専業主婦願望の女子大生が語る夢「楽をして生きていきたいわけじゃない」

海外留学を経験し、有名大学を卒業予定。誰がどう見ても将来有望な経歴を持つ女子大生Aさんの将来の夢は「専業主婦」だといいます。「女性の活躍」が叫ばれる現代日本ですが、実は就職活動する女子大生の5人に1人は「専業主婦志向」。彼女らはいったい、どんな理由で「主婦」を目指すのか。Aさんからじっくり話を聞きました。

就活の基準は「優秀な男性が集まる会社」

取材のために待ち合わせたカフェで先に待っていたのは、大学生のAさん(21)。一瞬、本人とわからなくなってしまったのは、Aさんのヘアスタイルが知り合った時の茶髪のふんわりカールから、肩までカットしたストレートの黒髪になっていたからです。

「就活のためにヘアスタイルを変えました」と、はにかみながら答えるAさん。就活の話題になると、切れ長の目から、少し憂鬱な光がこぼれます。

Aさんと出会ったのは、ある日、整体から帰る途中に立ち寄った小さな居酒屋。そこで接客のバイトをしていた彼女にいろいろ質問したところ、全国的に名の通った大学の3年生で、英語もペラペラな優秀な学生だということがわかりました。

そんな彼女に「将来の夢は何?就活はどんなところを希望するの?」と質問したところ、少し考えてから、「とりあえず大手で、優秀な男性が集まっている企業がいいですね」と、意外な答えを返してきました。

なぜ、やりたい仕事の内容ではなくて、「優秀な男性」が集まる企業を選ぶのか。ピンと来た私が「ひょっとしたら、専業主婦になりたいの?」と直球の質問を投げかけたところ、彼女の答えは「はい」。

そう。彼女は、専業主夫願望の女子大生だったのです。

海外留学経験が生んだ「専業主婦願望」

マイナビが実施している「大学生のライフスタル調査」によれば、2020年卒の女子大生・女子大学院生のうち、専業主婦志向は20.9%。16年卒の24.3%、18年卒の25%と比べるとやや減ったものの、それでも5人に一人が専業主婦を望んでいることがわかります。

「女性の活躍」がうたわれる昨今の風潮からすると、彼女らの志向は真逆。しかも、海外留学も経験した高学歴な女性がなぜ……。Aさんに、そんな疑問をぶつけてみました。

「私が専業主婦になりたいと思うようになったのは、就活の時期に入る少し前のことです。社会で仕事をしながら生きていくという将来像が描きにくい気がしたんです。専業主婦で生きていく方が、将来が見えやすいということです」

子供は親の背中を見て育つと言いますが、Aさんの母親は専業主婦ではありません。それどころか、母親は家業を継いで経営者となり、婿養子に入った父親と共に、会社を飛躍させたそうです。

「父と母は仲が良くて、私にとっては自慢の両親です。そんな二人から海外留学を勧められたのは、高校2年の時。『今後ますます英語が必要になってくるから、将来にプラスになるよ』と、熱心に説得されたんです。それで、通っていた高校の姉妹校である南半球のスクールに1年間留学しました。地元の北陸地方にいると井の中の蛙になる。外から日本を見てみたかったことも、留学した理由の一つです」

留学先のスクールでは、年齢も性別も関係なく、伸び伸びと好きなことができたとAさんは言います。帰国後にセンター試験を受験。希望していた複数の大学に受かり、語学学科へ進学しました。

一見、将来の輝かしいキャリアにつながるかのような留学経験。しかし意外なことに、彼女にとってはこの経験が、現在の専業主婦願望へと繋がっているといいます。

「今、通っている大学も帰国子女が多く、海外のスクールの延長線上にある気がします。個人を尊重する文化もありますし、自由な空気が流れています。でも、社会に出たらきっとこうはいかないでしょう。実際に社会人になる前からため息をつくのはおかしいかもしれませんが、日本では会社に入ると個性を隠して生きることを押しつけられると感じます。それが苦痛なんです」

就活で見えてきた「企業人は没個性」

そう思うきっかけになったのは、3年生で直面した就職活動。説明会や面接で企業を訪問するにあたってヘアスタイルも、リクルートスーツも、化粧にまで細かいルールがあり、あえて没個性にすることに違和感を覚えたそうです。

「日本では就活の時、面接官はその人が会社の規則に従順であるかを見ているような気がします。それで企業で仕事をして楽しいのかなという不安になり、実際に先輩に聞いてみると、会社の仕事で精いっぱいで、楽しみなどあまりないという答えもあって。今の私はちゃらんぽらんだし、社会に出て大丈夫かなと思うようになりました。社会人としてきちんと仕事をしていけるかどうか、とても不安なんです」

私は思わず「え?」と声をあげそうになりました。私は最初、Aさんが若さと美しさを武器にハイスペックな男性と結婚し、専業主婦になって毎日のように港区のおしゃれなカフェやレストランでランチをしてからショッピングする将来を想像していました。でも、彼女は決して、楽をして生きたいから専業主婦願望を抱いているわけではなかった。彼女が語った将来の夢は、むしろ地味で堅実なものでした。

「専業主婦になる夢が叶ったら、自宅で自分の子供たちに英語を教えたいと思っています。」バリバリ働いて稼ぐよりも、自分にとって有意義な時間が欲しいんです」

それでも、Aさんは最近、ようやく社会に出ることを前向きにとらえることができたと話します。社会経験があった方が、子供を教える上でも役に立つと考えるからです。今後、まずは数社の1日インターンを経験することによって、就活に対する不安を払しょくしたいそうです。

「就活もなんとか頑張れそうです。すぐに専業主婦になれなくても、いつか夢が叶うといいなあ」

そう言ったAさんは、最後にやっと笑顔になったのでした。

続きの記事<「33歳婚活の壁」の向こう側。結婚相談所で傷ついた女性が見つけた答え>はこちら

コラムニスト、小説家、ライター。2万人以上のワーキングウーマンの恋愛や婚活、結婚をテーマに取材執筆。週刊朝日「同窓会恋愛」「離婚しない女たち」等。ブログ「恋するブログ☆~恋、のような気分で♪」 07年10万人に一人の難病を克服。
婚活をナナメから