夢眠ねむさん「夢眠書店を必要としているお客さんに来てもらえるように」
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●憧れバトン02-3
「本屋の正解か、と言われれば違う。でもそれが夢眠ねむのつくる本屋だ」
――実際に書店をオープンして数ヶ月。はじめてみて、いかがでしょうか?
夢眠ねむ(以下、ねむ): 来てくださった方からは「(良くも悪くも)ここは、本屋さん……なのか?」という声もありました。
でも、ネガティブな意味での「本屋にしては」とか「本屋なのに」というコメントをもらうと、「こういう人がいるから本屋がつぶれていくんじゃないの?」って思ってしまいます。
新しく小規模の書店ができるというと「お手並み拝見」というスタンスで冷やかしにくる方は必ずいるんです。そういう構図がどんどん書店業界を閉鎖的にしていくと思っています。本を好きな人が、本が売られている場所を品定めするような世界になっていってる感じ。
店主の意思を反映させた小さな本屋さんを作る時に、本好きに対して「お目が高いですね」って言われなきゃいけないみたいな雰囲気がすごく嫌なんです。
――実際に夢眠書店を訪れた振付師の竹中夏海さんは
「みんなが想像するような一般的な本屋か、と言えば違うのかもしれない。でも、きっとそれこそが正解なんだよね。アイドル・夢眠ねむを初めて見たときにも同じことを思ったから。一般的なアイドルかと言われればそうではない。けど、ねむきゅんはねむきゅんとしてのアイドルの形を成立させて、成功した。だからきっとこの先、この場所は誰が訪れても本屋だって言われる場所になるだろうね」
と言っていたんです。
ねむ: わー、これは本当に嬉しい!
――誰かが決めた今ある「正解」よりも、この先これを「成立」させる。それができるのがねむさんなんだ、というメッセージですね。
ねむ: アイドル時代の私を応援してくれていた人って実はもともとアイドル嫌いだったという方が多いんです。「ねむちゃんに出会ってアイドルへの偏見がなくなりました」っていう声を、活動当時、よくもらいました。アイドルの間口を広げられたことは、「恐縮ながら功績かも」と思っています。
同じように、「本が怖い」「本屋には行かない」という人に対して、「こういうスタイルの本屋もあるよ」という役割を担おうとしているのがこのお店だと思っています。
「夢眠書店」に対してネガティブな感想をもっている方が考えている「正解の本屋」というのは、すでにある、一般的な本好きの人が行く本屋さんなんですよね。
「こんな品揃え、本屋じゃない」という方は多分、私がお迎えしたい対象のお客さんじゃないのかもしれないです。「どうぞ、大きな本屋さんで心置きなく本を選んでください」とお伝えしたいですね。気むずかしい、店主なので(笑)
本を自分で選ぶ、という体験を提供する
――具体的に「夢眠書店」をどんな本屋さんにしたいですか?
ねむ: 「お子さんが自分で本を選ぶ体験のできる場所」にするというのは一つの目標です。
私自身が子供の頃、両親と出かけて「本なら1冊買ってもいいよ」と言われ、真剣に本を選んだ楽しかった思い出、それをお客さんにも提供したいです。
「自分が選んだものが面白かった」これって、すごい成功体験だと思います。
話題の本や流行っている絵本がネットのクリック一つで自宅に届く、その便利さを否定するわけではありません。
ただ、「1冊の欲しい本を買う」という行動が、ネットと本屋では全然ちがう物語になる。人気の絵本の、その横にあるちょっと大人っぽい本を選んでいる自分、みたいな感覚って、その先の人生でも、音楽やファッション、いろんなことに影響していくと思います。自分の感覚を信じてみる体験、自分で自分の人生を選ぶ、みたいなことを小さい頃に本屋さんで培ってくれたらいいなと思っています。
――本を選ぶという体験のきっかけを作りたいということですね
ねむ: はい。なので必ずしも「夢眠書店」に来てください、ここで本を買ってくださいということだけじゃありません。うちも品揃えが多いわけではないので。
でも、うちに来て、「ここでは本が見つからなかったから、今度は地元の本屋へ」と思ってもらいたい。
「嬉しい」の中心にある本屋さんに
――今日も店内では親子連れのお客さんがまったりと思い思いに時間を過ごしていましたね
ねむ: お子さんと一緒にきてくれたお母さんたちが喜んでくれる空間、というのに今後はもっと力を入れていきたいと思っています。
姉が子どもを生んだことで、結婚や出産でのライフスタイルの変化が思った以上に行動範囲を狭めてしまうということを知りました。
この場所でなら、お母さんたちが赤ちゃんをプレイスペースに寝かせておく間にゆっくりご飯を食べられる。お母さんになると、他人が作ったご飯を食べることさえ貴重なんですよね。「家族にどんな言い訳をして息抜きの外出をしよう……」そんな風に悩まなくていい。「本屋さんに行ってきまーす」の一言でいい。そういう場所として使って欲しいという思いがあります。
例えば、私が大好きなパンケーキ屋さんを夢眠書店に呼んでお客さんに提供する、というイベントなども今後やっていきたいです。お子さんを連れていきづらい場所にある「良いもの」を、こっちに持ってきちゃおう!という考えです。
きっと普通にお店に出かけたら、ベビーカーで狭い店内を通るたびに「ごめんなさい」赤ちゃんが泣くたびに「すみません」……。お母さんたちって、本当にいつも謝ってるんですよね。
同じ金額を使って、同じものを体験するにしても、お母さんが周りに謝る回数の少ない時間を提供できるようにしたいです。
「嬉しい」の中心に、この本屋さんがあったらいいなと思っています。
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