日本一高い場所にあるホテルで働きながら考えた「これからの夢」
カナダのモントリオールからのお客様から、「メルシー」は「ありがとう」、「メルシーボークー」は「どうもありがとう」だと教えてもらいました。中国語を話せる同僚もいて、私は英語圏のお客様への対応を任されています。海外からのお客様は多く、接客業務を通じ日々、いろんな発見がありますね。
両親は転勤族で、滋賀、新潟、福井、神奈川、石川と引越しを繰り返し、中学校に入ってから富山県内で落ち着きました。地元の高校で学び、大学受験に失敗。どうしても英文科に行きたかったんですが合格できませんでした。そこで1年半、カフェでアルバイトをしてお金を貯め、1年間カナダのバンクーバーにワーキングホリデーで滞在しました。帰国して地元の外国語専門学校で2年間学び、23歳で現在のホテルを経営する会社に就職しました。
4勤1休。夕日を見ると、ほっとします
現在は入社2年目。宿泊の依頼を取りまとめる「予約担当」です。うちのホテルは81部屋あって、観光シーズンの4、5、7、8、9、10月は、ほぼ満室です。春は雪の壁の間を歩く「雪の大谷」、夏は高山植物、秋は紅葉と自然はさまざまな表情を見せてくれます。
山側の部屋から見る景色が美しいので、そちらから空きを埋めていきます。オーバーブッキングなどの失敗もありましたが、先輩らに助けられています。予約はネットが多く、WEB上にもデータを管理するページはあるのですが、最終的には紙の台帳にまとめるんです。意外とアナログですよ。
ここは、ホテル業界の団体に登録しているなかでは1番高い場所にあります。特殊な環境だと思います。仕事は4勤1休、つまり3日と半日働いて下山し、1日と半日休み。通勤はなく寮に泊まります。毎日、チェックイン業務が終わるのは午後6時ごろ。夕日を見ると、ほっとします。
「赤いバラ50本用意して」というオーダー
印象に残っているお客様ですか? 台湾だったか、中国だったか……。アジア圏の20代の男性から事前にメールで、「プロポーズをしたいから赤いバラ50本を用意しておいてほしい」という依頼がありました。富山市内の花屋さんに注文し、持ってきてもらいました。プロポーズは成功したそうです。片言の日本語で「ありがとう」と言われ、こちらもホッとしました。うれしかったですね。
大変なのは、体調が悪くなったお客様のフォローです。ホテルのスタッフがワゴン車に乗せて立山駅まで運んだり、山岳警備隊に依頼して下山したりするケースも。最終的にはどうするか上司に判断を仰ぎますが、「せっかく来たのに」という声を聞くと、残念に思うこともあります。元気で立山の自然を楽しんでいただきたいですね。
外国語専門学校時代の友人には、海外の大学に進学したり、ワーキングホリデーで海外に住んでいたりする人が多く、今も刺激を受ける存在です。彼らは現地にいるからこそ学ぶことがあり、英語のスキルもアップしている。話しているとつい、「自分も20代のうちにもう一度、海外に行きたい」と考えてしまいます。「いろんな国を見てみたい」「もっと英語を勉強したい」と思います。
30歳までにもう一度、海外に行きたい
英文科を受験したときの気持ちは「英語がしゃべれるとかっこいいから」だったのですが、ある程度、習得しても「もっと話せるようになりたい」と思います。また、敬語や丁寧語がストレスにならない英語のコミュニケーションはいいなあと感じます。海外で店員さんの接客を受けると、できない時には「ノー」と言われます。もちろん、できることは喜んでやってもらえる。この感じ、海外ならではの感覚だと思います。相手との距離が近いのです。
一方で、結婚も30歳ぐらいまでにはしたいと思う。結婚して子どもができたら、海外へ行くのは難しいので、「30歳までに、もう一度」と思います。
海外事業を担当する部署もあるので、そこに興味や魅力も感じますが、今はお客様の笑顔を見るのが何よりの幸せです。フロント業務を頑張り、日本一高い場所にあるホテルにやってくるいろんな国の人に、どれだけ立山の魅力を伝えられるかが、私のミッションかと思います。
しかし、あっという間に30歳になってしまいそうですね。
富山県立山町の立山黒部アルペンルート
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