BILLIEIDLEのメンバーで、タレントとしても活躍中のファーストサマーウイカさん

憧れバトン

ファーストサマーウイカさん「黒歴史も全部、旨味になりました」

誰しも人生で何人かはいる「あこがれた人」や「嫉妬する相手」。 「他人と比べない社会」を良しとする風潮の中で、それでも自分の中にある「羨ましい」「あの人みたいになれたら」の声に耳を傾けることで、次に頑張るべき課題や目標が見えてくるかもしれません。 今回は、2019年12月のライブを機に解散するBILLIE IDLEのメンバーで、タレントとしても活躍中のファーストサマーウイカさん、後編では「嫉妬」との付き合い方について伺いました。

●憧れバトン03-2

「一口ちょうだい」ぐらいの嫉妬はたくさんある

――今回のテーマは「嫉妬」。前回、前々回のベッド・インちゃんまいさんと、夢眠ねむさんは「しないです」という2人だったのですが。

ファーストサマーウイカ(以下、ウイカ): 私はめっちゃしますね。橋本環奈ちゃんのCM観て「わぁええなぁ……こんなんに生まれたら最高やん!」とか広瀬香美さんが歌ってるのとか聴いたら「こんなに歌うまかったら幸せやろなー!」とか。人に対してすぐ羨ましいと思います。

――となりの芝が青く見えてしまうということでしょうか。

ウイカ: ただ、嫉妬といっても、自分を卑下するようなことはあんまりないです。「私なんて」みたいな感情よりは「ええなぁー!」っていう方。ファミレスで友達の頼んだメニューを「そっち頼んだらよかったわぁ、一口ちょうだい!」みたいな羨ましさです。

リラックスした笑顔を見せるファーストサマーウイカさん

――どうして自分を卑下するまでにはいかないんですか?

ウイカ: 自分にもそれなりの自信……というか、「面白み」を感じているからでしょうね。
たとえば、最近BiSHというグループがすごく人気があって、私はBiSという姉貴分の、血の繋がったようなグループにいたので、タイミングが違ったらBiSHにいる未来もあったかもしれない、なんて人に言われたり、自分でも思うことはあるんですけど。
でもそこで「あー!BiSHにいたらもっと売れてたのかもしれないのに!」じゃなくて「私がいなかったらBiSHは存在してなかったな」って思えちゃう。「BiSHのメンバーは私に憧れてるって言ってるしなぁ、私のおかげかな」とかね(笑)

――なかなか強い考え方ですよね。

ウイカ: 私の大好きな芸人さんと共演してたらそりゃもう、その度に血の涙を流して観てますよ(笑)。でも、よく「嫉妬心があるから頑張れる」っていうじゃないですか。私まさにそれで。
歌が上手い人が羨ましい、じゃあ、自分はどうやったら違う部分で魅力が出せるだろう?って考えたり、「BiSHが人気?オッケー、ここは人気に乗っかったろ。どや、うざい先輩やろ?」って、おいしいとこどりでバネにしようと思えちゃう。

――どうしてそう思えるんですか?

ウイカ: 自分にはある程度の「大衆的な目線」があると思っているんです。いわゆる「私が良いと思ってたものって、売れていくねん!」っていうあれです。だから、いいなぁって嫉妬できる存在のまさにその「いいなぁ」の部分をうまく取り入れたら、自分の良さにできるんじゃないかって。
この「いいなぁ」とか「すてきやなぁ」ってフラットに思える感覚は消さないようにしていますね。羨ましいって思える性格でよかった。

壁にもたれかかるファーストサマーウイカさん

私はクリエイティブな人間ではない

――2019年12月で解散予定のBILLIE IDLE。ウイカさんにとってどういう場所でしたか?

ウイカ: 「唯一の、クリエイティブな種を撒いて花を咲かせるということをする場所」ですかね。
私、あまり率先してものづくりをするような人間ではないんです。グループの活動として作詞をすることはあっても、普段からポエムを書いてきたというわけではない。作詞や振り付けは、プロジェクトの中で人から勧められて「私がやったらおもしろいんじゃないか?」という感じで、戦略的にやらせてもらっていた。あくまで自分のことはパフォーマー側だと思っています。
なので、そういう場がなくなるというのは結構大きいことかもしれません。

――「場所」がなくなることについてはどう思いますか?

ウイカ: 私自身、自発的に何かを作ろうと思ったことが人生で一度もなくて。一貫して「来たモンは全部やる精神」って感じだったんですね。
よく、「流木のように生きたい」言ってるんです。「バンドをやりたい」「女優になりたいかも?」発端はいつも自分、でもそこからは波に揺られるままに、たどりついた島に滞在していくような人生。波や風という人や縁に左右されながら、どこかへ連れて行ってもらえるような生き方をしていきたいと。
だから、次にバンドなのか劇団なのかわからないけど、もしそういうものをゼロから作るような活動をするとしたら、それは人生で初めてのことになるかもしれないです。

BILLIEIDLEのメンバーで、タレントとしても活躍中のファーストサマーウイカさん

「圧倒的に普通の人間だった」からここまでこれた

――それにしてもウイカさん、女優を志していたのにBiSという過激なアイドルグループに入り、BILLIE IDLEを結成し、今度はバラエティで「毒舌キャラ」……。流されるにしてはあまりにも涙も多い荒波すぎる20代だったように見ていて感じました。

ウイカ: 荒波!!(笑)おもしろい!今までなかった発想!!

――「流されるタイプ」といっても「あんなとこまで流されなくても!」と岸の方でみんながハラハラしているような……。

ウイカ: たしかに、波に逆らうこともできたかもしれないし、何ならこの先、朽ち果てて沈んじゃうこともあるかもしれない。でも、そんな自分をおもしろがれるか否かが大事だって思います。
そりゃね、もう、“生まれた星”みたいなものを感じますよ。今でこそテレビでこんな感じのキャラクターで笑ってもらって使っていただいてますけど、もっと17,8歳で「かわいいー!」ってちゃんと真正面からキャーキャー言われて世の中に出れたほうがよっぽどよかったですよ(笑)

――10代から清純派で大スターになるような。

ウイカ: そうそう。29歳の女性がこの世界で戦っていくってなったら、相当ふんばらないと一瞬で消えちゃうだろうとか、どうやったら嫌味な感じに見えないだろうとか、いろんなことを考えます。
でも、私っていう流木、相当、稀有(けう)なところに流れ着きながらここまできてるんじゃないかと。こんな変な経歴そうそういない。
それは、私が「圧倒的に普通な人間だったから」だと思うんです。

――特別な人間だったから、ではなくてですか?

ウイカ: ビジュアルもしかり、器用貧乏なところもそう。何ひとつ人より秀でてると自分では思ってません。
でも「こんなに凡庸なのにこんなとこまで来れたなんて、私めっちゃ“持ってる”な、天才かも」とは思ってます(笑)

――ウイカさんが何もしてこなければ、ここにはたどり着いていないと思います

ウイカ: きっと、この流木は、苔もびっしりついてるし、いろんな海の塩に揉まれてきてるはず。でも、それをできるだけ払い落とさない、要は、やってきたこと全部無駄にはしてこなかったつもりです。
実は私、声優の専門学校に1年だけ通って中退したんです。中退の説明が億劫だから今まで極力公には言わないようにしてたんですけど、映画の声優の仕事が決まって「声優の学校に通ってたこともあったので、夢が叶いました!」って、封印してたものも一気にグイーンと打ち出しちゃって(笑)

telling,の取材に応じ、笑顔を見せるファーストサマーウイカさん

――黒歴史だと思っていたものも、活きてきたんですね

ウイカ: 「やっててよかった公文式」じゃないですけど、なんでもやってきてよかった。こんな風に後々の人生に役立つんだなぁって思いました。
だから、困難なことや辛いことがあっても、全部明日のネタにしてやろうって思ってやっています。
たまに収録で滑って大泣きして帰ることもありますけど……。

ーーかなり落ち込むタイプですか?

ウイカ: 新幹線で2時間半泣いて帰ってくるときとかありますけどね(笑)「なんであそこであれ言われへんかったんやろ」ってボロボロ泣きながら。
でもそれも次の収録でその話をしたら大ウケしたりすることもあるから、拾ったものは全部使うし、自分の身から出たサビですら使う。多分これからも、そうやって生きていくと思います。

取材後記:「声優になりたい」という夢は黒歴史だったと話してくれたウイカさん。
「でも小学校の卒業文集の時に書いた「声優」という夢を、進路を決めるときに思い出して繋がって、その学校に通ったことが今、仕事に繋がって。ずーっと昔の自分からバトンを繋いでもらってるんです。
グループの解散も、今ここで話していることや、この記事も、なにか次のバトンになるかもしれない。これ『憧れバトン』って企画なんですよね? 私が次にバトンを渡す人にも、新しい発見があるかもしれない、それが私に返ってくるかもしれない。そんな風に思います」。とうれしい言葉をくださいました。

ウイカさんが「憧れた」次のバトンを受け取る人は……?
次回もぜひお楽しみに。

●ファーストサマーウイカさんプロフィール
大阪府出身。2014年、NIGO(R)プロデュースのもと「BILLIE IDLE(R)」を結成。女性5人組で楽曲リリースとライブ活動を行う。本年12月の「LAST ORGY」ツアーをもってグループは解散する。また12月13日から公開する映画「ジュマンジ/ネクスト・レベル」の日本語吹替版声優を務める。

現在肩書き無し。30歳の夏、港区での彼氏との同棲を解消、同時に8年マネージャーとして勤務した芸能事務所を退社する。ライター業ではお笑いやサブカルチャーに関するコラムをwebサイトに寄稿など。
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