スペシャル対談03

【ふかわりょう×小原ブラス スペシャル対談】ふかわさんの中にいる「女の子」が共鳴すること、ブラスさんが遠回りしてでも伝えたいこと。 (後編)

TOKYO MXで放送中の「5時に夢中!」でMCを務めるふかわりょうさんと水曜レギュラーの小原ブラスさん。実は2人はtelling,でコラムを連載しているという共通点があります。そこで今回は、生放送終了直後の「5時夢(ゴジム)」スタジオにおじゃまして、お話をうかがいました。後編では、女性との接し方について、telling,連載コラムなどについてお話いただきました。

●スペシャル対談03

女性を「異性」として見ていません(ブラス)

――「5時に夢中!」の女性コメンテーターには"女性の猛者中の猛者"のような方たちがたくさんいらっしゃいます。ふかわさんは、女性出演者や、女性視聴者の多い番組を始めて変わったことはありましたか?

ふかわりょうさん(以下、ふかわ): 女性と接することを強く意識する習慣がつきました。それまでは共演者を「タレントさん」という大きなくくりで認識していて、それぞれの性別についてはあまり意識していなかったのですが、「女性(コメンテーター)から意見をもらう」ということを考え方の出発点にして、いろんなことを選択するようになりました。

――たとえばどんなことでしょう。

ふかわ: 簡単なことでいえば服装もそうですし、自分のことを「わたし」と言ったりするのも、この番組に出る前は照れくさいぐらいでした。突っ込み方も変わりました。誰かをおとしめたり下げたり、失礼になるような笑いは避ける。これは今となっては、男女問わずやらないといけない時代ですけど。

考えるようなしぐさを見せるふかわさん

――時代が変わる前に、いち早く敏感になれたと。

ふかわ: 笑いって、その場は和みますけど、本人が不快な思いをしていたらそれは良くないものだと思うので。観ている方、出ている方が傷つく言葉を避けながらおもしろいものを作っていく考え方が身についていったと思います。

――ブラスさんはいかがですか?

小原ブラスさん(以下、ブラス): 僕は出演者の方に限らず、普段人と会話するときにも相手の性別を意識することはそんなにないです。女性の方を「異性」として見ていないというのもありますね。
番組で発言する時も「(異性である)女性の考え」と線引きをせず、僕個人として疑問に思っていることやおかしいと思うことについて触れたことが結果として女性に共感していただける、というようなことはあります。

ふかわ: 実際に僕自身の中にも「女の子」はいる気がするんです。その「女の子」とは、イメージ上のものなのかもしれないけれど。僕は男兄弟の中で育ちましたが、自分の中にある「女性性」が出演者の女性のみなさんと共鳴する時というのは少なからずあるのかなと思います。

ブラスさんを見るふかわさん

「絵本を届ける」つもりで書いている(ふかわ)

――telling,の読者も大半は女性の割合が多いのですが、おふたりはご寄稿いただいたコラムのテーマ選びで、意識していることなどはありますか?

ふかわ: 僕は正直申しますと、「求められてなさそうなこと」を書いていました。女性読者だからといって、相手に歩み寄ったり迎合したりはしない。へそまがりなので、「女性が好きそう」とか「女性にもわかりやすく」みたいなことをしないでおきたいなぁと思っていて。

ブラス: なんだかすごく……ふかわさんっぽいです、それ(笑)。

語り合うブラスさんとふかわさん

ふかわ: 奇をてらっているわけじゃなく、ナチュラルにほかの人が書かないようなことを書きたいなぁと思ってしまうんですよ。なんだろね……こじらせてるんだろうね(笑)。

ブラス: でも、それがふかわさんのコラムの素敵なところなんですよ。「みんなこういうの欲しいんでしょ?」っていう記事は読んでいて気持ちが良い記事だけじゃ心に残らないですよね。

――ふかわさんのコラムではたまに変化球で「物語調」のものもありますよね。しみじみと心打たれる文体が心地良いです。

三日月の夜

ふかわ: 説明っぽいものとか、批判・批評的なものは僕自身があまり好きではないんです。大胆な言い方かもしれないけど、このコラムは「絵本を届ける」感覚で書いているのかもしれない。読む時によって感じ方や刺さり方が違ってくる、そういう文章になっているといいなと。
「プリズム」っていうタイトル通り、読む方にとって、見る角度、捉え方で全然カラーが変わるようなものであってほしいですね。

ブラス: 確かに、何年か後に読むとまた違う感想を持ちそうな文章だなと思います。

微笑むブラスさん

ブラスくんの言葉は、ろ過されたクリアな水みたい(ふかわ)

―― 一方ブラスさんのコラムは毎回かなり骨太で、ずしっとくる題材を選んでいらっしゃいますよね。

ブラス: 元々僕自体、ほんわかしたキャラクターでもないので、一応答えや結論を自分の中に用意したコラムを書くようにしています。ただ、僕もふかわさん同様「女性だけが読んで共感するようなこと」を書こうとは思っていません、もちろん逆もしかり。
性別に限らず、いろんな場面において、必ずしもマイノリティを盲目的に擁護するようなものにはなっていないと思います。
たとえば「弱者しかいない世界のままでいい」というコラムの中では、「強者」にもスポットを当てている。世の中の人が言う「強者」って誰のことなんだろう?というようなことを考えるきっかけになればと思い書きました。

弱者しかいない世界のままでいい

ふかわ: ブラスくんならではの視点というのがありますよね。生まれた土地や育った環境、精神などが幾重にも層になっていて、そこを通ってろ過された水がものすごくクリアでおいしい、一切ややこしい味がしないんですよ。ブラスくんの文章はそういう感覚にさせてくれる。決して難解でなく、すごくすっきりとしている。

ブラス: 「弱者と強者の話をするのにどうしてソ連の崩壊の話からしなきゃいけないんだ?」って読む人は思うかもしれないと理解はしているんですけど、どうしてもそういう文章になってしまうんですよね。

――それが、「ろ過の過程」みたいなことなのかもしれないですね

ブラス: ただのひねくれだと思うんですけどね(笑)でも、そこは削れないし、伝えたいことを書くために必要な過程だと思っているので。

ソファに腰掛けるふかわさん

だから日本はダメなんだ、だけじゃなく……(ブラス)

――「5時に夢中!」では毎日さまざまなニュースを取り扱っていますが、最近おふたりが関心を持っているトピックはありますか?

ふかわ: 日本人の、海を越えてやってくるものに対して「ひれ伏す」風潮に違和感を覚えることがあります。浮世絵なんかは、大昔からその美しさは変わらないのに、海外の方が評価をしたことで人気が再燃したり、世界遺産に認定された途端、日本人観光客もその場所に殺到したり。価値基準を他者、特に、海外の方に依存し過ぎているのではないかと感じます。
美しいものに自分たちで目を向ける、そういう、"価値観の地産地消"文化が育っていってほしいと思いますね。

ブラス: 日本のニュースではしばしば海外の事例と比較して「だから日本ってダメなんだ」という締めになることがある。たとえば「日本は終身雇用文化が強くて世界に比べて遅れを取っている!」という論調。すぐに海外と比べて結論を出してしまって、どうして「良し」とされてきたんだろう?とか、メリットの部分に目を向けて考えることをあまりしないように思います。
それから、女性の社会進出について。これも世界とただ比較をして日本を否定的に見るんじゃなく、女性の社会進出率の高い国の犯罪率を見てみるとまた違う側面もあり……。

ふかわさんとブラスさんのツーショット

(ヒートアップするブラスさんに)

ふかわ: ブラスくん、おじさんもいつも同じようなことを考えています。最後にこの言葉を。「影のない光はない」。

(すっと席を立ちそのまま立ち去ろうとするふかわさん)

ブラス: これが「5時夢(ごじむ)」式のオチってことで、大丈夫ですかね?(笑)

●ふかわりょうさんのプロフィール
1974年生まれ、神奈川県横浜市出身。大学在学中の1994年にデビュー。テレビ、ラジオ、エッセイのほか、ROCKETMAN名義でDJを行う。現在、TOKYO MX「5時に夢中!」、AbemaTV「AbemaPrime」、J:COM「ふかわりょうのフニオチナイト」でMCを務めるほか、TBS「ひるおび」コメンテーター、NHK-FMのクラシック音楽番組「きらクラ!」パーソナリティを務めている。 
http://happynote.jp/

●小原ブラスさんのプロフィール
1992年生まれ。ロシアの政治家家系で育ち、5歳から日本(関西)に移住。 かつては動画配信サービス〈ニコニコ動画〉で有名な配信者であった。学生時代は家庭教師の経験もあり、見た目は純ロシア人ながら、関西育ちの新おねえタレント・コラムニストとして活動中。TOKYO MX「5時に夢中!」(水曜レギュラー)など、バラエティーから情報番組まで幅広く出演している。
https://twitter.com/vlasx

大学卒業後、芸能事務所のマネージャーとして俳優・アイドル・漫画家や作家などのマネージメントを行う。その後、未経験からフリーライターの道へ。
フォトグラファー。北海道中標津出身。自身の作品を制作しながら映画スチール、雑誌、書籍、ブランドルックブック、オウンドメディア、広告など幅広く活動中。
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