あなた向けのオンリーワンの旅をコンサル、「チェルカトラベル」とは?

京都で営業する旅行代理店「チェルカトラベル」は、お客様に事前カウンセリングを行い「本当にその人に合った旅」を提案してくれる代理店。コンサルに特化した代理店業務のほか、ユニークなツアーを提案し、全国から顧客を獲得しています。オリジナリティあふれる業務展開のきっかけや企画を思いついた経緯などを、代表の井上ゆき子さんに伺いました。

――チェルカトラベルでは、旅の手配を行う前に必ず「旅行相談」と呼ばれるコンサルティングを設けていらっしゃるんですよね

井上さん(以下井上): 会社員として旅行代理店に勤務していた頃、旅行プラン相談の内容から派生するお客様の身の上話を興味本位で伺ってたんです。そしてそこから思いついたプランをご提案してみると、それがとても好評で。それで「コンサルを前提とした代理店業務はニーズがあるんじゃないか」と思い、チェルカトラベルを立ち上げました。5400円で1時間ほどのヒアリングがベース。全国にお客様がいらっしゃいますので、メールでやりとりを行うことも多いです。

――どんなことをヒアリングするんですか?

井上: 必ず伺うのは、年齢と家族構成。なぜ旅行に行こうと思ったのか、どんな気分か?など。そこから「実は昨年家族にこんなことがあって……。」など、深い話に発展していくこともあります。今までどういうところに行ったか、どういうところが好きかも伺いますね。コンサルティング料を頂いているので、かなり念入りにお話を聞きます。

――女性のひとり旅に特化したサービスもあるそうですが。

井上: 人と休みを合わせづらい日本の社会人は、ひとり旅にトライしたいと思う方も多いですが、「ひとり」という時点で旅を諦めてしまう人もいます。そういった層に向けて「女性旅」のサービスを始めました。
女性がひとり旅をするまでに脱落するポイントはいくつかあるのですが、例えば代理店の窓口で「おひとりさまですか?」と聞かれること、不慣れな方だとその言葉に「寂しいですね」が含まれているように感じてしまうみたいなんです。
また、「大切にしているポイント」が代理店の方とズレていたりして満足いく行程を組めないことをストレスに感じている方もいらっしゃいます。例えば男性の職員の方に「こっちのホテルのが安いですよ!」と押し切られてしまってモヤモヤしたり。
女性って、「飛行機は安くてもいいから、素敵なホテルに泊まりたい」とか、それぞれ細かいこだわりがありますよね。そのバランスを丁寧に伺って反映するように努めています。そして何より、女性が安心して現地で喜べる旅をというのを大事にしています。

――かつては失恋した女性に向け、京都市内を巡る「失恋タクシー」プランなども企画されていたそうですね。

井上: 京都の観光ドライバーの方に「どんな女性がひとりでくるか?」と聞いたら、「ダントツで失恋がきっかけの方が多い」と。ただ、来たはよいけれどどこを周ったらいいかわからない、ドライバーさんもどうしてあげたらいいかわからないとおっしゃっていて、企画を提案しました。
京都駅から車で30分ほどの穴場スポットを中心にまわるコース、この30分というのがミソで、その間にドライバーさんとお客さんで会話をしてもらうような時間を作ったんです。ドライバーさんも話しやすい女性に限定して、クローズドな空間で、身の上話をして気持ちをすっきりしてくれればと考えました。が、予想外のできごとが起きてしまったんです。

――予想外?

井上: 変わったプランということでメディアの取材依頼が殺到して、「お客さんがひっそりと失恋を癒しにいく」ということが難しくなってしまった。女性のドライバーさんと女性ひとりのお客さん、という組み合わせだけで「あ!失恋のあれじゃない?」と目立ってしまうことを危惧するお客様もいて、メディアの反応の割には客足が伸びなかったんです。
そういう試行錯誤を経て、今はベーシックな形でしっかりとお客様に満足して頂けるプランに力を注いでいます。

――どんな方に利用してもらいたいですか?

井上: 旅慣れていない方もですが、逆にすでにひとり旅を経験していて刺激的な場所を求めている方にも、ぜひ。
ひとり旅に慣れている女性の中には、危険な場所にリサーチせず飛び込んでしまう人も少なくない。また、旅先での被害を人に言えず隠してしまうことも多かったりするんです。
最近はテレビなどで秘境にある絶景や遠く離れた土地を取り上げる番組も多いからか、マニアックな場所をご希望される方もいます。ネットでもそういう土地での旅行記が気軽に読めてしまうので、色々な人の旅の武勇伝を読んで、ついつい心が大きくなってしまったり。

でも、たまたまその方がラッキーなだけだったり、実は語学が堪能だったり、それぞれの方の持っている特性が、なんとか旅をうまくいかせていることっていっぱいあるんです。
そこでしか見られない景色、そこでしか会えない人、そういう替えのきかない大切なものがある場合を除いては、その方が描いているイメージをヒアリングの中から丁寧に分析して、「それならこっちの方が」と似たようなスポットや、体験ができる場所を替わりにご提案します。

――どのようにそういったお客様の「軌道修正」をするんですか?

井上: 臨場感を持って伝えるのがポイントかもしれません。
実は先日、アマゾンへ個人的に旅行にいったんです。1泊5万円のホテルに宿泊したんですが、それはもう、みなさんの想像する「1泊5万円」とはかけ離れた、森の中でそのまま寝ているような宿で……。部屋中に色んな虫がうごめき、ベッドに入って目を閉じると、耳元でサルが、頭の上でフクロウが鳴いているような! とんでもない気分になりました(笑)もちろん、スマートフォンは圏外です。
でも、それって行ってみないとわからないですよね。
「アマゾン?大自然の中でデジタルデトックス?行ってみたい!!」なんていうお客様がいらしても、自信を持って「デジタルデドックスなら、京都でもできますからね」って説得ができますから(笑)

なんとなくのイメージで「これが私の旅の宝石!」と思っている方に、「その宝石、良く見てみて下さい。今の貴女にとっては、石ころですよ」と気づかせてあげる。「本当の貴女の宝石はこっちですよ」と、よりその人に合ったキラキラした道筋を提示する。「その場所に立った瞬間に涙が止まらなかった」なんていう感想を後からいただけると、喜びはひとしおです。

●チェルカトラベル
「暗く寂しい」イメージを持たれがちだという女性のひとり旅を「身も心もキレイに」なれる旅へと導くために設立された旅行代理店。
京都に特化したツアーの中では「京のおいしいパン屋さんをめぐるツアー」が人気。スタッフが実際に京都市内を巡り見つけてきた本当においしいお店を、バスで効率的に半日で廻れるツアー。中には熊が出るほどの山奥(!)にあるお店もあり、リピーターも多い。
Webサイト:http://cerca-travel.co.jp

大学卒業後、芸能事務所のマネージャーとして俳優・アイドル・漫画家や作家などのマネージメントを行う。その後、未経験からフリーライターの道へ。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。