「33歳婚活の壁」の向こう側。結婚相談所で傷ついた女性が見つけた答え

「33歳女の壁」という言葉を聞いたことがありますか。35歳以上の出産が「高齢出産」とされるため、33歳は結婚のデッドラインとなり、壁となって立ちふさがる。このような”都市伝説”に振り回される女性たちを、私は2年前に取材しました。あの時、キャリアと婚活の両立に苦心していた彼女たちは今、どのように生きているのか。連絡をとってみたところ、当時、取材に応じてくれたAさん(35歳)が、その後の人生を語ってくれました。

取材当時、食品メーカー勤務だったAさんは、今は食品関係のフリーのバイヤーに転身していました。2年前、「33歳の壁」のプレッシャーに苦しんで駆け込んだ結婚相談所での苦い経験について、淡々と振り返ります。

「恋愛セミナーの主催者から紹介されて結婚相談所に登録したんですが、のっけから女性所長に『あなたの年齢ではギリギリだから』と、せき立てられました。その言葉に焦って、言われるがままになってしまった。今から思うと、ある意味では”洗脳”されていたんだと思います。自分にどんな人が合うのかも考えないまま、次々とお見合いを重ねてしまいました」

「清楚なお嬢様風」を装わされて

お見合い写真は相談所のフォーマット通り。セミロングの毛先をカールして、花柄のワンピースに、袖を通さずに羽織るだけのピンクのカーディガン。女性所長の強い進めで、「清楚なお嬢様」をイメージしたファッションを半ば強制されました。

「相談所の紹介でお見合いをした男性は、全員40歳以上。7歳以上も年上であれば豊かな人間性を兼ね備えているだろうと期待しましたが、ことごとく裏切られました」

42歳の国家公務員の男性は、実家住まいで趣味は鉄道。お見合いが始まると、いきなり激しい口調で仕事の愚痴を言い出しました。Aさんが我慢して聞いていると次第に上から目線の物言いになり、ついにはAさんを上から下までなめるように見て、『君はかわいいじゃない』と言ってきたといいます。

「正直、身の毛がよだちました。さらに、私の気持ちなどもまったく聞かないまま、『君はいつ結婚したい?僕はこの年齢だから早くしたい』とたたみかけてくる。嫌になってしまって、それっきり、会うことはありませんでした」

次に会ったのは、東大卒の38歳、年収700万円以上のバツイチ男性。お見合いの席で前妻と別れた理由を「今でもわからない」と、延々と嘆き節。さらにその後、毎日10通以上のメールを一方的に送ってきたため、Aさんはげんなりしたそうです。

3番目は43歳の年収1200万円のエリート。しかし男性が見合いに指定してきた高級レストランでは、想定外の割り勘要求。二次会のバーも割り勘。帰宅するとAさんの感情を逆なでするような大量のメールが送られてきたそうです。

「見合いの相手だけでなく、結婚相談所の女性所長が自分の夫婦関係についての愚痴を電話してきたりと、もうメチャクチャ。入会金10万円、月会費2万円をどぶに捨ててしまったような気持ちになりました」

結局、最後に見合いした男性と一度は真剣交際に至ったものの、仕事で充実しているAさんに嫉妬した男性から頻繁に暴言を吐かれるようになり、Aさんは傷ついたまま別れたそうです。

結婚相談所で不幸な出会いが続いたAさんは、35歳となった今も婚活を続けていました。ただ焦っていた2年前と比べると、大きな心境の変化があったといいます。

「人生を諦めるわけではないですが、もう夢みたいなことを言う年齢でもないと思っています。結婚相談所に行く前は、23歳から10年間で100回以上、それこそ煩悩の数だけ合コンをやってきましたが、結局、良い相手には出会えなかった。合コンも結婚相談所も、私にとって良い方法ではなかったということでしょう。33歳を過ぎて痛感するのは、私は自分のことがわかっていなかったということです」

前に進むために現実を見ようと決めたAさん。最近、大きな気づきを得る出来事があったと語ります。

心の奥に隠れていた「母」との関係、理想の結婚

「婚活女子向けに心理学的アプローチを行っている女性のセッションに参加しました。女性の中にあるトラウマを引き出して心の傷を癒やし、本来の自分を取り戻すセッションです。そこで母親との関係がクローズアップされると、実は理想の結婚カップルが両親だったことに気づいたんです」

母親に溺愛されて育ったAさんは、これまで母親の期待に応えようともがいていました。小学生時代には母が選んだ習い事を8つも抱え、「芸能人並みに忙しかった」といいます。いつも疲れていて、ストレスがたまって胃痛に悩んでいることを母親に訴える機会を逃してしまい、それからは母親を苦手だと感じていたそうです。

「でもセッションで心が癒されると、自分が母親を働く女性として尊敬していて、大好きだったことに気づいたんです。自営業の母をサポートするサラリーマンの父親は、まさに妻を理解する夫でした。自分の両親が理想の夫婦像だったんです」

これまでの合コンや結婚相談所で知り合った男性には、父親のように働く女性をサポートするという優しさを感じることができなかったそうです。「自分が好きな仕事を続けることを理解してくれる相手が、自分にとって居心地の良い男性だとわかりました」。

自分の生き方を肯定してくれる相手を探そうと、自分らしいファッションで婚活のための写真をフォトスタジオで撮ってもらったAさん。彼女の婚活はこれからです。

コラムニスト、小説家、ライター。2万人以上のワーキングウーマンの恋愛や婚活、結婚をテーマに取材執筆。週刊朝日「同窓会恋愛」「離婚しない女たち」等。ブログ「恋するブログ☆~恋、のような気分で♪」 07年10万人に一人の難病を克服。
婚活をナナメから