「時短勤務なのに、仕事量はそのまま」なんて……ワーキング妊婦はつらいよ!
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「男性社員に文句言われる」と、自宅作業も禁止…
Aさんが妊娠をしたのは2年前、29歳の時でした。夫とは異業種交流会で知り合い、1年ほどの交際で結婚。Aさんは「子どもはなるべく早く欲しい。出産したら専業主婦になりたい」と思っていましたが、夫は「僕の両親は共働きだから、君にも働いてほしい。僕1人で支える自信がないから、頑張れる間は仕事を続けてほしい」と言ってきたのです。
「正直、傷つきました。妊娠中に通勤電車に乗るのも不安でしたから。でも、夫を変えられないことがわかったので、腹をくくりました。私の勤める会社は社員15人。社長以外は全員女性です。私は初のワーキング妊婦でした」
安定期に入ると、Aさんは会社に妊娠を報告。それまでフルタイムで働いていましたが、10時から16時までの時短勤務を社長(48歳)に願い出ました。ところが結果は……。
「時短勤務にしてもらったのに、ふられる仕事量はこれまでとまったく変わりませんでした。仕事を自宅に持ち帰りたくないので、職場で必死に頑張りました」
妊娠2~3か月目につわりが始まり、4カ月目まで続くと、出産直前までずっと体調の不安定な状態が続くかどうか不安だったAさん。妊娠5カ月目には会社が新しい人員を雇用してくれましたが、状況は変わらなかったといいます。
「つわりが続いてつらいので自宅作業に切り替えてもらいたいと社長に頼みましたが、『妊娠6カ月目ぐらいから自宅作業を許可してしまったら、男性社員が入社してきた時に文句を言われたらどうするの!』と、社長は頑として許可してくれませんでした」
在宅作業をする社員に対する社長の認識は、「仕事をしていない」。会社でパソコンを開いていることを仕事だととらえ、実際に取り組んでいる仕事の中身や結果をまったく見てもらえないことがAさんを驚愕させました。
「ちょうど、担当していたプロジェクトが佳境に入ったことで、勤務時間外にも自宅からメールのやりとりをすることが必須に。社長に『他の企業では妊娠6カ月目より前から産休に入る制度がある』と掛け合いましたが、『うちは関係ない』と冷淡でした」
何度も交渉してもムダ。そのたびに落胆したAさんですが、出産予定日の1カ月前からようやく週4回出勤を認めてもらい、無事出産したそうです。
妻の妊娠で、社長の態度が一変
Aさんの次に妊娠した女性は40歳の高齢出産。Aさんと同様に社長から自宅作業を禁止されたのですが、妊娠7カ月目に切迫流産になりかかったため、ようやく許可されたそうです。
「ところが、会社に出勤している時よりも多めの仕事量をふられてしまったそうです。信じられませんでした。その女性は頑張って仕事をやり遂げ、無事出産して復帰しましたが、私の社長への怒りはさらにつのりました」
ところがちょうどその頃、「ワーキング妊婦」をめぐる職場の環境が一変する出来事が起こりました。社長の妻が妊娠したのです。
専業主婦だった社長の妻はつわりがひどく、そのため「妊娠中なのに働いている女性はすごい」と、ワーキング妊婦を絶賛していたそうです。そのことが社長の態度を変えました。
「奥さんが出産した頃に、今度は社内の30代の女性が妊娠したんです。すると社長は手の平を返したように『いつでも自宅作業に変えていいよ』と、つわりがきつい時期から在宅作業を認めたんです。しかも作業量も減ったそうです」
今年からは有給消化分を使用して早めに産休を取ることも社長が認めるようになり、状況は以前よりマシになりました。しかし、それは「見せかけ」の変化にすぎないとAさんは語ります。
助成金目当てに「妊娠していいよ」と言う社長
「他のスタッフがワーキング妊婦がもっと働きやすい環境を提案すると、社長は『権利を主張し過ぎなんじゃないの?Aさんは産休前まで頑張って出社したよ。Aさんがかわいそうだ』と、急に私を引き合いに出したんです。表面的には『妊婦に優しいオレ』を演じていますが、女性に対するマウンティングがハンパない。まるで『わたし、定時に帰ります。』でユースケ・サンタマリアさんが演じていた自己中な上司みたいです」
さらに、今年から産休制度によって会社に助成金が入ってくるようになると、驚くべき変化が。「会社にお金が入ってくるから、妊娠していいよ」と、社長が社員の妊娠を歓迎するようになったというのです。
「社長は会社の利益のことしか頭にないのではないかと感じてしまいます。『新宿区の中でうちが一番主婦が働きやすい会社だ!』と社長が豪語するたびに、ふつふつと憤りを感じます。第二子も欲しいですが、それが会社の儲けになるなんて……ちょっと背筋が寒いです」
妊婦に優しい上司がいるだけで幸せ。Aさんはつくづくそう感じているそうです。