telling, Diary ―私たちの心の中。

妊娠中できることが少なすぎて、既婚男性と月2のデートだけが喜びの私の話。

telling,世代のライター、クリエイターたちが日々の思いや本音を綴る「telling, Diary」。今回もミレニアル女性のリアルな思いをお届けします。良き妻、良き母、良き妊婦。「こうあるべし」というステレオタイプと同調圧力のストレスを感じた女性が見つけた、密やかな楽しみとは…。

●telling, Diary ―私たちの心の中。

友達夫婦の夫と、念願の妊娠

7年前に結婚、夫婦仲は良好。夫とは一緒にスポーツ観戦をしたり、フェスに行ったり、お互いの趣味をオススメしあい共に楽しむ、我ながら良い距離感の友達夫婦といった感じです。
私は元来いろんなお店にご飯を食べに行くのが大好き。加えて取引先との接待も多く平日の夜はほぼ毎日外食。でもそうしたことにも理解のある旦那さんです。

33歳の時に不妊治療をはじめました。なかなか機会に恵まれず治療は2年に及びましたが、このほどようやく授かり、現在は妊娠4ヶ月です。

妊娠して何よりも驚いたのは、生活の激変でした。物理的な体調の変化はもちろん、今まで自分が生活の一部として、自分らしく、楽しく生きて行くために必要としていたことの大半を制限されていくことに驚きました。

妊婦に向けられる、「妊婦共同体」からの視線

ファッションが趣味の私にとって、ヒールを履けないことは初めに起きた小さくも切ないダメージでした。お店で見つけた可愛い服も「あと2ヶ月もすれば入らなくなる」と、そっとラックに戻す。大好きだった旅行や温泉もお預け、遊園地に行っても乗り物には乗らず園内をお散歩するだけ。
そうか、これが妊娠するってことなんだなぁと、何とか気持ちを喜びの方へ持って行こうとしながらも、やっぱり好きなことができなくなるというのは、思っていた以上に自分にとって大きなストレスなのだと気付いたのでした。

でも、一番きつかったのは「妊婦はつつましやかに暮らすべき」という、「妊婦共同体」である誰かや、周りの人からの視線による、「行動」と、そして「精神的な」制限でした。

夜のご飯会が妊娠前よりも格段に減った分、たまにある外食はささやかな楽しみ。お酒を飲むわけでもなく、喫煙可のお店に行くでもない。それでも久しぶりに食べた美味しいものをSNSにあげると、写真からお店の位置情報をチェックされ、それが繁華街だとわかると友人たちから冷ややかな反応が返ってくる。彼女たちは私の「妊婦らしくない振る舞い」に敏感なようでした。

じゃあ、女性が妊娠中にできる娯楽ってなんだろう。ネットで検索しても出てくるのは「マタニティヨガ」「マタニティフォト」。……。正直私には興味の持てないものばかりでした。

「妊婦って、退屈。」なんて誰にも言えない。

きっと、妊娠を経験した人、これから妊娠を望む人からすれば「そんなこと、子供を産む喜びにくらべたらどうってことのない、贅沢な悩みだ」と思われるかもしれない。「妊婦でいられる時間は一瞬。かけがえのない10カ月を楽しもうよ!」そんな穏やかでハッピーな気持ちを持つべきだというのも理解している。
でも、自分が自分らしく生きるために何を必要とするかは人それぞれ。仕事のストレスでヘトヘトになって帰宅して深夜にコンビニスイーツを食べることに幸せを感じる人、休日は必ず売れないバンドのおっかけで全国に遠征する人……。みんな「自分らしさ」のために大切にしていることってきっとあるはず。
出産に向けて、たった10カ月。いまはそれを手放さなくてはいけないと頭でわかりながらも、制限される切なさを口に出すことさえもはばかれてしまうのか。
「妊婦ってさ、やれることが少なくて、退屈じゃない?」
そんな風に、本音を言える場所がどこにもないのが、悲しくて。

私を変えたある出会い、でも私は「子どもに愛情がない」?

そんなある日。ひょんなことから、仕事で知り合った既婚者の男性から定期的に食事に誘われるようになり、それは次第に定例化した「デート」へと変わっていきました。自分が妊婦であることも伝えてあり、肉体関係はもちろんありません。彼が選んでくれたお店で食事をして、散歩をし、日付が変わる前に解散します。

「息抜きに男性とご飯に行っている」と話すと、友人たちからはそれはもう大変な非難の嵐。
予想はしていたことだったけど、それは人格を否定されるようなレベルで、
しまいには「あなたは子どもに愛情がない」とまで言われました。

穏やかな暮らしのために必要だった、月2回のデート

私のしていることは、世間的に「不倫」と言われるものなのでしょうか。
夫以外の男性と定期的に会うこと自体、未婚時代から振り返ってもはじめてのことでした。自分でも当然、良いことだと思ってはいません。

何か、何かきっとあるはず。私だって「妊婦を楽しめる」はず。
でも、なかった。見つけられなかった。

皆から気を遣われ、食事にも遊びにも誘われなくなったこの4ヵ月、月にたった2回、話の弾む相手とデートをすることをどうしてここまで非難されるのだろう。

でも、今この楽しみが私からなくなったら、ますます何もなくなって、もっと良からぬことを考えてしまうのではとさえ思うんです。

きっと彼との関係は、私の出産を機に終わると思います。私なりに、今日、明日、明後日の妊婦生活を穏やかに過ごすため、少しだけ、そっとしておいてもらえませんか。

20~30代の女性の多様な生き方、価値観を伝え、これからの生き方をともに考えるメディアを目指しています。
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