教えて!弁護士センセイ telling,の「法律未満の何でも相談」13

同棲していた元カレが買った家電は返さなくてもOK?

仕事でモヤモヤ、夫にモヤモヤ、人間関係でモヤモヤ。もしかしたら、法律を味方にすれば少しだけ生きやすくできるかも! 日々の困りごとを弁護士の澤井康生先生が、ミレニアル女子目線でやさしく解説します。今回のテーマは、恋人と同棲解消後のゴタゴタ。最近の裁判例をもとに考えます。 A子:MM商事経理部主任 B子:法務部主任

●教えて!弁護士センセイ telling,の「法律未満の何でも相談」13

B子:A子、お疲れ様。あれ、なんだか元気ないね。

A子:実は2年くらい前からX君と結婚を前提に同棲していたんだけど、最近ケンカして別れることになっちゃったのよ。

B子:え~、そうなの?A子かわいそう。

A子:いやいや、そこはもういいのよ。そこはもう過ぎたことだからスルーして。

B子:あ、そうなの?

A子:実は同棲を開始した時、新しくアパートを借りたのよ。結婚するつもりだったから、家計も一緒にしていて、私が家賃、敷金とか出して家財道具も買いそろえたのね。全部で100万円くらいかな。

一緒に買った家電50万円は誰のモノ?

B子:うん、それで。

A子:X君はテレビ、冷蔵庫、洗濯機とか家電類を買ってくれたのよ。全部で50万円くらいかな。

B子:うんうん、それで。

A子:今回、X君と別れることになったんだけど、X君が家電は俺のお金で買ったものだから全部よこせって言ってきたのよ。確かに家電のお金を出したのはX君なんだけど、こういう場合って家電は誰のものになるの?

B子:なるほど、そこは確かに法的な争点になるわね。実は私も過去に同じような目にあって、弁護士さんに相談したことがあるのよ。そしたら「内縁関係にある男女間で双方が同居するにあたり相応の費用を負担している場合、相手が購入した家電類も無償で使用することができ、実質的には共有物であって、家電を返還する義務はない」とした判決があるんですって(東京地裁平成28年10月18日判決を簡略化しています)。

A子:よかった、家電は2人の共有物だからX君からの返還請求に応じなくてもいいのね^^

恋人が買った家電も、二人の共有物

B子:そういうことね。でも、家電がA子一人の物になったわけじゃないから勝手に売ったりしちゃだめよ。それをやると横領とかになっちゃうからね。

A子:そうね、何らかの形で精算しなきゃいけないわね。でもとりあえず「返して」っていう要求に無条件に応じなくてもいいってわかって安心したわ。

B子:お役に立ててよかった。

A子:でもこんなことならもっと高い家電をたくさん買ってもらえばよかったかなー。エアコンとか電子レンジとか、ブルーレイとか空気清浄機とか。

B子:A子ったら、転んでもただでは起きない精神ね。

A子:こういうのは危機管理、クライシスマネジメントっていうのよ。法務部のB子なら知っているでしょ。

B子:いや、A子、それちょっと違うと思うけど……やれやれ。

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■澤井康生先生のプロフィールはこちら
元警察官僚、警視庁刑事を経て旧司法試験合格。弁護士でありながらMBAも取得し現在は企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所非常勤裁判官、東京税理士会インハウスロイヤー(非常勤)も歴任。公認不正検査士の資格も有し企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。東京、大阪に拠点を有する弁護士法人海星事務所のパートナー。代表著書『捜査本部というすごい仕組み』(マイナビ新書)など。

元警察官僚、警視庁刑事を経て旧司法試験合格。MBAも取得し現在は企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所非常勤裁判官、東京税理士会インハウスロイヤー(非常勤)も歴任。
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