「ちょうどいいブス」問題について取材に応じたお笑いコンビ・相席スタートの山崎ケイさん

相席スタート・山崎ケイ「私が“ちょうどいいブス”を使っている理由」

ネットで話題になっている「ちょうどいいブス」問題。同じ女性から投げかけられる「ブス」という言葉に、心がざわついた人も多いのでは? ドラマ化される『ちょうどいいブスのススメ』の原作者、お笑いコンビ、相席スタートの山崎ケイさん(36)に「ちょうどいいブス」という言葉が生まれたきっかけ、定義について聞きました。

「ちょうどいいブス?」まずは自分が検索した

――「ちょうどいいブス」が生まれたきっかけを教えてください。

山崎ケイさん(以下ケイ):  先輩に「お前は自分のこと“ブスじゃない”って思ってるかもしれないけど、ブスやからな」って言われたんです。話の流れでですよ。それまでは、自分を「美人ではない」くらいには思っていたのですが、「ブス」とは思っていなかったので、「ええ?私ってブスなの?!」とびっくりしました。納得いかない様子の私を見て、別の先輩がフォローする感じで「ケイちゃんはブスの中でもちょうどいいブスだけどね」って言ってくれたのがきっかけです。私も「ブス」は受け入れられなかったけど、「ちょうどいいブス」ならいいかなって。

でも、そもそも“ちょうどいいブス”ってなんだろうって不思議に思って、家に帰って検索したんです。「ちょうどいいブス 意味」って。そしたら、ヤフー知恵袋で同じ質問をしている人がいて(笑)。「酔ったらいけるレベル」っていうのがベストアンサーの花丸もらってました。その先輩はそういう意味で使ったわけではないと思いますが、言葉のニュアンスとしてはそういう感じのことなのかな、と思いました。 それを見ても私は嫌じゃなかったんです。

「ちょうどいいブス」問題について心境を語るお笑いコンビ・相席スタートの山崎ケイさん

自分を知ることで「選ぶ側」に回る

――自分の容姿を、男性基準の「いける・いけない」で測られることに抵抗はないですか?

ケイ: 「いける・いけない」って言葉を粒立たせると気にはなりますけど、私はサラっと読んじゃいました。女性も男性に対して「あり」とか「なし」とか言うじゃないですか。 だとしたら、お酒の場でうまくふるまえば「選ばれる」側から「選ぶ」側に、自分主導で恋愛できるんじゃないかなって思ったんです。

例え男の人がそう思ったとして、女性側がオッケーするのかはまた別の話ですよね。 故意にかどうかは別として、モテてる女の人って男の人に「いけそう」と思わせている部分があるなと思うわけです。なんの努力もしないで「なんで選ばれないのだろう……」と思っていた自分から、「そう思われてるならこっちだってそれを使ってやるわよ!」に変わったんです。もちろん、男の人が全員、女性に対してそういう感覚を持っているわけではないと思います。でも、そうだと思ったら逆に前向きになれた。やるしかない!と。

「都合のいい女」と解釈されることもあるし、そう読まれても仕方がないですが、私は男の人のそういう存在になったことは一度もないです。私は女性の魅力に「色気」も関係していると思っていて、色気なら発言や振る舞いで作れるんですよ。私も「妙な色気がある」とたまに言われるところまでは今来てます(笑)

――ちょうどいい、としても「ブス」という言葉にひっかかりはなかったですか?

ケイ: 芸人の世界は多少特殊だと思いますが、ブスやバカ、アホも愛を持って使われています。信頼関係がある人にしか言いません。

私に「お前ブスやからな」と言った先輩も、ネタを見てくれていて「どういう立ち位置でネタをやっているのかわからない」と言うアドバイスだったんです。例えば私が漫才の頭で「彼氏が欲しいんだよね」と言ったとします。それに対して「誰が言っとんねん!」とつっこむ程はブスじゃないと。 かといって「えー、なんでいないの?」と言うほど美人でもない。

私が頭で「ちょうどいいブスって言われます」と自慢気に自己紹介をして、「なんで誇らしげなん?」とつっこまれた後、「私彼氏が欲しいんだよね」と言うと、ニュアンス違いますよね? 説明してしまうとこういうことなんですよ。

「ブス」に変わる言葉を探したことも

「ちょうどいいブス」問題について率直に語るお笑いコンビ・相席スタートの山崎ケイさん

ただ、本当は私もブスという言葉は、好きではないです。言葉として強すぎるからです。

相方とも「ブス」に変わる何かいい言葉ないかなー?と話し合ったこともありました。例えば「可能性って呼ぶのはどうですか」とか。でもやっぱり「ちょうどいい可能性」って伝わらないじゃないですか。それでわかりやすい「ブス」という言葉を使わざるを得ないところはあります。
実際に「ブス」の言葉の強さで、人を引きつけているところもあると思うんです。例えばこの『ちょうどいいブスのススメ』もありがたいことに私が想像した以上に売れているそうです。私のファン以外の人も買ってくれている。それは、タイトルの引きの強さも関係しているのかなという気がします。

私にとっての「ちょうどいい」

――自分の容姿の“レベル”って、知る必要があるのでしょうか?

ケイ: 私は、ずっと「あーモテたいっ!」って思ってました。中学生になったら少女漫画みたいな恋愛をみんなするんだと思っていたのに、モテるどころか男子と話すことすらできない。周りは彼氏ができたり、色んな経験をしていく中で取り残されているような感覚。その子たちと自分の何が違うかって考えてみたら、「顔」なのかなー、と。ただ、自分の容姿のレベルって本当のところはわからないじゃないですか。

どういう立ち位置で、男性とお話していいのかわからなかった。美人じゃないのはわかるけど、男性にとって私って、生理的に無理ってレベルなのかな?話しかけるのはいいのかな?一口ちょうだいとか言ったら間接キスは嫌がられるのかな?とか考えすぎて何もできなかった。自分が心地よくて、不快感を与えずにいられる立ち位置を言語化すると「ちょうどいいブス」だったんです。

「ちょうどいいブス」問題について取材に応じたお笑いコンビ・相席スタートの山崎ケイさん

ちょうどいいっていうのは、男性にとっての「ちょうどいい」じゃなくて、私にとっての「ちょうどいい」。つまり、私らしくいられる、気取らないでいられる状態のことなんです。私に共感してくれている女性は、そう理解してくれているのだと思うのですが、言葉は人によって捉え方が違うので難しいですね。

本当はここまでかみ砕いて、説明できたり、言い換えれたらいいんですけど……インパクトに欠けてしまうので。まさに「ちょうどいい」言い換えが見つからないです。

  • ●山崎ケイさんプロフィール
    1982年千葉県柏市出身。NSC東京校13期生、よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。2013年に相方の山添寛さんとコンビ「相席スタート」を結成。2016年M-1グランプリファイナリスト。自身のちょうどいいブスハウツーをまとめたエッセイ『ちょうどいいブスのススメ』(主婦の友社)を発行。
telling,の妹媒体?「かがみよかがみ」編集長。telling,に立ち上げからかかわる初期メン。2009年朝日新聞入社。「全ての人を満足させようと思ったら、一人も熱狂させられない」という感じで生きていこうと思っています。
写真家。1982年東京生まれ。東京造形大学卒業後、新聞社などでのアシスタントを経て2009年よりフリーランス。 コマーシャルフォトグラファーとしての仕事のかたわら、都市を主題とした写真作品の制作を続けている。