telling, Diary ―私たちの心の中。

「イタい」が死語になる令和は明るい時代だと信じたい。

「イタい」って言葉、最近めっきり聞かなくなったと思いませんか? 気が滅入るニュースであふれた令和の夏、筆者が見つけた唯一の「光」は、令和という時代は「イタい」が死語になる時代かもしれない――ということ。 人と人を比べるモノサシの目盛りは、もうとっくに人それぞれ違っているのです。

●telling, Diary ―私たちの心の中。

夏バテ? いや、世の中のニュースにちょっと疲れているだけ

令和初めての夏は、平々凡々と生きている私ですら、深く考えてしまうたくさんのニュースであふれていました。

残酷すぎる放火、表舞台の裏社会、圧倒的に不利な選挙。
なんとなくぼーっとしちゃって、なんとなく失望しちゃって。

同じ社会で生きているから関与しなくちゃいけないのに、同じ社会で生きていると認めたくないような出来事や発言が多いように感じます。

無関心は悪。そんなのわかりきっているけれど、積極的に無関心を選びたくなっちゃうような時代。それでも必死に世の中のできごとに関心を持ち続けようとしているのが、今の私のコンディションです。

私が覚えているこの夏のニュースの一つに、浜崎あゆみさんの小説発売がありました。
事実に基づいたセンセーショナルでリアルな内容は、発表後たちまちテレビやネットで様々な意見が飛び交いました。

私が今回気になったのはこの本の良し悪しではなく、ある番組でのコメンテーターのひと言。

「ただのイタい人」

浜崎さんを表現するこの3文字に違和感。とてつもない違和感。

説明できないこの気持ちはなんだろう――と頭をぐるぐる、そしたら私、ものすごくポジティブなことに気が付きました。

「イタい」って言葉、最近めっきり聞かなくなったと思いませんか?
久しぶりに聞いた「イタい」という言葉。絶妙に人を傷つける、この陳腐な言葉は、いまの日本に似合わないような気がします。

イタい、が死語になる。

この夏、私たちに降り注いだたくさんのニュースの中で、私が見つけた唯一の「光」だったような気がします。令和、これはもしかしたらいい時代になるかもしれません。

イタいかどうか。評価することが時代遅れ

イタい人。
私自身が言ってしまったことも、言われたこともあるからこそ、胸に鈍く響くこの言葉がとても苦手です。

イタいって言われると、思い切り傷つけない。
イタいって言うと、気付かないふりでも傷つけられる。

さらりと日常で使える便利な言葉のくせに、後味の恐ろしさたるや!

そんな怖い言葉が死語になると感じた背景には、現代社会を象徴する「多様性」が大きく関係していると思うんです。

マス的な考え方が崩壊し、みんながそれぞれ、自分の居心地のいいコミュニティや情報の中で生きることを選び始めた令和の時代。

人と人を比べるモノサシの目盛りは、もうとっくに人それぞれ違っていて、マジョリティに受け入れられること、人より優れていることが正解ではなくなりつつあります。

そうなると、自分を評価するもの、自分を受け入れるものは、もはや自分しかないわけで。

否が応でも自分自身に向き合わなくてはいけないことの辛さこそが、令和という時代を象徴しています。

イタい、は、自分の価値観の範疇で人を批評する言葉です。

でも、もはやだれかと同じであることを求める時代ではないし、だれかとズレても生きていける時代だし。なんなら、だれかとズレていることが決定的な「らしさ」に繋がったりするいま、イタいは一周回って褒め言葉になるんじゃないかとすら思うんです。

久しぶりに聞いた、イタい、という言葉に対する違和感をひもといてみるとやっぱり死語になっていく気がしました。

自分のファンになることがいちばん生きやすい。

個性や自分らしさが認められやすくなったことは、とてもいいこと。

その一方で、「普通に生きたい」いや「普通より少し上くらいにいたい」みたいな、いわゆる「普通」がなくなってしまった苦しさも、時々感じることがあります。

平均ってどこ?
みんなどうしてんの?
いま私、どんな感じ?

比べることに意味がないと言いつつも、人生の中でいつのまにか比べる癖がついてしまっていたのも事実。受験も就活も美容だって、周りと比べることで向上心を持って頑張ってきたかつての自分。人と比べることで燃やしてきた闘志を自分向きに変換するのは、ときに難しいものです。

先日、会いたいなーと思っていた子に会って、初対面で意気投合、久しぶりに朝まで喋って歌って踊って楽しい時間を過ごせた出会いがありました。

「会いたい!あなたのここが大好き!」

私が伝えると、その子は「僕も僕の大ファンです!」という返信をくれました。

これ、いい言葉だなーとしみじみ。

自分のファンになる。

ちょっと前だと「イタい人」で片付けられちゃってたと思うんですけど、この令和の夏に聞くと、爽やかに心に響きました。イタさなんて遥か彼方で通り越してきて、ここまで自分を突き通せていることに、心から尊敬の気持ちを抱きました。

私自身も、きっと自分のことは好きな方に寄っているのだけど、こんなに胸を張って言えたことはなかった気がします。

私が私のファンになるまで、あとちょっと。
令和は、色んな自己愛が混ざり合う時代になりそうな気がします。

㈱MISSION ROMANTIC代表、たった1人の社員。広告代理店に4年勤めた後、外資やベンチャーを経由し2019年3月起業。小説を通じて人と出会う人力マッチングサービスを運営、ロマンチックに生きて行きたい。
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