
「あかん泣きそうしんど」
「泣くな、戦って」

「私たちはどうしたらいいんだろう?」
そこで開く本がある。『フェミニスト・ファイト・クラブ』だ。

とりあえず、彼らに私たちの存在を示す必要がある。つまり、発言しなければならない。その時に気をつけることが書いてある。

その1、「とんでもない」しゃべり方をするな、と。
たとえば、
やたらめったら謝らない。
語尾をあげてしゃべらない。
歯切れが悪い言い方をしない。

その2、議論するうえで気をつけなければならないこともある
「典型的な言われ方」を把握し、うまく対処する方法。
たとえば、
・「彼女は野心的すぎる」→「温かさ」で負かすことができる。温かさがあれば、「野心的な女性は冷たく、権利欲が強い」という思い込みに対抗できる。
・「彼女はいい人すぎる」→いい人であると同時にタフであること。何か要求するときは、甘い衣で包みつつ、しっかり通す。
(以上、『フェミニスト・ファイト・クラブ』より要旨抜粋)

私なりの「フェミニスト・ファイト・クラブ」

そして何より、一番力強いのは「ともに戦う仲間をつくれ」ということだ。

私も「フェミニスト・ファイト・クラブ」を立ち上げることにした。

少しアレンジが必要だ。
日本でフェミニストを名乗ると、「男性イラネ」「女性の方が素晴らしい」と思っている人だと勘違いされることが多いからだ。ただ性差別に反対したいだけなのに。そもそも「フェミニズムがこわい」っていう考え方も性差別だと思うけど。

フェミがはいると「女性優位」的なニュアンスが増してしまうからかもしれない。だから、私はもっと無害っぽい、力の抜ける名前にすることにした。それが「ぽんぽこぽん」だ。フェミニストというと反射的に嫌がる人がいるので、ぽんぽこぽんで油断をさせるのだ。ちゃかすなという人もいるかもしれない。だけど「フェミ=悪」としか考えられない人もいる。だから、ぽんぽこぽんと呼んで思考をリセットさせよう(?)。

というわけで、爆誕でございます

というわけで、ぽんぽこぽん倶楽部、爆誕である。

これからは「ジェンダーポリスが黙ってないですよ」と言っていたところを「それはぽんぽこぽん的にNGです」「もう少しぽんぽこぽん的概念を広めていきたい」と使おうと思っている。これはちょっと冗談だけど。

怒ってるだけじゃ、変わらない。目的は変えることで、怒ることじゃない。

ぽんぽこぽん運動が広まったその時、ひとびとは「ぽんぽこぽん=フェミニズム」だったと気づくのだ。その頃には性差別に反対することはまっとうな考えだと浸透していることだろう!!わっはっは(妄想)。

ぽんぽこぽん的には黙りませんよ?

フェミニスト・ファイト・クラブのスローガンは「男性上位制を叩きのめそう」だけど、ぽんぽこぽん倶楽部のスローガンは「私の声を聞け」だ。叩きのめす、に比べたらちょっと及び腰だけど、できることなら敵は増やしたくない。

男女かかわらず、誰かが傷ついているうえでの「よりよい社会」を求めている人なんていないだろうし。ただ、傷ついている人の存在を知らないんだと思う。

だから、私は叩きのめす前に(笑)、私の声を届けたいと思います。黙らないぞ!
というわけで、ぽんぽこぽん倶楽部、はじめます!!(今のところ会員2人。メンバー絶賛募集中です)。

『フェミニスト・ファイト・クラブ 「職場の女性差別」サバイバルマニュアル』

著:ジェシカ・ベネット 訳:岩田佳代子

発行:海と月社

telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。
朝日新聞WEBメディアのフォトディレクター。東京都立大学法学部卒業後、朝日新聞社入社。写真部、AERA編集部、出版写真部を経て現職。写真展に「DAYS FUKUSHIMA」 (2012年、銀座・大阪ニコンサロン)、「CELL」(2018年、ソニーイメージングギャラリー銀座)など。長崎市出身。
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