telling,編集部コラム

”隣のアイツ”に、嫉妬してきたから今の自分がいる。

リレー連載「憧れバトン」がスタートしました。第一回目は地下セクシーアイドル、ベッド・インの中尊寺まいさんが登場。彼女は編集部・田中の中学高校の同級生です。彼女と過ごした時間、隣で感じていた「嫉妬」が、私を前職である芸能事務所のマネージャーという仕事へ向かわせたと思っています。

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新連載のテーマは「嫉妬」

新連載「憧れバトン」がスタートしました。

誰しも今までの人生で「憧れの人」や「嫉妬する相手」がいるのではないでしょうか。

「他人と比べないこと」をよしとする風潮の中で、それでも自分の中にある「羨ましい」「あの人みたいになれたら」という気持ち。その声に耳を傾けることで、次に頑張るべき課題や目標が見えてくるかもしれません。

著名人や話題の人が「憧れの人」として名前を挙げた方にインタビューを依頼し、「憧れバトン」を受けた今の気持ちだけでなく、ご自身の思いやバックグラウンドについて語っていただきます。さらに「その人が憧れた人」へとバトンを渡すリレー形式で、さまざまなジャンルの方々を数珠つなぎしていきます。

企画が決まり、まず誰に出てもらおう?と話し合っていた時、「田中さんが嫉妬したのは誰なの?」と聞かれました。

そこで真っ先に思い浮かんだのは、中高一貫の女子校時代の同級生で、地下セクシーアイドル、ベッド・インのギタリストの中尊寺まいさんでした。

彼女こそ、紛れもなく私にとって「人生で一番嫉妬した相手」なのです。

【前編】女子校時代はバブル期の石田純一さんぐらいモテてました

扇子を持つベッド・インの「ちゃんまい」こと中尊寺まい

みんなの心を奪っていたひとりのギター少女

中学1年の頃、「数学の授業のアレってさ、なーんかエッチだよね~」と大声でしゃべりながら友達と通学路を歩いていたマイちゃんに「私も全く同じこと思ってたんだけど!」と突然話しかけたのが、私と彼女の出会いでした。

それ以来、手紙を交換したりラフォーレ原宿に行ったり、カラオケしたりプリクラ撮ったり、校則の厳しい学校でおバカなことをしでかして親が学校に呼び出されたりする仲間になりました。

お調子者だった私は、文化祭や学校行事で人前に立つことが多く、軽音楽部に所属していたマイちゃんが組んでいたバンドのパフォーマンスの司会もよくやっていました。

しかし一緒にステージに立っていると、観客の視線が彼女にばかり向いていることに気づいたのです。

「どうして同じように人前に出ても、目を引く人とそうでない人がいるんだろう?」

中学生の頃のちゃんまいさん。門外不出写真を勝手に公開。怒られそうです

彼女がギターを持ってステージに立つと、1,000人近い女生徒たちがワッと浮き足立つのを、横にいて感じることができました。ギタープレーが上手だとか、そんなことは多分みんなあまりわかっていなくて、スポットライトを浴びて前に立っているその人に心を奪われている。歓声を送ることに、無意識のままに夢中になっているような、不思議な感じがありました。

私もみんなを楽しませることは好きだったけど、どうにもそれは(当たり前だけれど)“スターじゃない人”のそれで、「私だっておもしろいこととか、みんなが驚くようなことを考えついて、やってるのに!」と、思春期という強烈なスパイスも手伝い、嫉妬に狂うこと、これ多々なり。(漆黒の歴史)

しかしこれを期に、「ただの目立ちたがり」と「なぜか人の心をつかんでしまう人」の違いや、パフォーマンスにおける「華」などについて、事あるごとに素人なりに考えるようになりました。

エンターテイメントには表現する側と支える側がいる

高校最後の文化祭で、私は彼女たちのバンドの影ナレーション音源を作りました。裏方として演出を工夫して作った音源は客席のウケがよかったと聞き、その時に、エンターテイメントには表現する側とそれを支える側がいると悟りました。

(17歳にして、本当に「悟った」という感覚がしっくりきたのを覚えています)

私はエンターテイメント業界の裏方の世界を志すことを決め、その後、希望していた芸能事務所へ就職することになりました。

すぐに他人に嫉妬する自分が嫌で嫌で仕方なかったけれど、その気持ちと冷静に向き合ったことで次の夢を見つけ、前に進めたのだと思っています。

そして「自分にないもの」を他人に見出し、そこをキュッキュと磨くという、数奇でオモロイ、芸能マネージャーという仕事を「生業」にすることができました。

心置きなくタレントという天才たちに、憧れ、嫉妬し、その魅力を分析する毎日を過ごしていると、ようやく中高生の頃の自分の想いが成仏していったように感じました。

……と、まぁこんな具合に、自分語りばかりする癖がたたって、結局芸能マネージャーとしても開花することはないままに会社をやめてしまったのですが(笑)。

「嫉妬」というネガティブな感情から生まれた道がここまで続いていくとは、まったく嫉妬っつうのも、してみるもんだなぁと今は思っています。

同級生の結婚式はコスプレで参戦。「女子校では、おもろい女が、良い女」

嫉妬しても、いいじゃない(と、私は思う)

今回、まいさんはインタビューの中でこう語ってくれました。

【後編】「嫉妬や憧れ、それ自体は悪い感情ではない。憧れている人と自分との「差」が、自分のオリジナリティになる」

他人と自分を比べずに生きていける人もいます。でも、どうしても人に憧れて、落ち込んでしまう人だっている。そんな人たちが声も挙げずその鬱屈とした感情を持つ自分を責めてしまうことがあるなら、是非この連載を読んでもらえると嬉しいです。

新連載「憧れバトン」。すでに「まいさんが憧れた人」として名前を挙げてくれた2人目の取材も終えています。いやぁ、とっても素敵な方が、次に控えてくれていますヨ。

どうぞ、しがない一般人のかっこ悪い嫉妬が生んだ企画ですが、素晴らしい面々のご登場を楽しんでいただけたら幸いです。

大学卒業後、芸能事務所のマネージャーとして俳優・アイドル・漫画家や作家などのマネージメントを行う。その後、未経験からフリーライターの道へ。
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