行こうぜ!性別の向こうへ

もう「選ばれる女」を演じたくない!女性主導の婚活サービス「キャリ婚」とは

はたらく女性をターゲットとした「キャリ婚」という婚活サービスを知っていますか? 女性は有料会員制。男性は会費無料ですが全員面談が必須で、合格者のみが登録できます。常識とは逆を行くこのサービス、運営者に名を連ねるのは人材コンサルティング会社リントスの川崎貴子社長と、AV監督で多くの女性を見てきた経験から語る恋愛論でも注目を集める二村ヒトシさんという、これまた異色のお二人。キャリ婚を始めた背景や、今の婚活をどう見ているかを伺いました。

●行こうぜ!性別の向こうへ

女がスペックを落とさなくてはならない、婚活の現状

――どうしてキャリ婚を始めようと思われたんですか?

川崎:2015年に私が出版した『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』という本に、多くの女性から反響があったのがきっかけでした。仕事で社会的な評価を得ている女性の中で、プライベートがうまくいっていない人がなんと多いことか、と気づいたんです。

彼女たちに共通していたのは、頑張り屋さんで仕事も収入もしっかりとあるのに、自信がなくて恋愛で結果が出ないという点。最初は個別に相談に乗っていたのですが、やがて「魔女のサバト」という恋愛や婚活の勉強会を開くようになりました。

――どんなことを教えているんですか。

川崎:カウンセリングや勉強会では、まず彼女たちに、自分自身の価値観を自分で発見・実感してもらうというアプローチをしています。それができるようになると、恋愛や結婚に前向きに取り組めるようになるんですね。

ただ、そこで「いざ行動」となった時、既存の婚活を謳う出会い系サイトだと、遊び人や既婚者の男性が溢れています。せっかく彼氏ができても、結婚できない・傷つけられるという状況が続出しました。

――結婚を意識した出会いであれば、結婚相談所に登録するのはどうでしょうか?

川崎:キャリ婚に登録してくれるような、共働き志向で仕事を続けたいと考える女性は、結婚相談所に行くと「年収はもう少し低めに書いてください」等のアドバイスを受けることもあるようです。中には、「ピンクのカーディガンを着てください」と真顔で言われた人もいます。

相談所として成婚率を高めることが最優先になってしまうと、「男ってこういう女が好きだよね」というステレオタイプな女になれと押し付けてくる。要は「もっと”いい商品”になりなさい」と言われてしまうんですよね。

本来の自分を隠さないと、マッチングさえしてもらえない。それが既存の結婚相談所の問題点だと感じています。なので、キャリ婚では「遊び人や既婚者がいないこと」「女性がそのままの自分で婚活できること」を実現できるようにしたいと考えています。

「男が上であるべき」という既成概念に囚われない

――男性の面接では、どんな部分を見ていますか?

二村:「終始、うっすら怒っている人」は、落とすようにしています。独身の男性の中には「結婚できないのは俺のせいじゃない。社会が悪いせいだ。女たちが俺を理解しないせいだ」という観念を無意識に抱いてしまって、ずーっと不機嫌な人がいるんですよ。オフィスでも、たとえばコンビニの店員さんに対しても、この面接会場にやって来ても。そういうタイプの人は、結婚できたとしてもモラハラ夫になり、父親になっても子どもをうまく愛せない可能性が高いと思うので、お断りしています。

川崎:面接の評価項目を全てお伝えすることはできませんが、家事分担の意志があるか(またはアウトソーシングに抵抗がないか)、共働きを許容しているかなど、独自の面接ノウハウで本心を聞き出しています。

「家事分担もちろんします!」という人が、よくよく話を聞いてみると、全然現実的な考えをしていないことがあるので、その辺りはプロの目でしっかりと見極めています。

また、女性側の実家との付き合い方へのイメージやお金のことなど、当人同士では赤裸々に話しづらい部分も面接で事前に聞いています。現状、3割弱くらいの男性は、面接でお断りしています。

二村:このサービスに関わり始めてから、男性も「選ばれること」に慣れてほしいなと感じるようになりました。「男性が上であるべき」という迷信を信じている人は、結構多い。女性にもいます。それがたとえ自分自身の意見でなかったとしても、「べき」に縛られている人がいる。彼らは、生きづらさを抱えているんでしょうね。

そういう男性へのカウンセリング的なケアは別途、必要だと個人的には思うのですが、キャリ婚では残念ながらそこは対象外なので……。そうしたサポートやグループワークのシステムがあるといいのになあ、という問題意識はあります。

――登録している男性はどんな人が多いですか?

川崎:当初は女性に養ってもらいたい「ヒモ候補」みたいな男性がたくさん来てしまうのでは?と心配していたのですが、ふたを開けてみたら、真逆でした。社会的なポジションを大切にしている方が非常に多いですね。ご自身の年収もしっかりとあり、そのうえでダブルインカムの大事さを理解している方です。

そういう男性は、既存の結婚相談所だと専業主婦希望の人を紹介されてしまうことが多く、うまくいかなくてキャリ婚を見つけてくれるようです。

対等な相手を選びたいなら、婚活は女性主導で

――婚活に悩んでいる女性読者は多いと思うのですが、何かアドバイスがあればお願いします。

川崎:女性は幼い時から男性に比べて結婚や恋愛への関心が高く、また、出産可能年齢というタイムリミットもあるので、結婚について真剣に向き合っている方が多いのではないでしょうか。男性に比べて恋愛・結婚の分野で成熟していると言えます。
それなのに、「選ばれる」という受け身の行動を選んでしまうのは、とてももったいない事だと思うのです。
女性の感性で「この人、何か気になる」というアプローチが良いマッチングを生むと私達は思っているんですね。
とはいえ、女性が見つけるというのは最初だけで、メールのやり取りやデートの段取りなどは男性側からもリードしていますよ。

二村:ほんと、女性の側からピンときて、女性の側から意志や意向を伝えて、話してみて「ちがう」と思ったら丁寧に断って次へ行く、に限りますよ(笑)。もちろん男性側が「ちがう」と判断することもあるわけですが。そこはお互い様で、傷つきすぎないでほしい。

婚活がうまくいかない男性の中に社会や女性に対して怒っている人が見受けられるという話をしましたが、婚活がうまくいかない女性の中には「選ばれるような女じゃない私が悪いんだ……」と自責の念が強すぎる傾向の人も多いです。どっちもだいたい親の悪影響が大きいのでは、というのが私の持論ですが、僕はそのどっちも間違ってると思うんです。

昔から「選ばれる女の子」のストーリーが世の中には溢れています。でも、映画や漫画やドラマで多く語られている「女はこうあるべき」というのは、すべて虚構です。世の中の女性像に惑わされず、自分が生きていきやすい虚構を勝手に作り出せばいいんですよ。
自分らしさとは何かを知り、その上で自分を一番生かせるパートナーを見つけるとよいのではないでしょうか。

  • 「女性主導の婚活」、ちょっと楽しそうと思ったのは私だけではないはず!
    後編では「結婚したい人が減っていることについて、どう思いますか」と質問してみました。婚活の「最前線」を日々、目撃している二人から出た意外な答えとは?

続きの記事<「女性主導の婚活サイト」運営者が語る、結婚するより大切なこと>はこちら

  • プロフィール
    ●リントス株式会社 代表取締役 川崎貴子さん
    女性に特化したコンサルティング会社リントス株式会社の代表。過去2万人以上にのぼる女性の相談に乗って成長や成功をサポートしてきた経験を持つ「女性マネジメントのプロ」。婚活結社「魔女のサバト」では黒魔女として、多くの女性の幸せをサポート。著書に『愛は技術 何度失敗しても女は幸せになれる。』(KKベストセラーズ)ほか。
  • ●AV監督 二村ヒトシさん
    慶應義塾幼稚舎卒、慶應義塾大学中退後、AV監督に。ジェンダーに関する固定観念を壊すような作品を世に送り出している。著書に『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(イースト・プレス)『すべてはモテるためである』(イースト・プレス)ほか、恋愛や性に関する著書多数。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。
1983年生まれ。社会人13年で転職4回。バツイチ。恋愛・結婚・女性性・人間関係・生き辛さなどの話題に興味があります。お笑い・現代アート・バームロールが好きです。