”アイドル”終えた4日後に入籍報告「ファーストサマーウイカ」という生き方
アイドルたちの「希望の星」
アイドルというと、プロデュース「される」側と考えがちですが、2019年12月に公開したtelling,のインタビューシリーズ『憧れバトン』を読むと少し違った印象を持ちます。その中で、バカリズムさんと“クリスマス婚”をした夢眠ねむさんは、ウイカさんをこう表現しています。
夢眠ねむ:「略)仲良くさせてもらっていて、研究熱心な姿を尊敬しているけど、その研究が『マス(大衆)』に向いていて、そしてその研究通りどんどんマス(テレビ業界)で活躍していっている。自分の見せ方、売り方をちゃんと考えて活躍している姿は私たちの希望の星です」(telling,「憧れバトン」より引用)
夢眠さんは、ウイカさんが「大衆」に向けた見せ方や売り方について研究熱心であることを挙げ、「私たちの希望の星」とまで書いています。それを裏付けるかのように、ウイカさんは、地上波テレビの年末年始特番に引っ張りだこです。
そのウイカさんは、インタビューの中で、「ねむさんのビジネススタイルに憧れて、真似させていただいているんです」と答えています。「ビジネススタイル」と公言するアイドルは少ないでしょう。そのビジネススタイルが、「人気者になるためには、三つのキーワードでその人が思い浮かぶようにせよ」ということです。
ねむさんのキーワードは、ウイカさんいわく「『ねむきゅんカット』と言われるような黒髪のボブカットに、テーマカラーのミントグリーン、そして秋葉原」。自分ににあてはめると、「かきあげ前髪、関西弁、ヤンキー……チンピラ?(笑)毒舌」だと言います。ウイカさんは、アイドルとして「力強いボーカル」といった「それなりのキャラ」もあったとしても、「マス(大衆)向け」と「テレビで勝負していく」ためには足りないものがあった、としています。
「29歳。相当ふんばらないと一瞬で消えちゃう」
地上波のテレビ番組にキャスティングされるためには、大衆性を持っていたり、旬であったりすることと同時に、番組製作側の「演出」にこたえる力やキャラクターが求められることがあります。それを窮屈だと感じたり、自分が表現した姿とのギャップに悩んだりする人が少なくありません。しかし、ウイカさんは逆転の発想をしています。
ウイカ:「最初はどこに言っても毒舌キャラを求められて、めんどくさいというか、「私をそういう人間に仕立て上げたいんだ」って、ちょっと不信感のようなものを抱いたこともありました。でも、ある時気付いたんですよね。『あ、これ(芸能界の)穴』なんだ、って」(telling,「憧れバトン」より引用)
三つのキーワードを見つけてそれを極め、「芸能界の穴」にはまった結果としてポジションをつかんだ今が、これからも続くとは考えていない――。そんなしたたかな賢明さもインタビューから見えてきます。
ウイカ:「今回BILLIE IDLEを解散するにあたって、アイドルという肩書きはなくなるわけですよね。そうなるとまた番組に呼ばれるポジションも変わってくるかもしれない。人生のターニングポイントになるのかなとは思っています。今は29歳ですけど、これをあと何年か続けていくと『派手でおもろい関西弁』が『痛くてやかましい』の方にすりかわっていくかもしれないし。(中略)30代に向けてどうしていくかを考えることもありますね」(telling,「憧れバトン」より引用)
ウイカ:「29歳の女性がこの世界で戦っていくってなったら、相当ふんばらないと一瞬で消えちゃうだろうとか、どうやったら嫌味な感じに見えないだろうとか、いろんなことを考えます」(telling,「憧れバトン」より引用)
ミレニアル世代は、自らマスに向かって発信する手段が増え、表現の幅も大きく広がりました。セルフプロデュースも可能になりました。結婚していたことを報告したSNSの投稿には「一人の女性であるプライベートの自分と、ファーストサマーウイカとしての自分とを分けて考えています」ということがt綴られています。ウイカさんは、メディアで生き抜くための方法を常に考えてきたとも言えます。だからこそ、アイドル時代は隠しきり、新たなステージに立つこの絶妙なタイミングで発表したのかもしれません。
「自分の身から出たサビですら使う」
ウイカさんは性格について、「クソ熱くて、仲間と一緒にやったるで!っていう体育会系」と表現しています。アイドルとしては「17,8歳で『かわいいー!』ってちゃんと真正面からキャーキャー言われて世の中に出れたほうがよっぽどよかったですよ(笑)」と明るく語り、ブレークしている他のアイドルに嫉妬することがあるとしつつも、「自分を卑下するようなことはあんまりないです」と言っています。テレビ番組の収録で爪痕を残せなかったときのエピソードが象徴的です。
ウイカ:「新幹線で2時間半泣いて帰ってくるときとかありますけどね(笑)。『なんであそこであれ言われへんかったんやろ』ってボロボロ泣きながら。でもそれも次の収録でその話をしたら大ウケしたりすることもあるから、拾ったものは全部使うし、自分の身から出たサビですら使う。多分これからも、そうやって生きていくと思います」(telling,「憧れバトン」より引用)
ファンや関係者に、SNSを通じて2015年に一般男性と入籍していたことを報告。これからどうセルフプロデュースしていくのか、ファーストサマーウイカさんから目が離せません。
- ファーストサマーウイカさんプロフィール
大阪府出身。2014年、NIGO(R)プロデュースのもと「BILLIE IDLE(R)」を結成。女性5人組で楽曲リリースとライブ活動を行う。2019年12月の「LAST ORGY」ツアーをもってグループは解散。同年12月13日から公開する映画「ジュマンジ/ネクスト・レベル」の日本語吹替版声優を務める。
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