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ダイバーシティって? ミレニアル世代に体感してほしい、これからの多様性

「ダイバーシティ」という言葉を最近よく耳にします。多様な価値観を持つ人たちが活躍するためにはどうしたらよいのか。ミレニアル世代はダイバーシティとどう向き合うべきか。「第24回 国際女性ビジネス会議」(7月7日、東京・台場)を主催する株式会社イー・ウーマンの佐々木かをり社長に話を聞きました。

「ダイバーシティ=女性活躍」なのか?

――「ダイバーシティ」について、佐々木さんはどう解釈されていますか?

佐々木さん(以下、佐々木): 家庭でも職場でも、多様な知恵を持ち寄ってより良い成果を出すこと、それがダイバーシティだと思っています。よく言われる「女性の活躍」や「男女平等」はその過程ではあるのですが本質ではありません。

日本の場合、同じような家庭環境で育ち、同じような大学を出た男性が、戦後の社会復興を仕切ってきたために、経済が速いスピードで成長できた面があります。しかし、グローバル化とIT化が進んだ今、同質性が果たす役割は終わりました。これからはいろいろな知恵を採り入れる仕組みが必要になります。

いろいろなものの見方に出会った20代

――そのように考えるようになったきっかけを教えてください。

佐々木: 20代で、海外からのコーチング関連トレーニングの同時通訳をしたことや報道番組のレポーターとして20カ国以上で取材して多様なものの見方に出会ったことも大きかったと思います。

帰国するたびに、日本で働く自分たちが地球上でどれだけ恵まれた環境にいるか。水道の水が飲めて、トイレの水が流れて、電気がついて。こんなに恵まれた場所は今でも地球上に半分もないですよ。そういったことを体験したこと、そして英語で考えるようになったことも、自分の多様性を広げることに役立ちました。20代での体験は、大きいですね。

――それらの経験がベースとなって、ダイバーシティへの理解があるわけですね。

佐々木: そうだと思います。私の強みも多分そういうところ。その時代にしては珍しく、自由に考え、多数の選択肢を持ち、自分で意識して「選んで」前に進んで来ました。「ダイバーシティ」を体現した存在だったかもしれません。

Aというものを提案されると、「Bという考え方もありますよ」と言えるし、「Cと混ぜると、実はDということになるんですよ」と言える。いろいろな情報を混ぜたり、取り入れたり、つなげたりしてより良い成果をだすことが私は得意で、その特徴をみなさんに活用していただいて、今日まできていると思います。

自分の内側に、どれだけ多様性を持てるかが重要

――ミレニアル世代は比較的、ダイバーシティを進めていきたいという気持ちが強いと思いますが、この世代をどうご覧になりますか?

佐々木: もちろん良いことだと思います。ただ、今の社会がまだ発展途上だということも知っていてほしいです。年齢や立場によって見える景色が違うのでさらにより良くしていって欲しい。

たとえばミレニアル世代の方は生まれた時から機会均等だと思っているかもしれないけれど、均等なんて名ばかりで、今もまだ至る所に「悪しき習慣」が残っています。

女性たちが活躍しようとして伸びていくとガツンと頭をぶつけてしまう、“ガラスの天井”と言われる、見えない天井があるのですが、これが30年前はずいぶんと入り口近くにありました。例えば就職活動でも女子大生は会社説明会に入場すらできない、とかね。驚くでしょう? 今はそんなことはないですから、まるで平等に見えますが、実は、部長や取締役クラスになるのにはまだ「天井」がある。だから多くの先輩たちが、その部分を改善しようと励んでいるんです。

仕事をする/しない、子供を持つ/持たないなどという選択は、どれを選んでもいい。生き方、働き方は自由です。ただ大切なことは、自分で選んでいるという認識があること。そして、選んでいる人生が、楽しく、新しいことを生み出す力につながっているかどうかが重要です。

――ダイバーシティを推進するために、私たちにできることはありますか。

佐々木: 自分の内側にどれだけ多様な視点を持つかというのも大切なダイバーシティなんです。

これからの時代に活躍する人は、「私はこう考えます」と自分の考えや体験を、プラスの表現で宣言できるかどうか。今まではみんなと一緒であることが評価されたけれど、これからはあなたに質問したら、あなた自身の考えを述べていかないと、ロボットに置き換えられてしまう。

だからまず、いろいろな所に行ったり、人に会ったりして体験や視点を増やし、自分の意見を持つこと。そして、誰のことも攻撃しないで自分の考えを他人に伝える能力を高めていくことが重要です。

「出会った人の数と体験した場面の数が、人間の器を広げる」

――1996年に国際ビジネス女性会議を始めた経緯を教えてください。

佐々木: 当時は講座やセミナーといった、女性たちが勉強する「場」がなく、女の人が集まると社会運動のようなイメージを持たれがちでした。そこでビジネスに関するテーマに特化して、前を向いている人同士が出会い、学べる場を作ったのです。

国際ビジネス女性会議は定員もなく、誰でも申し込めます。性別も年齢も国籍も収入も関係なし。必要なのは前向きな気持ちだけ。主に働く女性が多いですが、中学生から経営者まで、国籍も20くらい、男性も含めて、ウェブサイトから申し込んだ人が誰でも参加でき、例年700~1000人ぐらいが参加しています。

――今年のテーマは「スケールアップ」ですが、どのような思いを込めたのですか?

佐々木: よく男女の比較の中で、女性は物事を考えるときに規模が小さいと言われます。起業しても、大きな会社にするより、良い会社にすることに重きを置いたり、NPOも全国展開せずに地元で質を大切にしたり。

そこで、あえて「スケール(規模)」を考えてみることを提案したいと思っています。勉強してきたことや思考が凝り固まっていないか、自分自身の人生のスケールアップなど、さまざまなスケールを考える1日にしたいなと思って。

――ミレニアル世代も参加できますか?

佐々木: もちろんです。私は、出会った人の数と体験した場面の数が人間の器を広げると思っています。同じ年齢で、同じ価値観の人とだけいても広がりません。昨年は中学2年生が、自分のお小遣いを貯めて来ました、と10時間熱心に参加していましたよ。ぜひ、この記事を読んでくださっている方は、どなたでも参加して欲しいです。

会議には50人以上の登壇者がいるので、1日を通していろいろな人の振る舞いや生き方に触れてほしい。通信講座やネットの情報だけではわからない体験をしてほしいと思います。

●佐々木かをりさんプロフィール
上智大学卒業後、通訳・翻訳等を提供する株式会社ユニカルインターナショナルを設立。2000年には市場創造のためのダイバーシティ・コンサルティング会社、株式会社イー・ウーマンを設立。ダイバーシティの第一人者でAPEC、OECDなど国内外での講演も通算1500回を越える。テレビ朝日「ニュースステーション」レポーター、TBS「CBSドキュメント」アンカー他、メディアのコメンテータなども務める。ベストマザー賞受賞。

第24回 国際女性ビジネス会議

2019年7月7日午前10時~午後8時まで、東京・台場の「グランドニッコー東京 台場」で開催。ダイバーシティや地方創生、ESG投資など多岐にわたるテーマのセッションが行われます。リクルートホールディングス・サステナビリティ推進部の伊藤綾さんら3人の講師による「20代・30代からのリーダーシップ」というセッションも開かれます。
詳細や申し込みはこちらから http://www.women.co.jp/conf/

1988年東京生まれ。慶応義塾大学文学部卒業後、朝日新聞に入社。新潟、青森、京都でも記者経験を積む。2016年11月からフリーランスで活動を始め、取材、編集、撮影をこなす。趣味はジャズダンス。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。