外資系企業勤務(36歳)

外資系企業勤務「今、幸せ。高齢化社会が進むこの日本で、無理に子どもを作る気はありません」

外資系企業勤務(36歳) 土曜日の原宿。同棲中のパートナーの男性と、Billsの朝食を食べに来たという36歳の女性。ベンチで休んでいるところに声をかけました。

音大から、外資のIT企業へ就職

仕事は外資のIT企業で営業をしています。それなりに責任のある立場につかせてもらい、やりがいはあります。
ITの外資系企業に勤める人たちは、基本的に短い期間でどんどん転職をして給料をあげていく、という働き方で、私も現在4社目。今の会社に勤めてちょうど1年ぐらいです。

学生の頃は自分がこんな風に会社勤めをしているとは思っていませんでした。
実は音大出身なんです。母も姉もピアノの先生で、自分も当たり前のようにピアノを始め、それを仕事にすると思っていました。でも、実際に音大でピアノをつきつめていくとあんまり楽しくなくて。趣味で弾く分にはいいけれど、仕事にはしたくないと思いました。
趣味と仕事の一番の違いは、「なんのために弾くか」。職業としてのピアノ演奏では「自分が弾きたいもの」より「お客さんが聴きたいもの」が大事ですから。自由奔放にできなくなってしまって、自分には違うんじゃないかって思ったんですよね。

就職してからはピアノにはさわっていません。むしろ「やっと解放された」という感じでしょうか。4歳でピアノを始めてから22歳まで、ずっと弾かなきゃいけないという思いにかられていたので。

外資系企業は成果主義なところがいいですね。何時に出社しなきゃいけないとか、“飲みにケーション”みたいなしがらみもない。さらに、最近うちの会社では社員の働き方の幅を広げるために「ワークライフチョイス」というプロジェクトが試験的に導入されて「週勤4日」の試みを期間限定で行なっています。今まで5日でやっていたことを4日でやるハードさはありますが、働く時と休む時のメリハリが出た実感があります。

ただ、外資企業では結果が出せないと、途端に会社に居場所がなくなります。会社から求められる水準が高くて、ずーっと全力でいなきゃいけない緊張感はありますね。常に学び続けていないと、すぐに取り残されてしまいます。

いずれは「家庭に入り」たい

20・30代はなんとか頑張ってこられたけれど、このままのペースで40・50代と走り続けていけるのかは正直不安です。

なので、あともう少し、社会人としての基礎体力をつけるような気持ちで働いたら、結婚して家庭に入るつもりです。ヨガやジムに通ったり、身体のメンテナンスに気を遣いながら悠々自適に生活したいなと思っています。そのために貯蓄もしています。

子どもを持つことは年齢のこともあって無理には考えていません。それと、今の日本において、子供を作ることはハードルが高いと感じています。
顔の見えない世間からの同調圧力が強くて、結婚したら子どもを産まなきゃいけない、産んだら親は子どものために生きなくてはいけない、一人産んだら二人目を……。両親や身近な友人たちから、というよりは何となくこの国全体の自分より上の世代の人たちからそういうものを感じています。私が勝手にそう感じているだけなのかもしれませんが。

少子高齢化をはじめとする日本が抱える問題のことを思うと、自分の子どもが負債を背負って生きていくことになるんじゃないかと思い、子どもを作ることには積極的になれないんですよね。パートナーと一緒に暮らしていて、今十分幸せなんです。

自己肯定感が低いから仕事を頑張っているのかもしれない

ここまでフルスロットルで働いてきて、本当にすぱっと仕事をやめて家庭に入れるのか、と言われると、自分でもわからない部分もあります。
「家庭に入る」って、文字にするとけっこうずしっとくるものではありますしね。

結局ここまで仕事に打ち込んでいるのって、自分に自信がないからなんじゃないかって思うことがあります。自己肯定感が低いといいますか。自己を肯定するために、それなりの企業でお給料を貰って頑張っているという部分もあるんじゃないかって。

家庭に入るとその自分のアイデンティティがぐらついてしまうのではないかという不安、自分を自分として証明する「肩書き」みたいなものがなくなる感覚は怖くもあります。
でも一方で、今のパートナーをすごく信頼していて、この人とであればやっていけるんじゃないかと思えたというのも大きいです。それまでの恋愛は、自分が幼すぎたり相手に合わせすぎたりしてうまくいかなかったのですが、今やっと、一緒にいて安心感を得られる人と共にいるという実感を持てています。
もちろんそういう人と出会わずにとことんキャリアを突き詰めるのも良い人生だとは思います。もし今のパートナーと出会っていなかったら、きっと永遠にバリバリと働き続けるんじゃないかと思いますね(笑)。

現在肩書き無し。30歳の夏、港区での彼氏との同棲を解消、同時に8年マネージャーとして勤務した芸能事務所を退社する。ライター業ではお笑いやサブカルチャーに関するコラムをwebサイトに寄稿など。
フォトグラファー。岡山県出身。東京工芸大学工学部写真工学科卒業後スタジオエビス入社、稲越功一氏に師事。2003年フリーランスに。 ライフワークとして毎日写真を撮り続ける。
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