憧れバトン【番外編】

ファーストサマーウイカさん取材後記「あなたには“流される覚悟”はありますか?」【BILLIE IDLE解散によせて】

毒舌関西弁キャラでブレイク中のファーストサマーウイカさんが所属するアイドルグループ「BILLIE IDLE」が、12月28日のライブをもって解散します。12月初旬、telling,の連載「憧れバトン」に登場したウイカさんは、アイドルとしての生き方、そしてこれからの自分について赤裸々に語ってくれました。新たな旅立ちによせて、インタビュアーを務めたtelling,ライターの田中春香がウイカさんへの思いを綴ります。

12月の「憧れバトン」にはファーストサマーウイカさんに登場していただきました。バトンをつないでくれた夢眠ねむさんからのメッセージでは「ちゃんまい(ベッド・イン中尊寺まい)→ねむ→ウイカは三大”スナックをやりそうなアイドル”」というコメントもありましたが(笑)、たしかにスナックでウィスキーボトル入れてしこたま酒を浴びたような、濃厚でガツンとした取材でした。

前編:ファーストサマーウイカ さん「誤解されるの、嫌じゃありません」

強烈な印象を残した、かつてのBiS。

ウイカさんを初めて見たのは映画「BiSキャノンボール2014」。
彼女の所属していたBiSというアイドルグループの解散までの数日をある(女の子にとってはかなり壮絶な)「仕掛け」を通して描いたドキュメンタリー映画。

スクリーンの中でファーストサマーウイカは、怒り狂い、泣いていた。

アイドルという職業って、こんなにも頑張り、涙し、戦わなきゃいけないの?私にはそれが疑問で、だから彼女の涙や怒りの理由を理解できたわけではないけど、心がぐらぐらと揺さぶられた記憶があります。

「BiSキャノンボール」があまりに強烈だったため、アイドルアレルギーを発症してしまい、その後はBILLIE IDLEという楽しくてかっこいいグループにいることは知っていたけど、ライブなどに足を運ぶこともないまま遠ざかっていました。

数年の月日が経ち、ウイカさんはテレビの人気番組にバシバシ登場しては、その場をかっさらう「スーパー関西弁ネェチャン」として大活躍するようになっていました。

もう怒り狂ったり泣きわめいたりはしていなかったけど、昔と同じようなパワフルさと美しさでアイドルファンのみならず多くの人を笑顔にしている姿がテレビで見れるのは単純に嬉しかったです。

けど、見れば見るほど今度は、アイドルの時とはまた違う「そこまでやる?」な頑張りを、あけすけなトークや飾らない振る舞いのロケ、半顔メイクなどの体当たりな企画で目の当たりにするようになりました。

「ねぇ、ファーストサマーウイカさん。あなたはどうしてそんなに頑張れるの?」

それが旨味だから。

ウイカさんは様々なインタビューで「流木のように流されるままに生きていたい」と話しています。

でも、いやいや、流されるって言ったって、なにもそんなところにまで行かなくても!と見ていて勝手にハラハラしていました。

だって、みんなにはできますか?夢のためだからといって、アーティストとしてデビューしたのに一糸まとわぬ姿でPVに出たりとか、ピーー(自粛)なことを映画でさせられたりとか、テレビで過剰な毒舌キャラの立ち位置を背負ったりとかを……。
どうしてそれでも「流されてたい」なんて言えるのか。

取材でもそこが一番聞きたいところでした。
ウイカさんはこう答えてくれています

ウイカ: いろんなところに流れ着いて、荒波に揉まれることが自分の旨味になると思っているから。

ああ、これだ。この覚悟なんだ。みんながプライドとか他人からの見え方を気にして流されにいかない波にまで、ひょいと乗っちゃう。そしてちゃんと乗りこなして自分の「波」にできてしまう。

他にもインタビューではBILLIE IDLEを解散してからこの先のこと、丁寧に言葉を選んで答えてくれています。

後編:ファーストサマーウイカさん「黒歴史も全部、旨味になりました」

「流されないこと」が良い時もあったけど……。

他人に流されないという意地がそれなりに必要だったこともある。見栄とかプライドが自分をここまでにしてくれたと思うこともある。でも、「流されるのが好き」と堂々と語るウイカさんの姿に、「あ、なんかその生き方もいいかも」と素直に思えて。
そしてそのたくましい流木は、まだまだ大海へと流されにいこうとしている。

話を聞いて、わかった気になんてなりたくないけど、これからもきっと、ファーストサマーウイカさんは私たちの想像を越えた大きな波に乗り、わけのわからない島なんかにたどり着いて、見ている人たちを楽しませてくれることと思います。

そんなウイカさんが大好き。でも、私たちも見てるだけでいいんですかね。超こわいけど、浅瀬で波に足をぴちゃぴちゃひたしているだけの毎日から、ざばんと豪快に飛び込んでみてもいいような。

ステキな人の言葉一つに“流されて”しまうようなことがあっても、もしかしたらおもしろいのかもしれません。

改めて、ファーストサマーウイカ さん、BILLIE IDLEの活動お疲れ様でした!

大学卒業後、芸能事務所のマネージャーとして俳優・アイドル・漫画家や作家などのマネージメントを行う。その後、未経験からフリーライターの道へ。
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