憧れバトン

ぱいぱいでか美さん「いつだって替えがきく存在がいるという覚悟でやっている」(後編)

「有吉反省会(日本テレビ)」をはじめバラエティ番組でも活躍する歌手でタレントのぱいぱいでか美さん(28)。飾らないキャラクターと奇抜な芸名で、時にはSNS上で心無い言葉や、執拗な誹謗中傷を受けたことも。なぜ、それでも彼女は頑張れるのか。 後編ではテレビに出演する際の譲れない思いについてもうかがいました。

●憧れバトン04-2

この人が悪いんじゃない、世の中が悪いんだって思う

――タレントとしても活躍中のぱいぱいでか美さんですが、幼少の頃から歌手を目指しており、現在は2枚のアルバムを発表するなど、その夢を叶えています。高校は県内一の進学校だったそうですが、歌手の夢を持つことや、貫くことを否定されたことはなかったのですか?

ぱいぱいでか美(以下、でか美): 中学生の頃の塾の先生には現実的なプランを盾に、別の進路を進められたことはありました。でも、頭ごなしに否定してくる人は周りにはいなかったですね。もしかすると影では言われていたかもしれないけど、親を含めて、否定してきた人はいませんでした。

――人から理不尽な否定をされずに育ったことが、でか美さんの現在のキャラクターを形成しているように感じます。人が聞いていて嫌になるような自虐や、逆に誰かを攻撃して傷つけるような発言がないのがでか美さんの魅力だと思うのですがいかがでしょうか?

でか美: 周りの人に恵まれていたとは本当に思います。でも一方ですごく冷めている部分もあるので「この人とは合わない」と思うと、深く関わる前に距離を置いてしまうんですよね。自分で自分の居心地の良い場所を作ることで自分にも他人にも機嫌よくいられるようにしてきた感じです。
私の周りって、私みたいな性格の子ばっかりなんですよ(笑)

振り向くぱいぱいでか美さん

――合わない人を遠ざけることで、自分の視野が狭くなるのでは?と思うことはありませんか?

でか美: この仕事は良くも悪くもいろんな人に会うので、たまに「えっ!?」っていう人に会うと「そうそうこれこれ!こういう人いる!」って思い出してますね(笑)。SNSで私に対して攻撃的な人に出会うこともありますが、そういう方の他の投稿を読んでみると「あ、この人もつらいんだな」ってわかる。そうすると、「この人が悪いんじゃなくて、世の中が悪いんだろうな」ぐらいに思えるようになってくるんです。

――自信がなくなりそうな時はどうしていますか?

でか美: 基本的には自己肯定感はすごく低いタイプです。でも、ライブのステージに立てば目の前に笑顔になってくれてるお客さんがいるから。それは事実なので、「よし、頑張るかぁ」って思えます。
あとは、私、ハロー!プロジェクトが大好きなんですが、彼女たちのライブや映像を観ているだけで「何をこんなちっぽけなことで悩んでるんだ私は!」って本当に思うんですよ。

芸能人の方々って、私から見たら完璧にしか思えない人でもアンチがいる。それなら、私にも嫌なことを言ってくる人がいて当然だよなって。

――では、SNSの攻撃にはあまり傷つかない方ですか?

でか美: いえ、全然傷つきます。昔は傷つかないスキルを身に付けたいと思っていたけど、「そりゃ、傷つくよね」って受け止めて、“ちゃんと傷つく自分”として成長していけたらって今は思っています。

素人時代が長かったからこそ、視聴者の気持ちがわかる

――自分の気持ちには嘘はつかないということですね。

でか美: これもネガティブを原動力にしない、という話に近いかもしれませんが、例えば「ブス」とか「つまんない」って言われても、「もっと可愛くならなきゃ!」「おもしろくならなきゃ!」みたいな意固地にならないようにもしています。可愛いって言ってくれる人もいるし、今日も収録でウケたしってポジティブな感情を次の仕事に生かすように心がけていますね。

腰をかけるぱいぱいでか美さん

――心無い言葉を浴びて、逃げたくなることはないですか?

でか美: 高校を出てボーカルの専門学校に通い始めてから本格的にバンド活動をはじめた、いわゆる「素人時代」が長かったからこそ思うのですが。多分テレビを見ているだけの人たちって、そんなものだと思うんです。誹謗や中傷に深い意味はない。みんな軽い気持ちで「あの人はおもしろくない」とか「この芸能人嫌い!」とか言ってるんですよね。自分もそうだったから。

――表舞台に立つ人として、その感覚を持っているのはすごくバランスが良いですよね。

でか美: それでも立ち直れないくらい落ち込んだ時は自分のウケた時の録画を見返したりしますけど(笑)

――そこまで達観できるのはとても強いと思います。

でか美: やっぱりどこかでいまだに夢みたいだって思ってるからだと思います。収録でふとした瞬間に「うわぁ、有吉だぁ」とか、今でも思ってしまうんですよ。私の人生、すごいことになっているなぁって。

壁に手をつくぱいぱいでか美さん

自分の軸をはみ出してしまったら、替えのきく存在になってしまう

――「有吉反省会」のレギュラー出演も5年目を過ぎました。歌手を志してこの世界に入ったでか美さんにとって、バラエティ番組で求められることへの難しさはありますか?

でか美: 「有吉反省会」に関しては、何か無理をしてキャラを作らされたり、無いものをあることにする、みたいな演出はなくて、私の中にあるものを引き出しておいしくしてもらっています。だから、企画としての「無茶ぶり」にもやってみよう精神でチャレンジできていますね。

――やりづらいのはどんな時ですか?

でか美: たまに別の番組にお世話になる時に「ちょっとこれ、こういうことに“しておいて”くれませんか?」みたいなことを言われても、自分の本意と違うとできないことがあります。そういう時に「大丈夫です!」って柔軟に対応できればもっと次の仕事に繋げていけるのかもしれないのですが……。
自分の中に無いキャラクターや考えを発信することはできない。そういう頑なさが自分の足を引っ張っているのかなと感じることはあります。

――そうした自分の中の課題をどう乗り越えていきたいと思いますか?

でか美: でも多分、できないんですよね。譲れない部分は変われないと思う。ポリシーは変えずに、自分の軸の中でやっていくしかないです。軸から外れたことまで受け入れてしまったら、タレントとして今以上に替えのきく存在になってしまうんじゃないかと思うんです。今でさえ、いくらだって自分の代わりの人はいるんだからと思って頑張っているので。

柔軟になんでも受け入れすぎて、自分じゃなくてもできるような仕事をやりたくはない。頑固かもしれないけど、そういう気持ちでやっています。

取材後記:「有吉反省会」で見せる“いじられキャラ”や“博多華丸・大吉の大吉さんへの”いじらしい片思いキャラ”とは少し印象の違う、骨太なでか美さん。嫉妬をエネルギーにするとうまくいった時に大切な人たちのおかげではなくなってしまうという話も印象的でした。次回はどんな方へバトンがつながるのでしょうか?お楽しみに。

●ぱいぱいでか美さんプロフィール:
1991 年生まれ、三重県出身。一度聞いたら忘れられない名前と、「言うほどでかくないがそこそこでかい」おっぱいを武器に、日本テレビ「有吉反省会」レギュラー出演の他、自身の楽曲の作詞作曲や楽曲提供、グラビア、コラム執筆など幅広いジャンルで活躍。
公式HP:https://www.paipaidekami.com

大学卒業後、芸能事務所のマネージャーとして俳優・アイドル・漫画家や作家などのマネージメントを行う。その後、未経験からフリーライターの道へ。
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