苦手な人が、心を癒してくれる瞬間。誰かがそばにいるということ
●編集部コラム
昔働いていた会社で、苦手な年下の女の子がいた。
彼女は私から見ると完璧すぎた。仕事に対してすごく真剣に取り組んでいたし、成果も出していた。勉強熱心で、後輩への指導も丁寧で、責任感も強い。
入社してから、何も成果を出せていないと思っていた私は、彼女に強く負い目を感じていた。彼女も私のことが嫌いだったと思う。
苦手な人に、癒やされる

ある時、上司との面談でとても落ち込んだことがあった。
厳しく叱られたわけではなかったけど、私の欠点について核心をつく指摘を受け、ひどくショックだった。長い面談を終え、就業時間が過ぎた執務室に戻ると、ほとんど誰もいなかった。私が苦手な年下の彼女は、パソコンをかたづけ帰ろうとしているところだった。
彼女は、私が落ち込んだ様子を見て、ごく自然に「どうしたんですか?」と質問した。
あまりにも自然だったので、私は彼女への苦手意識を忘れ、涙ぐみながら「部長に的確だけど、ショックな事を言われたの……」と言った。
彼女は私の隣の椅子に座り「大丈夫ですよ。部長はいぬいさんのこと、いつもすごく心配してますよ」と言い、私が机の上に置いていた手にそっと彼女の手を重ねてくれた。
私は涙をこらえながらで何も言えなかったけど、心が少しずつ軽くなっていくのを感じた。
苦手な人が近くにいるのに、心が癒される。すごく不思議な体験だった。
「獣になれない私たち」ガッキーの名ゼリフ
昨年、放送されたドラマ「獣になれない私たち」(日本テレビ系)ですごく心を打たれたシーンがある。
ドラマも佳境の最終回の一つ前の回。彼氏と別れたガッキー演じる晶に、黒木華演じる朱里が「じゃあ、ずーっと一人で生きてくの?」と質問する。
ガッキーはこう答えていた。
「一人なのかな?
例えば今は二人。私と朱里さん。
さっきは三人でビールを飲んだ。お母さんじゃないけど、お母さんみたいな人と、また飲もうって約束した。
会社の同僚と仕事のことで一緒になって喜んで、女同士で1000回のハグ。
この前は飲み友達の部屋で夜通しゲームして、朝のコーヒーを飲んだ。
そういう、ひとつひとつを大事にしていったら生きていけるんじゃないかな。一人じゃない」
恋人がいなくても、親友がいなくても、生きていける

嫌なことが続く人生。それを成長の糧だと思い、乗り越えていける体力がある時は思いっきり頑張ればいい。
だけど、時に自分の限界を感じて力尽きてしまうことがある。
そんな時、親友や恋人・パートナー、両親、上司、メンター。そういう人がいるなら、その人にめいいっぱい甘えたらいい。
でも、別に甘える相手は一人でなくてもいい。親密な相手でなくてもいい。
バーで隣に座った人に話を聞いてもらうのもいいし、美容院で愚痴ったっていい。タクシーの運転手さんだっていいし、いつもはあまり話さない同僚だっていい。
自分が弱っている時は、いろんな人から少しずつ助けてもらえばいいんだと思う。
そうやって、助けてもらったら、自分が元気な時にちゃんと恩返しすればいい。
冒頭の苦手な彼女は、今でも正直、苦手なまま。転職後は連絡を取る手段もなく、もう二度と会うこともないだろう。でも、あの時声をかけてくれたこと、手を重ねてくれたこと、寄り添ってくれたことは忘れないし、もし彼女が何か困っていることがあれば、進んで助けに行きたい。
好き嫌いだけの感情では単純に片付けられない人間関係。
そういうのがあるから、生きてくのは楽しいなぁと思う。
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