仕事か、婚活か?ダブルワークの30歳女性が見出した「自分らしい生き方」

これまで婚活に比較的消極的だったけれど、30歳前後を境に、急に婚活に目覚める。そんな女性は少なくないでしょう。ダブルワークを経て営業職からイラストレーターに転向したAさん(35歳)もその一人。それまで男性と真剣につき合ったことのなかったAさんは、29歳から婚活を開始しますが、どうしても乗り越えられない婚活の壁に直面。そんな時、一冊の婚活指南本と出会い、方向転換を図ったそうです。Aさんの選択とは、いったいどんなものだったのでしょう。詳しくうかがいました。

高校卒業後、北陸地方から上京したAさんは、食品関係の販売の仕事に就きました。この頃からずっと、恋愛に対してはあまり積極的ではなかったといいます。

「販売の仕事をしていた頃に2歳年上の先輩に告白されましたが、恋愛にあまり興味がなかったので、つき合うってどんなことなのかも理解していませんでした。そのためキスだけでおつき合い終了。小娘というより、単なるバカでしたね」

くったくなく過去を笑い飛ばすAさん。好きな絵を描いているうちに、出版社主催のイラストコンテストで入賞するなど次第に道が開けてきて、恋愛よりも絵の方にのめりこんでいったそうです。

「もしイラストで身を立てるなら、営業力も身につけた方が良いと判断して、今度は通信機器の営業に転職しました。やっぱり恋愛にあまり関心が持てなくて、ひたすら仕事に打ち込んだ日々。結婚のことなんて考えていなかったですね」

転機は27歳の時。本格的にイラストレーターを目指し、営業の仕事が終わると制作にとりかかるようになったのです。

イラストの実績を作るために、クラウドソーシングで1点500円の安いイラストの仕事もせっせと引き受け続けました。一方で、恋愛の方にはますますエネルギーがいき渡らなくなっていきます。

29歳ごろからだんだんイラストの発注が増えて、多忙な日々の中でも次第に充実感が生じてきました。しかし、そんなAさんも30歳が目前に迫ってくると、さすがに結婚に対して焦ってしまったそうです。

「周囲は結婚ラッシュ。周りに影響されて、次第に『婚活しなくては』とせきたてられるような気持ちになってきましたが、なにせもともと結婚願望が薄いんです。しかもそれに輪をかけて恋愛経験も少ない。周りの恋愛体質のキラキラ女子たちを斜めに見ながら、私らしい婚活って、いったい何だろうと考えました」

その時に閃いたのは、「恋愛の数をこなそう!」だった。

恋愛経験が乏しいということは、男性の気持ちもよくわからないということ。そこで男性の行動パターンやものの考え方を知りたいと思い立ったAさんは、「1年間で10人以上とつきあう!」という大胆すぎる目標を掲げたのです。

「せっせと合コンに出かけ、出会い系のサイトで男たちと会い、1年間で10~15人とつきあいました。二股以上のつきあいなんて、ざらでしたね。でもしょせんは数重視。相手を選ばなかったため、ろくな出会いがなかった。相手に対するビジョンがなかったことを痛感しました」

このままいくら数をこなしても、本当に結婚したいと思うような相手にはたどり着けない。Aさんは自分自身の婚活に限界を感じていました。30歳の誕生日がとうに過ぎていったある日、Aさんは一冊の婚活本に出会います。

その本のメッセージを要約すると、次のようなものでした。

“仕事か、結婚かと、ぐらぐら迷っている女性に男性が魅力を感じると思いますか?男性は真剣に結婚したいという女性に惹かれていくものです。もし迷っているならば、期限を決めて取り組み、期限がきたらどちらかを断ち切る覚悟も必要です”

「目の前にあることを精一杯やっていれば後悔することはないというメッセージ。目からウロコでしたね。そこで、合コンや出会い系サイトなどで出会いを探すのはスッパリやめて、好きなイラストの仕事を精一杯やっていこうと決めました」

Aさんは、本の締めくくりの次の言葉にも惹かれたそうです。

“覚悟が決まっている女性は、黙っていても男性が集まってくる”

さらに、この本が勧める婚活スタンスと真逆な友達を「反面教師」としたことも、考え方の転換に影響したといいます。

「その友人は婚活を焦るあまり、相手のタイプも、結婚のビジョンも全くなく、結婚がゴールであると思い込んでいました。その結果、失敗の連続。そんな友人を見ていて、結婚はゴールではなく、よりよく生きるための選択だと考えることにしました」

こうして、仕事を優先する道を選んだAさん。あらたな人脈との出会いで、ダブルワークから、イラスト一本で生きていく道が開けてきました。

「その頃、ある経営者が主宰する会に参加したのがきっかけで、経営者の方や個人自営主の方からイラストの発注を受ける機会が増えていったんです。現在はイラストだけで生活しています。好きなことで生きていけるって、本当に幸せだと感じます」

婚活に焦っていた頃に比べて、生き生きと過ごせるようになったAさん。徐々にこれまでとは別のタイプの男性と知り合うようになったそうです。

「独立心旺盛な経営者の方や、自分より年下だけど仕事を頑張っている男性から、お誘いをもらうようになりました。価値観が似ているので、リラックスできます」

自分が変われば、出会いも変わるとわかったAさん。好きなことを仕事にしようと31歳で覚悟を決めたから今があると、自らのジャッジに「良かった」とほっとひと息ついているそうです。

コラムニスト、小説家、ライター。2万人以上のワーキングウーマンの恋愛や婚活、結婚をテーマに取材執筆。週刊朝日「同窓会恋愛」「離婚しない女たち」等。ブログ「恋するブログ☆~恋、のような気分で♪」 07年10万人に一人の難病を克服。
婚活をナナメから