【古谷有美】男性の3倍、仕事のチャンスが多い女子アナとして。
●女子アナの立ち位置。
この夏は、東京医大の入試で女子学生が減点されている、という報道がありました。ハードな医療現場で働き手を確保するために、離職率が高い女性の合格者を抑えていた、そう。一生懸命頑張っている学生さんたちの気持ちを思うと、とてもつらいニュースです。
そんな不正はもちろんないけれど、アナウンサーという職業は、ある意味で逆かもしれません。女性と男性のアナウンサーについて、考えてみました。
アナウンサー採用は、女性が有利?
アナウンサーの採用は、どの局も圧倒的に女子が多いもの。もともと数人しかとらないのに、年によっては女の子ばかり3人、という年もあります。対して男性は、ひとりとるかとらないか。応募者数も女子が多いだろうけど、それでも採用人数でみれば、女性のほうが有利だと思います。
でも、年次を重ねていけばいくほど、男性アナウンサーの比率が高まるんです。
男性は定年まで局アナを続けるのが主流だけれど、女性は退社してフリーになったり、結婚・出産で辞めてしまうケースが多いから。初回のコラム「女子アナ30歳定年説について、私が思うこと。」でもすこし触れたけれど、30歳を過ぎたあたりが、ひとつの節目なのかもしれません。
若手の女性アナウンサーは、本当にたくさんいます。会社の後輩だけをかぞえても、野球チームが2つできるくらい。そんな状態でも、毎年各局に2~3人ずつ増えていくんです。
だけど、アナウンサーたちが人生の節目を迎えたり、進む道が変わったりするなかで、最終的に在籍者の性別がバランスよくなっていくみたいです。
「女子アナ」というだけでお仕事がいただける、なら。
仕事が思うようにできなくて落ち込んでいた新人時代。男性の先輩に言われて印象的だったのは「女性は、男性の3倍のスピードで成長できるから、大丈夫だよ」ということばでした。当時もとてもありがたく感じたけれど、いま自分が先輩の立場になってみて、いっそう感謝がふくらみます。
女性のアナウンサーが男性よりもはやく成長できるのは、男性よりも多くの場数が踏めるからです。女子アナの仕事は多種多様。メインMCが男性芸人さんなら、その隣に男性アナウンサーが立つことはありません。スーツの男性ばかりが並ばないように、という画面上のお話でもありますね。
つまり私たちは、女子というだけでお仕事をいただいていることがある。若いだけで、大きな仕事を任せていただける場面もあります。
そんな女子アナを見て、男性のアナウンサーは、はがゆい思いをすることもあるはず。だからこそ、男性の先輩が励ましてくれたあのことばが、いまも胸に残っているんです。
自分の仕事で、応えていきたい
じゃあ、アナウンサーは女子ばかりが優遇されているのか? というと、それは“潮の流れ”だと思います。
ほんのすこし時代をさかのぼれば「女がニュースを読むな」と言われた頃もあったそう。報道番組に出ていた女性の大先輩は、潔いショートヘアがよく似合っていたのに「女が男みたいな髪をして」と言われた、なんて話も聞きます。
それを考えれば、いまはすごく時代が変わりました。女性の活躍の場が、本当に増えている。アナウンサーの世界は、きっとこれからもすこしずつ、方向を調整していきます。そうやって男女のイコーリティがとれるように、変わっている途中なんだと思うんです。
「女子アナ」っていう呼称がそもそも女性を蔑視している、なんて話もあるし、「女子アナ」のあとに「(笑)」がつくような視線を感じることも。
だけど「キラキラ、ふわふわ、難しいことよくわかんない~」みたいなイメージを逆手にとっちゃえばいいと思う。黙ってこつこつ、自分のやるべきことをしていけば、見てくださる方はわかってくれると信じています。チャンスを多くいただいているぶん、仕事でしっかりお応えして、“女子アナ”のいいギャップをどんどん伝えていけたらいいですよね。