産まずに生きる

作家アルテイシアの選択「産んでも産まなくても、つながれる」02

子どもを産まないと決断した女性の声を紹介している特集「産まずに生きる」。作家アルテイシアさんが「選択的子ナシ派」と「産みたい派」が共存する考え方を綴ります。

●産まずに生きる

作家アルテイシアの選択「産んでも産まなくても、つながれる」

 私は子どもを産まない選択をしたことを、誰に責められるものでもないと思っている。だが、それを表明する時に気づかいは忘れないようにしている。

 それは子育てママさんたちの大変さや、不妊治療中の女性のつらさを(経験はないが知識として)知っているからだ。彼女らの前で「子ナシは自由で気楽でサイコ~!ひゃっふー!!」とか言うのはあまりにデリカシーがないし、アホすぎる。

 そして、子ナシの自分にできることをしようと思っている。具体的に何をしているかは、こちらのコラムに書いた。「子持ちVS子ナシの戦争終結のために、選択的子ナシJJは今日もウンコを生産する」

想像力があれば、人は理解し合える

 私に不妊治療のつらさはわからない。でも「欲しいものが手に入らないつらさ」ならよくわかる。
 独身時代、死ぬほど家族が欲しいのに、パートナーに恵まれなくて死ぬほどつらかった。親友の結婚すら妬む気持ちが湧いてしまい、そんな自分に自己嫌悪してますます苦しんだ。

 私に子育てママのつらさはわからない。でも「ハードワークに追いつめられるつらさ」ならよくわかる。
 広告会社で働いていた時、食事や睡眠をとる余裕もないほど追いつめられて鬱状態になった。周りと比べて「自分はダメ人間だ」と自信喪失して、先の見えない不安に苦しんだ。

 属性が違っても、同じ経験をしていなくても、想像力があれば人は理解しあえる。特に、女同士はつらさでつながれると思う。

 男には「弱音を吐くな」「メソメソするな」的な抑圧があるが、女は弱みやつらさを吐き出し合って「わかる!」「つらいよね~!」と仲良くなれる。

 そう、私たちは産んでも産まなくても、つながれるのだ。

男も女も、どっちも地獄

 この国で、生きづらさを感じたことのない女はいないだろう。
「少子化だから子どもを産め」と言われ「労働力不足だから働き続けろ」と言われ「保育所不足だから自分で何とかしろ」と言われ「そんなに働いたら子どもが可哀想」と言われる。

 アラサーの女友達は「彼氏いない歴=年齢の喪女なのに『女性は結婚や出産で辞めるから』とおっさん上司に言われた」とキレていた。

 それでは、男は生きやすいのか?ファビュラスでヘブンリーな人生なのか?と言うと、男はプライベートを無視して奴隷のように使い潰される。つまり種類が違うだけで、どっちも地獄なのだ。

 とある日本の大企業で働く女友達は、妊娠した時に上司から「キミは子どもを産んでも働き続けるワガママを通すんだから」と言われ、左遷されたという。その話を聞いて「この世界は地獄だ」とアルミンの顔になった。

 一方、とある欧州の企業の日本支社で働く女性のこんな話を聞いたことがある。
 彼女は昇進してすぐ妊娠が発覚して、「こんなタイミングにごめんなさい」と上司に報告すると「謝っちゃダメだよ。子どもができるのはハッピーなことなんだから、みんなで祝わないと」と言われたそうだ。

 そんなこと言われたら、愛社精神でビッシャビシャになり「この会社に一生尽くしたい…!!」と思うだろう。実際、彼女は復帰後に管理職として活躍しているという。

産みたい人が好きなだけ産める社会に

 産みたい人が好きなだけ産める社会になれば、子どもは増える。産みたくない人に無理に産ませようとするよりずっと現実的だし、子どもも親も幸せだろう。

 他人に何を言われようが、絶対産みたい人は産むし、絶対産みたくない人は産まない。むしろ産みたくない人は、国のために産めよ増やせよ言われると「死んでも産んでたまるかよ」という気になる。

 おそらく一番多いのは「産みたくないわけじゃないけど、絶対産みたいわけでもない」人ではないか。彼女らが「こんな地獄で子育てなんて無理」と産み控えるのは当然だろう。

 政府は少子化対策として「子育ての素晴らしさ」を啓蒙しては、ドンスベリしている。
 どんなに素晴らしい場所でも、そこに地雷が埋まっていたり、人を食う巨人がいたら誰も行こうと思わない。
 子育てをせめて「天国じゃないけど地獄でもない」ぐらいの場所にするべきだ。

 地獄の中で、民衆が争い合っても誰も幸せにならない。みんなが少しでも生きやすい社会にするために「本当の敵は誰なのか?」を見定めて、ウンコを投げるべきだと思うのだ。

●アルテイシアさん プロフィール
作家。著書『59番目のプロポーズ』『恋愛とセックスで幸せになる 官能女子養成講座』『オクテ女子のための恋愛基礎講座』『アルテイシアの夜の女子会』他、多数。AMや幻冬舎plusで連載中。
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